「病院に行くべきかどうか...」悩むレベルの"困った症状"、いろいろありますよね。今回寄せられたのは、「爪の異常」と診断されて不安を抱える60代男性のお悩み。医療法人社団同友会理事長 高谷典秀先生がお答えします。
Q
「ばち状爪」と診断され不安
67歳の男性です。爪の異常について教えてください。
先日風邪を引いて、近所の医者にかかった時の事ですが、喉や胸の音を調べた後、指の先も調べられて、「ばち状爪ですね」と言われました。
「肺や心臓は悪くないですか」と質問をされたのですが、心当たりはありませんし、検査をしたこともありません。結局その日は風邪薬をもらっただけで帰りました。
爪を見ただけで、肺や心臓の病気が分るものなのでしょうか。場所が場所なだけに、それ以来、心配になってしまい、お手紙をいたしました。なにか特別な検査をした方が良いのでしょうか。
A
肺・心臓疾患の可能性。まずCT・超音波検査を
今回は爪の異常を指摘された方からのご相談です。
かかりつけの医師より、ばち状爪と言われたとの事ですが、医学的には「ばち指」と言います。指先が太鼓の「ばち」のように丸くなることからその名が付けられています。
ばち指では、爪の下にあるやわらかい組織が隆起することで、爪の付け根の部分が盛り上がり、角度がなくなってしまいます。正常な方の指ですと、左右の人差し指の先を、お互いに背側で重ね合わせた時、中央にひし形の隙間が生じます。ですが、ばち指の方の場合、指先が丸く膨らんでいるため、この隙間がない状態になることでも確かめられます。
ばち指の症状を引き起こす原因は、診ていただいた医師の指摘の通り、多くが肺気腫、肺がんなどの肺の病気、あるいは心臓の病気というのが一般的です。肺気腫などの慢性の肺疾患や心臓の病気が原因の場合は、爪に異常が出るくらいまで病状が進行していると、呼吸困難や心不全、チアノーゼなど他の症状が出ていることが殆どです。したがって、ばち指に気がついた時には、すでに診断がついているケースが多いと思われますが、まだきちんと調べていない場合には、肺CT検査や、心臓超音波などの検査を受けられると良いでしょう。特に、肺がんにつきましては、他の症状がはっきり出る前に、ばち指がきっかけとして発見されるケースもみられますのでご注意ください。
これらの病気で、なぜ指がばち状になるのか、はっきりとした原因は分っていないのですが、何らかの原因で指先の血流量が増え、爪の根元の下の組織に浮腫や充血がみられるようになり、細胞の増殖が起きて丸く盛り上がってしまうといわれています。
今回ご質問のばち指に限らず、爪というものは全身の様々な病気を現すことがあります。
たとえば匙状爪やスプーンネイルといわれる爪があります。これは、普通は外側に膨らむ爪が、反対にスプーンのように爪の甲が凹むような形になるものです。原因は女性に多い鉄欠乏性貧血で、赤血球を作り出すのに欠かせない鉄分が不足して貧血になるものです。
このように、内臓疾患が指先や爪の形状や色調の変化としてあらわれることがありますので、常に注意しておくと良いでしょう。(老友新聞社)