肩や首のコリ、目疲れや肌あれ・・・年齢を重ねるごとに増えていく体の不調。これらを解消するのに外せないのが、毎日入る「お風呂」でしょう。医学的にお風呂を研究する医師・早坂信哉さんは「入浴方法を少し変えれば、さらなる健康効果が期待できる」と言います。そこで、早坂さんの著書『最高の入浴法~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)から、「疲労回復できる入浴法」のエッセンスを連載形式でお届け。今夜からお風呂の時間が劇的に変わります。
「デジタルデトックス」で脳を休ませる
電車内を見渡すと、ほとんどの人がスマホの画面に見入っている......。今となっては当たり前の光景です。同じように乗換のときもエスカレーターに乗るときも、みなさんスマホを手放しません。以前は、新聞や文庫本を読む人も多かったのですが、最近ではほとんど見かけなくなりました。
スマホやタブレットによるネット利用時間は、近年、増加傾向にあります。2014年度の総務省の調査では、スマホでのネット利用時間は20代では平日で108分、休日で149分。一方、新聞の閲覧時間はいずれも2~3分にとどまっています。仕事、睡眠、食事以外は、ほとんどの時間をネット利用に費やしているのではないでしょうか。
最近は、お風呂でのスマホ利用者も増えてきました。家電量販店では様々な防水ケースも販売されています。LIXILが2014年に行った調査では、20代女性では15%がお風呂でスマホなどのモバイル機器を使っているとの結果が出ました。今となっては、お風呂はただお湯に浸かる場所ではないのかもしれません。
スマホでTwitterやInstagramなどを見たり、Youtubeで動画を観たりしているとき、私たちは視覚を通して様々な情報を脳に取り込んでいます。スマホを使っている間は、目だけでなく脳も興奮し続ける刺激を受けることになり、長時間になると脳の疲労につながります。
また、スマホに熱中していると、私たちは自然と前傾姿勢になってしまいます。この姿勢を長時間続けていると、肩や首の周囲の筋肉を緊張させ、結果として首こりや肩こりにつながってしまいます。これは日本だけでなく、世界的に起こっている現象なのです。
お風呂で「マインドフロネス」
医師としては、せめてお風呂の間だけでもスマホを置いて、ゆっくり「デジタルデトックス」をしていただきたいと思います。38~40℃のぬるめの湯に首までどっぷり10分ほど浸かります。お湯の温熱効果で血流がよくなったところで、首や肩の筋肉のこりをほぐします。首をゆっくり回したり、肩を回したりしましょう。
近年「マインドフルネス瞑想」が流行していますが、湯船に浸かる10分を瞑想の時間にする「マインドフロネス」もおすすめです。
大切なことは、短時間であってもお風呂の時間はスマホを使わないと決めることです。
私たち医師は自宅にいても、なにかと急な連絡がくることがあり、スマホや携帯電話は24時間手放せないものですが、休暇で一時的に業務を同僚に頼むときは、やはり解放感があります。このような経験上、「人間にはネットから離れる時間」も大切であると実感しています。
普段は当たり前になっている「いつでもつながっていること」は、実はストレスになっているということが、そこから解放されてみると、よくわかると思います。
今晩はスマホを置いて、ゆっくりお風呂に入ってみませんか?
※お湯の温度は、1℃の違いで体に与える効果が変わります。自宅の浴槽に温度調節機能がない場合は、お風呂用の「湯温計」のご利用をおすすめします。ホームセンターや、デパートのベビー用品コーナーなどで販売されています。
※掲載されている入浴法は、様々な医学的研究の結果から、その効果が一般的に期待されるものです。ただし、個人の体質や疾患の性質により、その効果には個人差があります。症状が緩和しない場合、主治医に相談してください。
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