健康寿命が長い人の特徴、ご存じですか? 日本の疫学調査チームが発表した答えとは

「がん予防にいい食材は?」「食べてすぐ寝ると太る?」テレビやインターネットにあふれかえる情報、一体どれを信じればいいのかわからない・・・。そこで、ハーバード大学や米国国家機関などの統計データを基に、本当に効く健康法をまとめた『長生きの統計学』(川田浩志/文響社)から、正しい健康管理術を連載形式でお届け。クイズ形式なので、ちょっとした話のネタにも使えます。

pixta_19841173_S.jpg

健康寿命が長い人の特徴は?


アメリカ心臓協会の学会誌「サーキュレイション」に2009年発表された、日本の疫学調査チームによる研究によると、健康寿命が長い人の特徴は?

A.何事にも楽しみを見つける
B.何事も、試練として耐え忍ぶ
C.「人生こんなもの」とドライに割り切る


答え :A 大変なことにも楽しみを見つける

「病は気から」といいますが、実際、精神と身体には分かちがたい結びつきがあります。心の持ちようは寿命にも大きく影響し、物事を前向きにとらえて人生を楽しんで生きている人の方が、そうでない人よりも病気になりにくいものです。これは何も、抽象論ではありません。科学的にも示されている事実です。

2009年アメリカ心臓協会の学会誌「サーキュレイション」に発表された日本の疫学調査チーム(JPHCスタディ)の調査を基にした研究で、「人生を楽しんでいる意識」と脳卒中や狭心症、心筋梗塞といった心臓病との関連性について調べたものがあります。

40歳から69歳までの男女に「人生を楽しんでいる意識」のレベルを、低、中、高から選んでもらい、それぞれの人の病気の発生率や死亡率の追跡調査を行いました。

そして明らかになったのは、「人生を楽しんでいる意識」の高い男性は、そうでない男性に比べると、脳卒中や心臓病による死亡リスクがおよそ半分だという事実でした。

060-007-197.jpg

報告のなかでこの研究チームは、人生を前向きに生きている人は、ストレスに強かったり、上手にストレス解消ができているためではないかと結論づけています。また、「人生を楽しんでいる」男性は、他のグループに比べると日ごろから運動を習慣的に行っているということもわかりました。本書でも前章で指摘したように、適度な運動が健康に役立っているともいえるでしょう。

ちなみに女性の場合は「人生を楽しんでいる」人とそうでない人との間に有意な差は認められなかったそうです。理由はわかりませんが、男性と女性とでは、ストレスの感じ方が異なっていることが一因ではないかとみられています。

またイギリスのロンドン大学の研究グループは、60歳以上の男女を対象に、生活や人生を楽しんでいる意識と将来の身体機能との関連性を検討しました。

まず被験者には、

○ 自分がすることを楽しんで行っている
○ 他人といることが楽しい
○ 振り返ってみると自分の人生は幸福だ
○ 最近エネルギーに満ちているように感じる

という4つの質問を用意しました。そしてそれに対し、「まったく当てはまらない」という最小値を0、「ほぼ当てはまる」という最大値を3として、質問ごとに0から3のどのレベルに自分が当てはまるかを選んでもらいました。

その結果、点数がもっとも高かった上位21%の被験者(すべての質問に3を選んだ人たち)は、点数がもっとも低かった下位23%の人たち(合計点が9点以下の人たち)に比べると、将来健康に支障をきたす割合が明らかに少ないということがわかりました。

これら2つの研究からわかることは、人生を肯定的にとらえて、「楽しい」「幸福だ」と感じている人のほうが、将来も健康を維持する傾向にあるということです。

人生を歩んでいくうえでまったくストレスを感じないでいることは不可能ですから、同じストレスでも上手に解消したり、前向きに受け止めることによって健康寿命が延びるとすれば、まさにそれこそが長寿の秘訣といえるかもしれません。

とはいえ、自分はもともと後ろ向きな人間だし......と、初めからポジティブになることを諦めている方もいることでしょう。そんな方には、アメリカの心理学者ケニー・マクゴニガルの研究が励みになるかもしれません。

彼女の研究によれば、人は「思い込み」によって自分をいくらでも変えることができるのだそうです。たとえば同じことをどうとらえるかで人は健康にも不健康にもなり、短命にも長寿にもなりえるのだといいます。

一般にストレスは悪者と言うイメージがありますが、「自分はストレスを受けている」とネガティブに考える人は、「ストレスがあるとかえってやる気や緊張感が出ていいパフォーマンスができる」などとポジティブに考える人よりも、死亡リスクが43%も高くなるそうです。

また「年を取ること」について「知識や経験が豊富になる」とポジティブにとらえている人は、「自分は役立たずになる」とネガティブにとらえている人よりも8年間長生きするのだといいます。

いずれも、ただ自分の「思い込み」を変えただけで健康になり、寿命が延びるという不思議なことが起きるのです。

フランスの哲学者アランの有名な言葉に「人は幸福だから笑うのではない。笑うから幸福なのだ」というものがありますが、どんなときでも物事を前向きにとらえてポジティブに生きようとすると、それだけで気分もよくなって脳も活発に動くようになり、困難を乗り越えることができ、やがて人生の歯車もいい方に回転するようになるのでしょう。

加えて言えば、たとえ作り笑いであっても、笑顔を作るだけで人の脳は「自分は今楽しいのだ」と、感じるのだといいます。すると、楽しいと感じたときに活性化する免疫細胞が活性化したり、リラックスする効果もあるといいます。

もちろん笑顔で人と接することは、場の雰囲気を和ませたり対人関係を良好にする効果もありますから、幸せのネットワークを生み出すことにもつながるはずです。

誰でも、自分の思い込みや心の持ち方だけで健康や幸せが手に入るのですから、だまされたと思って試してみるといいのではないでしょうか。

【まとめ】人生を前向きに楽しむほど、健康で長生きできる

データはウソをつきません!『長生きの統計学』記事リストはこちら!

060-syoei-nagaikinotoukei.jpg確実なデータを基に、「食事」「生活習慣」「運動」「メンタル」の4分野から29の健康情報を紹介。情報の基となる大学や機関名も記載されています

 

川田浩志(かわた・ひろし)

1965年、神奈川県生まれ。東海大学医学部内科学系血液腫瘍内科教授、医学博士。米国サウスカロライナ医科大学内科ポストドクトラルフェローを経て、2015年4月より現職。最先端の血液内科診療に従事しながら、アンチエイジング医学の普及にも注力する。

shoei.jpg

『長生きの統計学』

(川田浩志/文響社)

「それ、本当!?」というような科学的根拠のないさまざまな健康情報を耳にする昨今。そんな時代に信頼すべきは、エビデンスのある「データ」です。本書で示されているのは、ハーバード大学やウィーン医科大学といった世界の名だたる大学や、各国の国家機関などの統計データをまとめた「事実」のみ。健康のための統計本です。

※この記事は『長生きの統計学』(川田浩志/文響社)からの抜粋です。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP