「自分は、ありのままでいい」と気づかせてくれる...。脳科学者が伝えたい「発達障害のピアニストの魅力」

音楽を聞くと心がホッとしたり、やさしい気持ちになったりしませんか? 脳科学者の中野信子先生は「音楽には、心を和らげる効果を持つことが科学的に説明できます」と話します。その中野さんが「ファン」だと公言する発達障害の天才ピアニスト・野田あすかさんと一緒に取り組んだ共著『脳科学者が選んだやさしい気持ちになりたいときに聞く 心がホッとするCDブック』(中野信子&野田あすか/アスコム)より、「ピアノが野田さんの生き方にもたらした効果」などを脳科学視点でくわしく解説します。

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あすかさんこそ、マインドフルネスの「体現者」で「実践者」なのです

私たちはみんな、仕事や家事や勉強に追われ、忙しい毎日を過ごしています。

片づけなければならないことが次から次へと目の前に現れて、疲れている人、ストレスをため込んでいる人が、数えきれないほどいます。

あなたは、こんなふうに感じた瞬間が、もしかしたらあるかもしれません。

「自分は、いったい何をやっているのかしら」

「仕事や家事や勉強が主人で、自分はその召使いみたいじゃないか」

「これって本当に私のやりたいことなの?私、自分を見失っていないかな」

多くの人は、学校に通い、仕事でもさまざまな知識を学び、経験を重ねて、多くのことを知っています。

にもかかわらず、なぜ私たちは、「自分は何をやっているのかな」なんて思うのでしょうか。

考えてみれば、不思議な話ですね。

私たちは、自分以外の人のことや、身の回りや社会で起こることをよく観察していて、それらに笑ったり怒ったり感心したりしながら生活しています。

でも、自分のこと、いま自分がどのような状態でいるのかということは、意外にもよくわかっていません。

自分を「わかる」ことは、簡単なようですが、これほど難しいことは、そうそうないのです。

人間は「自分自身が自分をコントロールしている」という感覚が強いために、自分の状態がどのようであるかを知ることが、おろそかになってしまいがちだからです。

そこで、あすかさんを救った「気づき」を思い出してください。

「自分は、ありのままでいいんだ」という気づきこそ、忙しい日々を暮らし、自分を見失いがちな私たちに、もっとも必要なものだ、と私は考えています。

脳科学の立場から見ても、「ありのままでよい」という気づきは、脳や心にとってきわめて大切なことです。

「マインドフルネス」という言葉があります。

これは、自分のありのままの心や気持ちに気づき、その気づきで自分をいっぱいに満たすことです。

そのことで自分の心がどのようであるかを知り、よりよく生きることができるのです。

このことは、脳の働きを高め、いわば自分の脳を育て直すプロセスの実践であるともいえるでしょう。

「あすかさんこそ、まさにマインドフルネスの体現者。そして、マインドフルネスの実践者だ」

あすかさんのピアノ曲を聞くたびに、私はそう思います。

あすかさんの歩みは苦しいことの連続でした。

そんななかで、彼女は「この私でいいんだ」という気づきを、そのまま音にしています。

息するように、しゃべるように、ありのままの音を出します。

頭や手でピアノを弾くというより、心と体の全体を使い、ありのままの気づきでピアノをいっぱいに満たしている、といいましょうか。

この作業が、実は、マインドフルネスの実践そのままなのです。

私たちが学ぶべき生き方、心のあり方が、ここにあります。

あすかさんのピアノを聞くことが、気づきを得るきっかけになる、と私は考えています。

マインドフルネスって何?

マインドフルネスとは、自分の心や気持ちに気づき、その「気づき」で自分をいっぱいに満たすことです。

この気づきは、数学の問題の解き方がわかるように合理的・論理的に頭で理解するというのではなく(一部、そんな側面もありますが)、いわば体のすみずみ、細胞一つひとつまで気づきに浸るように、「心と体」の全体でわかることです。

マインドフルネスを提唱したのは、アメリカのマサチューセッツ大学医学大学院のジョン・カバット・ジン教授です。

同教授が痛みを緩和するために開発した「マインドフルネスストレス低減法」は、医療現場にも取り入れられています。

これを参考に開発された「マインドフルネス認知療法」も、うつ病、不安、燃え尽き、摂食障害などの治療に用いられており、一定の効果を上げています。

大切なのは「あるがまま」を受け入れること

マインドフルネスで重要なのは、気づきを「あるがまま」に受け入れることです。

よい気持ちになったりリラックスしたりするわけではなく、自分の心や気持ちに精神を集中させるのですが、その時、批評や判断はしません。

あるがままの自分の気持ちに「気づく」、あるいは「わかる」ことが大切です。

たとえば、「ああ、いまの自分はとても苦しい状態なんだ」と、しみじみとわかれば、それでよいのです。

その時、なぜ苦しいのかと分析したり、苦しみからどう抜け出せばよいかとは、考えないようにします。

「気づき」を消してしまってはいけません。

それは、せっかく灯った、あなたを導いてくれる灯火なのですから。

マインドフルネスのキーワードは「いま」「ここ」「自分」の3つともいえます。

マインドフルネスであなたが意識を集中する対象は、過去でも未来でもない「いま」、ほかのどこでもない「ここ」にいる、ほかの誰でもない「自分」です。

【野田あすか】

広汎性発達障害、解離性障害が原因で、いじめ、転校、退学、そして自傷、パニック、右下肢不自由、左耳感音難聴などで入退院を繰り返してきたピアニスト。たくさんの試練をのりこえてきたことで、あすかの奏でる「やさしいピアノ」は多くの人の感動をよんでいる。

▼コンサート情報

9月19日(土)~22日(火)オンラインコンサート開催

※9月20日(日)~22日(火)はアーカイブ視聴可能

【まとめ読み】『脳科学者が選んだやさしい気持ちになりたいときに聞く 心がホッとするCDブック』記事リストはこちら!

「自分は、ありのままでいい」と気づかせてくれる...。脳科学者が伝えたい「発達障害のピアニストの魅力」 脳科学者が選んだやさしい気持ちになりたいときに聞く心がホッとするCDブック脳科学者が発達障害を持つピアニストの「音楽と心の関係」を全3章にわたって徹底解明。全10曲が入ったCD付きです。

 

中野信子(なかの・のぶこ)
医学博士/脳科学者/認知科学者。フランス国立研究所「ニューロスピン」に博士研究員として勤務。帰国後は脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。科学の視点から人間社会で起こりうる現象および人物を読み解く語り口に定評があり、テレビのコメンテーターとしても活躍中。『脳はなんで気持ちいいことをやめられないの?』など著書多数。

野田あすか(のだ・あすか)
ピアニスト。発達障害や解離性障害が原因で、いじめ、転校、退学、自傷、パニック、右下肢不自由、左耳感音難聴などで入退院を繰り返してきた。たくさんの苦しみを抱え、自分の障害と向き合ってきたことで、同ピアニストが奏でる「やさしいピアノ」は多くの人の感動をよんでいる。2016年プロのピアニストとしてデビュー。全国でリサイタルを行う。

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脳科学者が選んだやさしい気持ちになりたいときに聞く

心がホッとするCDブック

(中野信子&野田あすか/アスコム)

話題の発達障害を持つピアニストと脳科学者が「しなやかな脳と心を育てる」ことを目的に作ったCDブック。音楽と心の関係を、「天才ピアニストが音楽とともにたくさん乗り越えて歩んできた人生」と照らし合わせながら脳科学者がくわしく解説しています。ホッとしたい。やさしい気持ちになりたい。収録された10曲入りのCDを聞くだけで、ストレスの多い現代人たちに心の癒しをもたらす一冊です。

【コンサート情報】

▼9月19日(土)~22日(火)オンラインコンサート開催

※9月20日(日)~22日(火)アーカイブ視聴可能

■『発達障害を持つ天才・ピアニスト野田あすか』の紹介動画もチェック!

※この記事は『脳科学者が選んだやさしい気持ちになりたいときに聞く 心がホッとするCDブック』(中野信子&野田あすか/アスコム)からの抜粋です。
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