毎日の生活にも影響するのがトイレに関する不調ですよね。今回は、「頻繁にトイレに行きたくなるのに行っても少ししか出ない」というお悩みが、ビール好きの63歳男性から寄せられました。医療法人社団同友会理事長、高谷典秀先生がお答えします。
Q
夜間に何度もトイレに行くのは晩酌のせい?
63歳の男性です。近頃、トイレの回数が多くなりました。
午前中だけでも4~5回くらいトイレに行き、午後には2回くらい、夜中にも、多いときには2回もトイレに行きたくなり、目覚めてしまいます。
尿を出すため、お腹に力を入れても、少しずつしか出せません。
尿がたまりすぎているのか、膀胱のあたりがムズムズするような気もします。
ちなみに私はビールが好きで、毎晩晩酌をしています。
その場合、このくらいのトイレの回数というのは普通なのでしょうか、それとも、年のせいで頻尿になっているのでしょうか。
A
前立腺肥大の疑い
頻尿、残尿感の症状
今回はトイレの回数が増えたという方からのご相談です。
トイレの回数が増える症状は頻尿と呼ばれますが、ある程度年齢を重ねてからの頻尿は、前立腺肥大という病気が隠れている可能性があることは皆さんご存知かもしれません。
今回、ご相談者の症状を伺う限りでは、やはり前立腺肥大が一番疑わしいです。
前立腺は膀胱の下側の、尿を排出する管を取り囲むようにしてついており、それが肥大してしまうと、尿管が圧迫され、尿がスムーズに出て行かなくなってしまいます。
よくある症状としては、今回のような頻尿であったり、尿をした直後でも、まだ尿が膀胱に残っているような残尿感があったり、排尿の途中で尿が途切れる、以前よりも尿の出る勢いが弱くなった、力を入れないと尿がなかなか出てこない、夜間に尿に起きる回数が増えるなどです。
このような症状が出てくると、前立腺肥大症の可能性が高いです。
とくに、夜にビールなどを飲んでしまうと、そういった症状も助長されてしまいます。
前立腺肥大症は悪性の病気ではないので、通常はそれだけで命にかかわるということはありません。
ただ、排尿が困難になるというのは非常に不快ですし、日常生活において困ることも多いと思います。
その場合は、まずはお薬で前立腺肥大による尿路への圧迫を和らげ、先ほどのような症状を緩和させることができます。
あまり症状がひどい場合、たとえば尿が全く出せなくなってしまったような場合、手術を行うこともございます。
手術は尿道を圧迫している部分を切除する標準的な方法に加えて、最近ではレーザーや温熱を用いて治療する方法や、尿道にステントを入れたりするものがあります。
症状の辛さや、腎臓機能の悪化、感染症が頻繁に引き起こされるなどの場合に、専門の先生とよくご相談の上で手術をするか決めていただくことになります。
また、稀に前立腺肥大症以外の病気でも、今回のご相談と同じような症状が現れることもございますので、鑑別診断も必要です。
たとえば前立腺の病気で最も恐い、前立腺がんです。
早期の段階ではあまり症状のない前立腺がんですが、前立腺肥大症と同じような排尿障害が出てくることがありますので、腫瘍マーカーによる検査や、画像診断などで、そういった心配がないかチェックをすることが大切です。
ほかにも前立腺炎というものもございます。細菌などの感染によって前立腺が炎症を起こしてしまい、症状としては、尿路が刺激され少し違和感があったり、頻尿になったりします。
この場合は、尿の中の細菌の有無や、白血球が増えていないか、尿のチェックをすることになります。
また神経因性膀胱というものもございます。排尿のコントロールは神経で行っているものですから、膀胱や前立腺などに問題がなくても、脳梗塞やパーキンソン病など、神経がやられてしまうような様々な病気によって、排尿にまつわる様々な問題が出てくるものです。
症状は頻尿、ときには失禁をしてしまうこともあります。
まずは泌尿器科を受診していただき、このような病気の鑑別診断を念頭において、詳しく調べていただくことをおすすめいたします。(老友新聞)