患者&予備軍が700万人に上るといわれ、痛みとともに手指が曲がってしまう難病の「関節リウマチ」。これまで「不治の病」と思われてきたこの病気の治療法は、実は新薬の登場で劇的に変化しているのだそうです。そこで、10万人の患者を救ってきたリウマチの専門医・湯川宗之助さんの著書『リウマチは治せる! 日本一の専門医が教える「特効ストレッチ&最新治療」』(KADOKAWA) より、「リウマチを治すための最新情報」をご紹介します。
「医師に聞いておきたい9カ条」と「いい病院を見つける3ステップ」
いい医師や病院も、できるだけ早く見つけたいところです。
では、どちらを優先すべきかというと、私は圧倒的に医師のほうだと思います。
患者さんと医師の間にきちんとした信頼関係があれば、病院がどうであろうと、大きな差はありません。
また、少しスケールの大きな話になりますが、病院を建てたり継続させたりするのは医師なので、皆さんから選ばれるような医師が日本中で増えていけば、関節リウマチの診療体制などがよりよくなっていくはずなのです。
信頼できる医師・できない医師の見極め方そこで、「医師に聞いておきたい9カ条」を以下にまとめました。
これらの項目を担当医に聞いてみて、きちんと答えてくれる医師を選ぶことが、きちんと関節リウマチを治すことにもつながっています。
信頼できない医師のところで、時間を浪費したり不安を増幅させたりするのは、寛解・完治を遠ざける要因になりますから、「これはどうしても譲れない」ということがあれば早めに見切りをつけるほうがいいでしょう。
①「関節リウマチとは、どんな病気?」
そもそも、関節リウマチという病気を、誰にでもわかりやすく説明できない医師は、きちんと治療することができません。
②「現在の病状(病気の段階)は?」
患者さんの関節リウマチの状態をあやふやにせず、初期・中期など病気の段階(ステージ)を言える医師は、適切な薬を出してくれます。
③「今後の治療方針(治療戦略)は?」
具体的には、「どのような薬を使って治していくのか」「その治療を受けるとリウマチがどのように治っていくのか」「もしもよくならない場合はどうするのか」「よくなった場合には薬を止められるのか」などを事前に聞いておくと、〝余計な心配〟をせずにすみます。
④「治療目標は?」
②で「現状」がわかり、③で「治療法」がわかるので、あとは将来のゴール地点=「目標」です。「寛解」を目指すのか、「低疾患活動性」を目指すのか、医師と患者さんの目標を一致・共有させるべきです。当院の場合は、患者さんの視点から具体的に、「山に登りたい」「マラソンを再開したい」といった形でも目標設定をして、ともに治療に取り組みます。
⑤「普段の生活はどうすればいい?」
日常生活のなかで、自分の病状に合った「やってはいけないこと」「気をつけたほうがいいこと」を教えてもらいましょう。悪化のリスクを減らせます。
⑥「薬の副作用は?」
「治療に使う薬の効果」と「飲み続けることで起こりうる副作用」は、確実に聞いておきましょう。そして、その副作用が気になる場合、例えば妊娠を希望していて、メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)を使えないようなケースでは、代替薬の有無も確認しておきましょう。さらに、「その薬を飲まなければ病状がどのように変化すると予測できるのか」についても、説明してもらうのが理想です。
⑦「ステロイド薬は使う? 使わない?」
炎症を取るためにステロイド薬を使うのか否か、医師に聞きましょう。使うなら、その期間も聞いてください。3カ月以内の使用がベストです。
⑧「現在抱えている不安について」
関節リウマチにまつわる悩みは一人で抱え込まず、周りに相談しましょう。たとえ人生相談のようになってもかまいませんので、きちんと答えてくれて、安心できる医師を選びましょう。
⑨「経済的負担について」
関節リウマチを治すために、最も経済的な負担が発生するのは薬の費用です。自分がどんな治療を受け、どのくらいの費用がかかりそうなのか、わかる範囲であらかじめ聞いておきましょう。また、負担を軽減できる制度もあります。加入中の健康保険での高額療養費払い戻し制度を利用したり、確定申告での医療費控除の還付申告などもできたりする可能性がありますから、具体的な相談をどこですればいいのか聞いてみましょう。PART1やPART2でお話ししたように、関節リウマチを治すためには、早期治療が非常に重要です。初めから最適な薬を使って関節破壊を抑えるためにも、治療費のことは当初から聞いておくほうがいいと思います。
以上の9項目すべてに答えられる医師は、なかなかいないかもしれません。
それでも、親身になってくれる医師は必ずいます。
参考にしてみてください。
〝ひとつのチーム〟で治療を行う病院が理想
前項の「いい医師」に出会うことに関連して、補足的に病院選びについても触れておきましょう。
私は、次のような3つのステップを踏むのがいいと思います。
① 通院可能な曜日・時間・頻度に合う病院を、インターネットや病院案内本などから探す
②ホームページや電話で、いくつかのことを確認する
・何か問題が起きた場合に、医師に直接聞くことができる環境か否か治療に関係する制度・保険などについて、気軽に相談ができる窓口や職種があるのか否か
・ 治療について、病院内のあらゆる職種が〝ひとつのチーム〟のように連携が取れているのか否か
③ 「これならいいかな」と思える病院に行き、前項の内容を医師と話してみて、相性を確認する
このように、やはり「自分に合った主治医がいる医療機関」がベストです。
ただ、その他の疾患がすでにあるかたの場合は、大学病院や総合病院など、1つの医療機関で診療されるのが、複数の診療科の連携の都合上、安心できるかもしれません。
②の段階で、この点も確認しておくといいでしょう。
イラスト/松野 実
関節リウマチの正しい知識や、最新治療を受けるためのアドバイスを5章にわたって解説