体温42.5℃を超えると突然死も!? 長湯は要注意「入浴中の熱中症」

入浴中に浴槽で体調を崩した高齢者のうち、8割以上が熱中症かその疑いがあることが、7月、千葉科学大学の黒木尚長教授の調査で分かりました。従来、入浴の際は、ヒートショックの危険性が指摘されてきましたが、定説が覆る可能性が出てきて注目を集めています。
そこで、調査を行った黒木尚長教授にお話をお伺いしました。

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入浴中の体温上昇は危険! 42℃以上の長湯は要注意

厚生労働省の人口動態統計によると、2016年の家庭での浴槽での溺死者数は、5138人。なかでも、65歳以上の高齢者数は4756人と、全体の約9割を占めています。

黒木尚長先生は、65歳以上の男女3000人を対象に入浴に関するアンケートを実施。入浴中に具合が悪くなったことがある人は10.8%に上り、その内訳は熱中症が62.2%、熱中症の疑いが22%。ヒートショックの疑いは、入浴前後を合わせても7.1%でした。

「体温37℃の人が全身浴をした場合、湯温が41℃だと33分、42℃だと26 分で体温が40℃に達します。この結果、入浴中であっても重度の熱中症の症状が出て、意識障害を生じるリスクが高まることが分かります。そのまま入浴を続け、体温が42.5℃を超えれば突然死することもあり得ます」と、黒木先生。

熱中症というと夏というイメージがありますが、入浴中に熱中症を起こすのは、冬場が圧倒的に多いそうです。「夏に比べて冬は、湯温を2℃ぐらい高くして長めに湯につかる人が多くなります。特に、70歳以上になると、神経の老化によって熱さを感じにくくなり、長時間湯船につかる傾向が高くなります。すると、めまいや頭痛、倦怠(けんたい)感など熱中症の初期症状に気付かないまま、意識障害に陥ることもあります」(黒木先生)。

予防のためには、湯温は41℃以下、入浴時間は10分以内を目安にするのが有効です。長湯を好む人は、耳式(鼓膜)体温計でこまめに体温を測るのもおすすめです。体温の上がり方には個人差がありますので、日頃の自分の平熱を知り、入浴中の体温の上がり過ぎを防ぎましょう。

湯温によって深部体温の上昇ペースは異なります!

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42℃以上の湯に全身浴でつかると、30分未満で体温は40℃まで上昇!

※参考:杉本有梨、伊香賀俊治、堀 進悟、鈴木 昌、高柳絵里: 入浴時の体温予測モデルの開発と熱中症による死亡・入院リスクの予測。日本建築学会大会(富山)学術講演梗概集 D-2 環境工学Ⅱ、591-592, 2010

上の図は、体温37℃の人が全身浴をした場合の湯温と入浴時間による、体温の上昇を予測したものです。一般的に、湯温42℃での全身浴では、10分間で体温が1℃上昇するといわれます。

こんな症状は熱中症かも!

入浴中や入浴後に下記の症状が起こったら、熱中症の可能性があります。涼しい場所へ移動し、体を冷やしましょう。

●めまい、立ちくらみ
●生あくびが出る
●大量の汗が出る
●筋肉痛、こむら返りがする
●頭痛
●嘔吐
●倦怠感や虚脱感がある

予防には!

湯温は41℃以下、つかる時間は10分までを目安にする
耳式(鼓膜)体温計で深部体温を測る

取材・文=笑(寳田真由美)

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<教えてくれた人>

黒木尚長(くろき・ひさなが)先生

千葉科学大学危機管理学部 保健医療学科 教授、医師。入浴事故や熱中症の研究に取り組むこと約30年。主な研究分野は、危機管理学、救急救命学、法医学、賠償科学。

この記事は『毎日が発見』2019年10月号に掲載の情報です。

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