アラフィフ女性にとって、身近なテーマである「更年期」。でも、更年期に起こる心身の不調の症状や程度、改善法は本当に人それぞれですよね。そこで、薬剤師やジャーナリストの方に、漢方で更年期症状が快方に向かった方のケースをお聞きする「更年期『漢方』相談室」を連載形式でお届け。第13回は、漢方薬・生薬認定薬剤師の清水みゆきさんに「更年期の気分の落ち込み」についてお聞きしました。
こんにちは、「あんしん漢方(オンラインAI漢方)」で薬剤師として働いている、 清水みゆきです。
40代になってから、気分が落ち込む日が続く、何事にも興味や楽しみを感じなくなった、うつうつとして外出する気にならないなどのお悩みをお持ちではありませんか?
それはもしかしたら更年期のせいかもしれません。
45~55歳の閉経前後の10年間は更年期と呼ばれており、この時期は、ホルモンバランスの影響で気分が落ち込むことがあります。
気分の落ち込みや不安感が続くと、不眠やうつ病、食欲低下による体重減少の原因となることもあり早めのケアが必要です。
私の対応したお客様でも、更年期の年代の方で、気分の落ち込みがひどく、毎日が憂鬱で家事や仕事も手につかないとお悩みの方がいらっしゃいました。
それまで普通にできたことができなくなり罪悪感を感じてまた落ち込むというつらい日々を過ごしていたそうです。
そんなKさん(52歳)が漢方で気分の落ち込みを改善できた事例を通して、更年期の不調の改善方法をお伝えいたします。
1.更年期の気分の落ち込みの原因
更年期の不調は、卵巣の老化による女性ホルモンの減少や、ストレスが原因です。
ホルモンバランスの乱れが自律神経を不安定な状態にするため気分が落ち込みやすくなります。
また、更年期は女性にとって子育て、仕事、親の介護などストレスが増えやすい時期と言われています。
ストレスは気持ちの落ち込みを悪化させる原因となります。
漢方では、気分の落ち込みやうつは気(生命エネルギー)の不足や滞りが原因と考えられています。
女性は月経の度に血(血液)を消耗するため、更年期になると血が不足し、血から栄養を与えられる気の量や巡りのバランスが悪くなりがちです。
気が不足すると、体が弱るだけでなく、気持ちもしっかり持てなくなります。
そして、気の巡りが悪くなって停滞すると、うつうつとした気持ちや不安が続いてしまいます。
2.役たたずで使えない!バリキャリで頑張ってきたのに陰口が気になり職場が怖い
52歳女性Kさんのエピソードをご紹介します。
Kさんは、フルタイムで市役所の管理職として働くキャリアウーマン。
ご主人と大学生の娘さんと三人暮らしです。
2年ほど前に閉経を迎えたそうで、その頃にイライラやのぼせを少し感じることはあったものの、仕事で忙しかったこともあって深く更年期の不調で悩むことはなかったそうです。
ところが、1か月ほど前から、朝起きるのがつらい、なんとか頑張って起きても気持ちが晴れずに憂うつな日が続くようになったということでした。
そのうち、一日中、気持ちが落ち込みがちになり、何に対してもやる気がでず、仕事に行くのがやっとの状態になってしまったそうです。
どんなに忙しくても毎朝、家族のためにご飯をつくっていたのに、パンとコーヒーだけの朝食に...
さらに掃除や洗濯なども大学生の娘さんの手を借りるようになり、家事ができないことに対する後ろめたさを感じてさらに落ち込むという日々だったそうです。
そんな時、さらに職場でショッキングな出来事が起きてしまったということでした。
「気持ちが落ち込み、家事が苦痛でやる気がでない毎日でも、職場ではそれを見せないように気丈にふるまっていたんです。ところが、私がリーダーになって進めていたプロジェクトにちょっとした問題が生じてしまったんです。これまでなら冷静に対処できたことなのに、気持ちに余裕がなかったせいか、様々な関係部署にも迷惑をかけてしまい、一大事になってしまいました。
ひたすら平謝りして、部下のフォローのおかげでなんとか問題は解決できたのですが、この一件ですっかり仕事に対しても自信をなくしてしまいました。
部下や同僚からも『役にたたない管理職はいらない!』『使えない!給料泥棒だ!』と陰で言われているのではないかと思うと不安で胸が苦しくなります。
ずっと仕事に誇りと熱意をもって取り組んでいたのに、ミスも増えて全く仕事に集中できません。職場でも気分がふさぎがちになり、しまいには仕事に行くのも怖いと感じるように...。しばらく休職することにしたんです」
笑顔や覇気がなくなったKさんを心配した職場の同僚女性が「もしかしたら、更年期障害なんじゃない?」と更年期が特集された健康雑誌を貸してくれたそうです。
更年期障害といえば、ほてりやのぼせ、月経異常に関するものかと思っていたKさん、精神神経系の不調もあると知って驚いたそうです。
心療内科の受診や抗うつ薬を飲むのには抵抗があったので、婦人科を受診して漢方薬を処方してもらい試してみることに。
「漢方薬を飲むのは初めてだったのですが、香りも味も嫌でなく、飲むと落ち着く感じがしました。何より、眠たくなるとか副作用がないのがうれしいですね。漢方薬を飲んで2週間程度で朝起きるのが苦痛でなくなってきました。やっぱり、朝スッキリ起きれると気持ちがいいです。まだ時々、気持ちが落ち込むことはあるんですが、以前のように引きずることはなくなりました。
家族からは無理しないでいいと言われているんですが、朝ごはんもちゃんとつくるようになりました。それなりに家事もこなしていた方が私にとってはバランスがいいようです。
気持ちも生活も意外と早く落ち着いたので、休職期間も短くてすみましたし、職場復帰もスムーズにできました。心配してくれた職場の同僚も『いつものKさんに戻ってよかった!』と喜んでくれています。
今ではあの時に一度仕事を休んでよかったなと思っています。
年齢的にもただガムシャラに働くのではなく、ワークライフバランスが大切ですよね。これまで家事と仕事と子育てで必死でしたが、これを機に娘と映画に行ったり、夫とドライブに行ったりとリフレッシュする時間を大切にするようになりました。いつまでも体も心も元気でいたいと思います。もちろん仕事もこれまで通り頑張ります!」
そうお話してくださったKさんの明るい笑顔がとても素敵でした。
3.更年期の気分の落ち込みは漢方で根本的に改善
女性ホルモンの変化は目に見えないので気がつきにくいですが、40代に入り、以下のような症状が見られる場合は、更年期の影響による気分の落ち込みかもしれません。
<これって更年期の気分の落ち込み?チェックリスト>
・イライラした後に気分が落ち込むなど急に精神的に不安定になった
・動悸も感じるようになってきた
・のぼせやほてり、汗などのホットフラッシュも気になる
「できるだけ体に負担のない薬がいい」「飲み続けても大丈夫な薬が欲しい」
そんな方には漢方薬がうってつけです。
漢方は数千年の歴史を持つ伝統医療です。これまで実に多くの人々のさまざまな症状を治してきました。
古臭いからあやしいというイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、長年の臨床経験をもつ信頼できる医療です。
また漢方は、自然の草木や鉱物からできた生薬で作られています。
こうした自然のもつ力を上手に使うことは、私たちの体の摂理に沿った無理のないやさしい作用をもたらします。
とくに漢方薬は、もともとの体質だからとあきらめていたようなことや、検査では異常が見つからないような不調の根本解決を目指したいときに、その力を発揮してくれます。
また、食事の栄養バランスを意識したり、毎日運動を続けるのは難しいという場合でも、漢方薬なら自分の体質や症状に合うものを飲むだけなので、気軽に継続できるという点もメリットです。
今回Kさんが服用した漢方は「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」という更年期女性の気分の落ち込みによく使われる漢方でした。
半夏厚朴湯は、気の巡りをよくして不安神経症を改善します。
気分がふさぎがち、喉の詰まったような感じがある方によく使われます。
更年期の気分の落ち込みの改善には、他にも以下の漢方が使われることがあります。
<更年期の気分の落ち込みにおすすめの漢方>
●のぼせや急な発汗(ホットフラッシュ)やイライラを伴う方むけ:加味逍遙散(かみしょうようさん)
乱れた気のバランスや血の巡りをよくし体にこもった過剰の熱をおさえて精神を落ち着かせます。
●胃腸が弱く、心身ともに疲れている方に:加味帰脾湯(かみきひとう)
気と血を補い体力を回復させながら、精神不安や不眠を改善します。
ただ、どのような体質がその不調を招いたのかは人によって異なりますので、ご自身の状況に応じた漢方薬を選ぶことが大切です。
症状だけを見て漢方薬を選択すると、合っていない場合には副作用のリスクも高まります。
できるだけ漢方に精通した医師、薬剤師等にご相談の上で、ご購入ください。
自分に合った漢方薬が知りたい。コスパ良く漢方を飲んでみたい。という方には、「あんしん漢方(オンラインAI漢方)」などの、スマホで気軽に頼めるサービスもおすすめです。
4.漢方で心のケアをして更年期も笑顔で過ごそう!
「気分の落ち込みが続いてやる気がでない」
「うつうつとして外出や人に会うことが億劫になった」
その症状は更年期が原因かもしれません。
漢方で気分の落ち込みを改善して、更年期も元気な笑顔で過ごしていきましょう!