「発熱40度」は冷やす?温める? 東洋と西洋で全く違う医学の診断方法

冷え性や生理不順、むくみに便秘...「自分の体質だから」とあきらめていませんか? その悩み、毎日の食事などを少し意識すれば解決するかもしれません。ヒントとなるのは中医学(中国伝統医学)のセルフケア。そこで、東洋と西洋の医学に精通した医学博士・関隆志さんの初著書『名医が教える 東洋食薬でゆったり健康法』(すばる舎)から、中医学をベースにした「不調を治す食事&運動の考え方」を連載形式でお届けします。

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©須山奈津希

本人の感じている症状と反対のことをするのが中医学の鉄則

「中医学」。西洋医学とはどう違うのでしょうか?

「体温計で測ったら40度も熱がある......」

こんなとき、ふつうは熱があるから、冷やそうと思いますよね?

しかし中医学では、40度だから熱があるという判断はしません。同じ40度でも、患者が「寒い」と言えば、「冷え」が原因だと推察して、温めたり、冷えをなくす食べものや漢方薬を飲んだり、同様の効果を持つ鍼灸治療をおこなったりします。

反対に患者が「熱い」と感じれば、その体感(そのときに感じている感覚)を重要視して、冷やす治療をおこないます。

このように、中医学と西洋医学とでは、同じ患者さんや症状に対して、治療方針が異なってくることが少なくありません。

中医学は、現代の西洋医学と比べ、人間を身体面、精神面のトータルで診るところが一番の魅力です。

たとえば、「心臓がドキドキする」という理由で病院に行くと、現代西洋医学の場合は、心電図をとって動悸を抑える処置をしてくれます。

しかし中医学の場合、動悸は心臓の不調だけが原因ではなく、たとえば「心配ごとなど、心の状態にも原因があるのではないか?」と考えるのです。

そのため、体の症状だけではなく、家族や職場の社会環境など、さまざまなことを聞き出し、それらを考慮したうえで診断をくだします。

中医学では、体は不調だけれど心は健康、また逆に、体は健康だけれど心は不調といったケースはあまりないと考えます。体に不調がある人は、心にも何かしらの不調を抱えている人が多いと考えるのです。

中医学と西洋医学とは見ている観点が違う

こうした中医学の診断の際、判断の材料を集める方法が、望診、聞診、問診、切診の4つの情報収集方法で「四診」といいます。

「望診」とは、目で見て情報を得ることです。

「聞診」は、音を聞いたり、においを嗅いで情報を得ること。

「問診」は、患者の体の状態だけではなく、心の状態や社会環境の話を聞いて情報を得ること。

「切診」は、脈やツボ、おなかに直接触って情報を得ることです。

中医学の医師は、この四診で患者の状態を診て、総合的に分析したのち、最終的な診断をくだして治療をおこないます。こういった診察方法をとることが、中医学が「体と心をひとつのものとして診る」と言われてきた所以でしょう。

ちなみに、これら四診のうち、望診、聞診、問診の3つは現代西洋医学でもおこないますが、西洋医学では日常的にやらないのが「切診」です。「西洋医学の病院でも、脈やおなかを診るじゃないか」と思うかもしれませんが、いまでは脈診をするのは、血圧が低すぎないかどうか、血液が通っているかを確認するため、動脈を触るときぐらいです。

一方の中医学では、脈診などの切診はまだまだ大切な情報収集方法で、体質や臓器、気・血・津の異常を判断する場合に脈診を使います。

そのほかの違いとしては、西洋医学と比べて、中医学では「問診」を丁寧におこなうことでかなり正確にその人の状態を把握できることが挙げられます。特に私の診察では、患者さんから聞き出せることはなんでも、根掘り葉掘り聞き出し、約360問に及ぶほど話をよく聞きます。

たとえば「体の調子が悪い」と身体的な苦痛を訴えてきた人にも、精神や情緒の状態について質問をし、さらには職場や家族のこと、いま抱えている個人的な悩みの具体的な内容まで聞かせてもらいます。

そうすると、やはりその人の人生というものが見えてきます。

その人が生まれてから、自分の目の前にくるまでの状況がある程度把握できると、体質や病気を治すためのヒントが見つかりやすく、「いまのアナタはこの『証』だから、このツボを押すといいですよ」とか、「この食べものはいい」「これはよくない」といった具体的なアドバイスもしやすくなります。

ということで、自分で言うのもなんですが、東洋医学の外来では、ちゃんと診察すれば患者さんはよく話を聞いてくれたと、けっこう満足してもらえるものなんです。

このように、西洋医学と中医学では違う部分が多くあります。

ほかにも、前述したように臓器(の働き)についてもまったく違う捉え方をしている部分がありますし、同じ言葉を使っていてもまったく違うことを指している「同綴異義語(どうてついぎご:同じ綴りで、別の意味を表している言葉)」も数多く存在します。

優劣を議論するより、両方のいいところをとり入れる

最近では、現代西洋医学でも遺伝子レベルで人間を個別化し、オーダーメイドの診断をすることが可能になってきています。病気の部分だけではなく、人間を全体から診断する方法が、現代西洋医学でも開発されてきていると言えるでしょう。

しかし、現代西洋医学の血液検査などでわかることが、中医学でわかるとは限りませんし、中医学の診察方法でわかることが、現代西洋医学でわかるとも限りません。

つまり、両方、人間の一面しか診ていないのです。

また、中医学と現代西洋医学のどちらが優れているかという議論も、あまり意味がないでしょう。

それは、スポーツができる人と勉強ができる人のどちらが優れているかを議論することと同じようなものです。

中医学と現代西洋医学では、それぞれの症状に対して診ている視点が違います。

中医学にも現代西洋医学にも、それぞれ長所があります。どちらかにこだわりすぎることなく、それぞれの長所を柔軟にとり入れて、みなさんの健康の維持や増進に役立てることが一番大切だ、ということは忘れないでください。

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057-syoei-touyoushokuraku.jpg理論よりも実践がメイン。4章にわたって体質・体調に合わせたレシピやツボを刺激するエクササイズが写真付きで紹介されています

 

関 隆志(せき・たかし)

医学博士。WHO Temporary アドバイザー。内科医、日本東洋医学会認定医。東洋食薬ライセンス 理事長ほか。東北大学医学部医学科卒業後、東北中医クリニック院長、東北大学医学部附属病院 老年・呼吸器内科医員、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター サイクロトロン核医学研究部研究教授を経て現職。

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『名医が教える 東洋食薬でゆったり健康法』

(関 隆志/すばる舎)

年齢を重ねると増えていく体の悩みが、みるみる改善! 8つのタイプと症状から、あなたの「証(体の状態)」と体の整え方がわかります。難しい言葉もわかりやすく解説された、誰でもできる不調を治す食べ方&体の動かし方のコツが詰まった東洋医学セルフケアの入門書。

※この記事は『名医が教える 東洋食薬でゆったり健康法』(関隆志/すばる舎)からの抜粋です。

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