生理のある女性の7割が経験⁉「PMS」(月経前症候群)の原因と「改善のカギ」とは

生理痛がひどくて動けない、婦人科疾患が治らない...こうした悩みや不安は、なかなか人には聞けないものだと思います。そこで、こうした多くの相談に答え、5万人の膣を診てきた婦人科医・駒形依子さんの著書『膣の女子力 女医が教える「人には聞けない不調」の治し方』(KADOKAWA)より、人には聞けない不調を解決するカギとなる「こまがた式セルフケア」についてご紹介します。

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7割の女性に起こるPMSの原因

生理のある女性の7割が経験しているというデータもあるくらい、今となってはメジャーになったPMS。

PMSとは、別名、月経前症候群といって、生理の1~2週間前から起こる不調のことです。

症状は人によってさまざまですが、むくみ、食欲増加、寒気、下腹部痛、便秘、イライラ、胸の張りなどが挙げられます。

ではなぜ、PMSが起こるのかというと、生理前に分泌される女性ホルモンの1つであるプロゲステロンが分泌されるからです。

このホルモンには、乳腺の発育、厚くなった子宮内膜の維持、基礎体温を上昇させる働きなどが有名ですが、もう1つ、生理の出血に備えるためにいろいろなものをため込む作用があります。

過多月経で失う赤血球やヘモグロビンを最小限に抑えるために、水分を体内にため込むことで血液を薄めたり、大量出血に備えて栄養分を確保する準備をしてくれるホルモンです。

これも、過多月経で失うぶんが多ければ多いほど、準備がたくさん必要になるわけですから、出血量が増えれば増えるほど、むくみや過食は悪化します。

また生理前は、生理に向けて子宮へたくさんの血液が集まってくるため、子宮が一時的に少し大きくなることで下腹部痛が起こったり、腸の動きが悪くなることで便秘になったりします。

そして頭痛は、生理前に水分を過剰にため込むことで、頭皮がむくむことが原因で起こったり、過多月経で大量に血液を失っている最中や失った後、急激な脱水状態になることが原因で起こったりします。

胸の張りや肩こりも、子宮に血液が集中することで滞りやすくなり、血液の流れが悪くなることで引き起こされます。

子宮に血液が集中し、一時的に全身を巡る血液が少なくなると、血液が減ったぶん、体温が下がって寒気として感じることも多くなります。

一方、PMSではイライラや落ち込みなどの感情面の症状が出る人も多いのですが、これは、東洋医学の考え方を使うとわかりやすいと思います。

東洋医学では、体を構成する3大要素として「気・血・水」が大事とされます。

●気→生命活動の原動力のこと
(活動エネルギーや感情のエネルギー、酸素、二酸化炭素、ガスなど)

●血→血液とその中に含まれる栄養素や成分のこと
(ヘモグロビンやホルモンなど)

●水→リンパ液や汗、尿などの体液のこと
(水分、老廃物など)

この3つは三位一体で、常に一緒に移動しています。

ですから、血液が子宮に集まれば、感情も子宮に集まるのは当然。

前述したように、生理前に準備のためとはいえ子宮に血液が集まることで、血液を動かすためのエネルギーに含まれる「感情のエネルギー」までもが一気に子宮に集まります。

1カ月間、体を散り散りに巡っていた感情や、日ごろ少しずつため込んでいた感情が一気に爆発します。

これは、ため込んだ感情を生理前に口から八つ当たりとして出すか、血液として子宮から出すかの違いで、外に出すまではよくなりません。

なので、日々のイライラや鬱々とした感情は本来、生理前後だけでなく、その日その日に解消していかないと、PMSはよくならないのです。

このように、生理前はプロゲステロンの作用で血液を失うための準備としていろいろなものをため込んだり、子宮に血液が集まることで全身の血流が悪くなったりすることで、多くの不調が起こるのです。

生理トラブルの救世主は「排泄力」

PMSを根本的に解決するには、やはり過多月経をなくす・減らすことが必要ですが、そこに行きつくまでにカギとなるのが「排泄力」です。

なぜなら、便の排泄にせよ、体内の老廃物の排泄にせよ、ホルモンの分泌にせよ、何かを出すには力が必要だから。

排泄力が高まるのは、自律神経の副交感神経が優位になっているとき。

つまり、体の筋肉がゆるみ、リラックスできているときです。

多くの女子は、この時間を作るのが下手です。

だからこそ、この時間を上手に作ることが大事になってきます。

一般的に、ホルモンの分泌におけるゴールデンタイムは、午後10時から午前2時の間と言われています。

しかし、その時間に寝たところで、血圧が高かったり、体温が低かったり、歯ぎしりや噛みしめがあったり、呼吸や眠りが浅かったり、うなされていたりするなど、寝ていてもリラックスできていなければ、出るものも出ません。

ちなみに、お尻やデコルテ、背中にニキビができる人は、排泄力不足のサイン。

排便、排尿、汗で出せなかった老廃物が、たまりにたまって毛穴から排泄された結果です。

排泄力をアップさせるには、まず胃腸を休ませることが大事。

胃腸は食べたものを消化・吸収するために、24時間365日、常に働いてくれています。

しかし、負担がかかったままで食べ続けていると、胃できちんと消化できなくなり、腸できちんと栄養が吸収できなくなります。

必要な栄養を必要なときに吸収できないと、体はいざというときのために、ため込む方向に傾きます。

すると当然、排泄力は低下してしまいます。

排泄ができなければ体にスペースがないので、新たに吸収することもできません。

必要な栄養分が吸収されなければ、体はいいものも悪いものもため込む方向に傾くため、排泄力が低下。

血液もつくられなくなるので、それが積み重なることが、生理痛や過多月経、さらには不妊へとつながります。

胃腸の不調と生理トラブル、不妊が関係しているなんて思っていないかもしれませんが、実はすべてつながっているのです。

もともと、あたしたち人間は受精卵という1つの細胞が分裂してできただけなのですから。

新しいものを取り入れるよりも、いらないものを捨てる力。

この排泄力こそが、女子が女子として健康な体をつくる基本なのです。

【まとめ読み】人には聞けない悩みがある人に。『膣の女子力』記事リスト

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生理や婦人科疾患などの悩みを解決するカギや、セルフケアの方法について、5章に渡ってわかりやすく解説

 

駒形依子(こまがた・よりこ)
東京女子医科大学医学部卒業。2018年、山形県米沢市に婦人科・漢方内科のこまがた医院を開業。高校生の頃から生理痛や過多月経に悩まされる。婦人科での研修医時代、患者よりも自分の生理のほうがひどい状態という矛盾を痛感し、生理痛や過多月経をなくす方法を追求し始める。その後、東洋医学を基礎から学び、自分の体を使って実験をくり返し、最小限の努力で最大限の効果を発揮するセルフケアを考案。自称「子宮が大好きすぎる産婦人科医」。ブログや講演活動を通じて、患者が自分で自身を治すための「グレない子宮の作り方」を提案している。

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『膣の女子力 女医が教える「人には聞けない不調」の治し方』

(駒形依子/KADOKAWA)

生理のトラブルや、婦人科疾患、不妊、セックスの悩みといった多くの相談に答え、5万人の膣を診てきた婦人科医が、人には聞けない不調を解決する自身考案の「こまがた式セルフケア」について紹介しています。なかなか人には聞けない悩みや不安をスッキリ解消するヒントになる、話題の一冊です。

※この記事は『膣の女子力 女医が教える「人には聞けない不調」の治し方』(駒形依子/KADOKAWA)からの抜粋です。

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