大手企業が社員教育に取り入れたり、メディアで取り上げられたりと、何かと話題の「マインドフルネス」。雑念を払い、ありのままの今に意識を向けるという心のエクササイズですが、このマインドフルネスを病気の予防に役立てようという動きが今、注目を浴びています。
書籍『自分を休ませる練習 しなやかに生きるためのマインドフルネス』の著者である医師の矢作直樹氏は、多くの人がストレス過多によって心身に不調をきたしていると指摘。マインドフルネスにより今の自分の状態や生活を見つめ直すことが、健康な生活につながるのだと説きます。
今に意識が向くと、心身がみるみる元気に!
マインドフルネスというと、瞑想や修行を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、決してそれだけではありません。動作の一つ一つに心を込める、物事を注意深く見るなど、日常生活の中でも工夫次第でできることがたくさんあると矢作氏は言います。そのいくつかを早速ご紹介しましょう。
1. 歩くために歩く、食べるために食べる
今に意識を向けるには、とにかく目の前のことに集中するのが効果的だそう。
"歩くこと"を例にとると、どこかへ行くためではなく、歩くこと自体を楽しむ、「歩くために歩く」という気持ちがポイントだといいます。まずは体の中心(丹田)を意識して真っ直ぐに立ち、そして一歩一歩踏みしめるように歩く――。すると体幹トレーニングの効果があり、自律神経にも良い影響があるのだとか!
また、食事の際も、機械的に食べるのではなく、一口一口しっかりとかみ砕き、ゴックンとすることに意識を向けることが大切だそうです。一見簡単なことですが、不思議と心が落ち着いてくるといいます。誤えんや過食を防止する効果もあるそうですよ。
2. 季節の移り変わりを感じる
常に移り変わっていく四季に思いをはせるというもの、今を意識するのに有効な方法だといいます。
日本に古くから伝わる「二十四節気」では、立春から大寒まで、24の季節の節目が巡ってきます。この考えは、私たちが季節の趣を味わう手助けをしてくれると矢作氏。1年を細かく見ていくことで、肌をなでる風、空の色、日の長さ、それらが少しずつ変化していくのを感じることができるということです。
季節を意識して生活すると自然と心と体のリズムが整ってくる、そして生存本能のひとつである嗅覚を磨くことで生命力が強化されると矢作氏は言います。
3. 今の自分を受け入れる
「私は人間本来の自然な加齢を楽しむというスマートエイジングを提唱しています」と矢作氏。若いうちはできることが増えるのに、中高年になるとできないことが増えるように感じて、落胆してしまうこともあるかもしれません。そんな時、「今できること」に集中するというマインドフルネスの考え方が、自信を取り戻す手助けをしてくれると言います。
中高年世代は、あれもこれもと欲張るのではなく、あれかこれかと選択するステージにきたと考えれば、経験値を武器にして、自分にとって本当に必要なことを見極める段階に達したととらえることができるというわけです。「加齢を受け入れ、今の自分を受け入れること、加えて、他人と比べないことができれば、確実にストレスは減ります」と矢作氏は言います。
いかがでしたか?忙しい毎日、少しだけ立ち止まってマインドフルネスを実践してみませんか。心と体に思わぬ効果をもたらしてくれるかもしれませんよ。
文/寺田きなこ
(矢作直樹/文響社)
東大病院の救急医療の現場で15年勤め上げた医師が考案する「マインドフルネス」。自分の心と身体を大切した、健やかな生活を送るためのヒントが満載です。