平均寿命が80歳を超え、いまや長生きが目的ではなく、「いかに健康に生きるか」という時代に突入しています。全国を見渡すと、新潟県は高齢者の1人当たりの医療費が最も少ない地域。つまり、医者に頼らない、元気なお年寄りが多いところです。そこで、新潟県出身の循環器専門医・五十嵐祐子先生の著書『医師がすすめる新潟式食事術 長生きの秘けつがここにありました。』(アスコム)より、地元の伝統料理や食材と健康長寿の関係や健康的に長生きできるヒントをご紹介します。
新潟県民すら認識していないかもしれない事実を私は発見しました。
医師として20年以上のキャリアを積み、気が付いたことがあります。
健康のベースは食事にある。
どんなに高度な医療をほどこしても、普段から体によくない食事をとれば、また病気になる。
そんな人たちを何人も見てきました。
ただどうしても、そのような人を私は責められずにいました。
「1日30品目食べなさい」
「タンパク質もとりなさい」
「ビタミンもとりなさい」
などと矢つぎ早に言われても、なにを食べたらいいのかがわからない。
面倒くさくなって結局、今までと食生活が変わらないのも、よくわかります。
何かもっとわかりやすい、指針となるべき食事法を提案できないだろうか。
そのような思いで、いろいろな文献、書籍をあさる日々を過ごしていたある日、ふと気が付いたのです。
「私の故郷、新潟の食事に長生き、健康の秘けつがあるのでは」ということに。
ご長寿の栄養素として今注目の食物繊維の塊である、根菜の消費量 全国1位。
老化、寝たきりを防ぐために、絶対に必要なタンパク質、ビタミンも豊富な豚肉の消費量 全国1位。
肝機能を整える「オルニチン」がたっぷり含まれている枝豆の消費量全国1位。
そのほか、トマトなどの生鮮野菜も全国屈指の消費量を誇り、老化の原因となる増えすぎた活性酸素を除去するアスタキサンチンが豊富な鮭などの魚介類もよく食べる。
酒どころとあって、発酵食品も豊富。
冷やご飯をよく食べ、整腸効果の高い、レジスタントスターチも多く摂取している。
いろいろと調べると、新潟県民の一般的な食事こそ、理想的な、健康食だったのです。
でも、新潟県は、ご長寿ランキングでは、上位にいる印象はありません。
「健康県と聞いてどこを思い浮かべますか?」と質問をしても、新潟と答える人は、あまりいないのではないでしょうか。
ただ1つ、おもしろいデータが見つかりました。
後期高齢者の1人当たりの医療費が、全国で1番少ない(※)のが、新潟だったのです。
※「後期高齢者医療事業状況報告(平成30年度)」厚生労働省のデータを参照
つまり、医者に頼らない、元気なお年寄りが日本一多いのが、新潟県だったのです。
数年前から私は、生まれた街に恩返しがしたいという思いから、東京での診療だけでなく、週末、生まれ故郷である新潟県上越市の病院でも、外来を手伝うようになりました。
よく帰省するようになって新潟のお年寄りが、元気なことに、あらためて気付かされました。
畑仕事をしたり、趣味の釣りを楽しんだりしている方が本当に多いのです。
いろいろなご意見はあるでしょうが、実際に現地で医療に携わる人間として、新潟に元気なお年寄りが多いのは、間違いないと感じています。
できるだけ介護なく病院にあまりお世話にならず、日常生活を制限されることなく死ぬ直前まで元気でいることこそが、健康で幸せな人生だと私は考えます。
総合的に考えて、新潟県は、実は「隠れた真の健康県」ではないか。
との結論にいたったのです。
そこで、新潟の家庭料理、伝統料理の健康効果を研究し、今回、私流の「新潟式食事術」を開発しました。
●生活習慣病の予防
●腸内環境の改善
●老化の予防
など、あらゆる面で、あなたの健康を助けてくれる食材、食べ方を今回、6つのポイントに分けて、提案しています。
未来の体は、日々の食事によってつくられていきます。
新潟式食事術を、日々の献立や食事の際に、少しでも意識して取り入れ続ければ、あなたの、そしてご家族の健康的な体づくりの大きな第一歩になるはずです。
また今回、「新潟式食事術」を日々の食事で取り入れやすくするために、上越地域医療センター病院で栄養士長を務める管理栄養士の水沢麻奈美さんと共同で、レシピを開発しました。
自分や家族の健康は守りたいけど、どんな料理がいいのかわからない。
「健康」に気をつかって、毎日の献立を考えるのがしんどい......。
そんな方は、ぜひこちらを参考にしながら、日々の食事に「新潟式食事術」を取り入れていただけると幸いです。
全国有数の健康長寿を誇る新潟に注目し、全6章にわたって食と健康の関係を探っています。伝統料理「のっぺ」を使ったレシピも公開