痛みがずっと取れない...尾を引く「慢性頭痛」の対処法とは?/漢方のプロ・櫻井大典先生が教える健康法

病院にかかるほどではないけれど、なんとなく体の調子が良くない。とくに女性を悩ませがちな「冷え」や「肌荒れ」などについて、Twitterフォロワー数10万人(2019年1月現在)を数える漢方の専門家・櫻井大典先生に、その原因や対処法を教えてもらいました!

できるだけ実践しやすく、続けやすい、中医学にもとづいた健康法を、全5回にわたってお届けします。第4回目のテーマは、前回に続いて「頭痛」です。今回は「慢性頭痛」を取り上げます。

前の記事はこちら「いきなりズキッ!急に起こるやっかいな「急性頭痛」はこうして抑えます/漢方のプロ・櫻井大典先生が教える健康法」

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西洋医学において頭痛の原因とされるのは、血管性(血管壁の拡張・伸展)、精神・筋肉の緊張、心因性(抑うつなど)、頭蓋内疾患、神経痛などがあります。一方、中医学では冷えや熱、イライラや疲労など、さまざまな理由から起こると考えられています。中医学はこれらの原因に対処することで、頭痛を改善します。

中医学において頭痛は、急に起こる「急性頭痛」と、ずっと痛みが続く「慢性頭痛」に区別します。今回は、「急性頭痛」の原因と、その対処法をご紹介します。


慢性頭痛は3種類、その原因と対策は?

慢性頭痛には、まず「気虚(ききょ)」、「血虚(けっきょ)」、「腎虚(じんきょ)」(※後述)といった虚弱状態から起こるものがあります。さらに、不要物が溜まって詰まる痰湿(たんしつ)によるもの、血の質が悪化したり、冷えたり凝ったりなどで血流障害がもとになる瘀血(おけつ)によるものの3種類があります。

それぞれの特徴を見ていきましょう。

虚弱による頭痛

虚弱が起こる原因には、もともとの身体の弱さに加えて、過労、加齢、寝不足、運動不足および過剰な運動などが挙げられます。

虚弱状態は、その原因の違いで、さらに3つに分類されます。

まず、「気虚」は、体を元気に動かすエネルギーの「気(き)」が足りない状態です。疲労状態ともいえます。気虚による痛みの特徴は、朝や午前中に起こり、しくしくと痛むうえに、それがいつまでも続きます。また、なんとなく痛い、疲れたときに悪化する、さすると気持ちいいなどの特徴もあります。これらは、このあとに解説する血虚、腎虚も同様です。

そのほかの症状として、身体が疲れやすくダルい、息切れがする、汗をかきやすい、カゼを引きやすい、胃腸が弱いなどがあります。

対策としては、とにかく休むこと。そして米、かぼちゃ、芋、長芋類などを加熱して、少しずつ食べましょう。疲れを感じると焼き肉などのヘビーなものを食べがちですが、そういったものは消化にエネルギーを使うため、より気虚が進んでしまい逆効果です。消化しやすく、気を補う栄養のある上記の食べ物を摂りましょう。

これはすべての慢性頭痛に共通しますが、食材による対策はふだんから取り入れておくことが大事で、頭痛になってから始めても、すぐに効果は現れません。早く効果を得たいときは漢方薬が必要なので、専門家にご相談ください。

「血虚」とは、体内を流れる栄養分である「血(けつ)」が不足した状態です。月経中や月経後に痛みが発生することが多く、夜になると痛みます。しくしくとした痛みがいつまでも続く、なんとなく痛い、疲れたとくに悪化する、さすると気持ちいいなどの特徴は気虚といっしょです。そのほかに、疲れやすく顔色が白い、貧血やふらつきが起こる、経血の量が少ないといった特徴があるので、そこで「気虚」と見分けてください。

血虚の対策には、黒豆、黒ごま、黒きくらげといった、黒い食べ物が有効です。赤い食べ物も有効で、レバー、いちご、人参、なつめなどもおすすめです。毎日の献立に取り入れるなら、黒ごまが使いやすいのではないでしょうか。黒豆は炒ってからおかゆに混ぜたり、黒豆を使ったスープでもOKです。

気虚と血虚は併発しやすいので、両方の症状が重なっていることもあります。その場合は、気虚と血虚両方のおすすめ食材を摂りましょう

腎虚とは、成長・発育・生殖を司る「腎(じん)」が弱った状態です。中医学が指す腎は、ホルモンバランスや知能、知覚、運動系の発達と維持など、人体の生命力が蓄えられている場所です。ここが弱ると、空虚感や頭が空っぽになる感じがして痛みます。

また、しくしくとした痛みがいつまでも続く、なんとなく痛い、疲れたときに悪化する、さすると気持ちいいという「気虚」や「血虚」などと同じ症状が起こります。それに加えて、疲れやすい、足腰がだるい、すぐに座りたくなる、忘れっぽい、耳鳴りが起こるなどの症状もよく見られます。

腎虚の対策としては、まず冷やさないこと。とくに下半身は、冷やすと腎が弱ります。さらに、適度に歩くことも腎虚には効果的で、腎が管轄している骨に良い刺激を与え、活性化してくれます。一駅分歩く、エレベーターよりも階段を使う、電車で座らずに立つなど、できることを試してくださいね。

腎に良い食材は、海藻類、貝類などミネラルが多いもの。そのほかに、クルミ、クコの実といった「実のもの」も効果的です。

痰湿による頭痛

ここからは、慢性頭痛でも虚弱が原因ではなく、日々の生活習慣から溜まった病理産物が原因になっている頭痛を解説します。

「痰湿」とは、おもに肥甘厚味(ひかんこうみ)という油っこくて味の濃いものや甘いものを、たくさん食べたり取り続けたことで体内に生まれた、ヘドロや排水口のぬめりを想像させる病理産物です。油こいものや味の濃いものを食べたときに、痰がからんだことはないでしょうか? それが痰湿です。痰湿が溜まったことが原因の頭痛は、重くて痛い、締め付けられるように痛いなどの特徴があります。身体症状では、体が重くだるい、食欲不振、吐き気、下痢などが見られます。

痰湿をためないようにするには、油っこくて味の濃いもの、砂糖たっぷりの甘い物、生もの、体温より冷たいものの摂取を控えましょう。過剰な水分もよくありません。これらが増えると、痰湿というぬめりがたまります。さらに対策として、痰湿を排出する力のある、きのこ、海藻類、豆類を加熱して食べると効果的です。

瘀血による頭痛

瘀血とは、悪くなった血や血管からはみ出た不要な血、ドロドロと流れが悪くなった血と解釈されるものです。

前述の痰湿が溜まっていると、血液もドロドロになりがちです。また、体が冷えても、血は流れにくくなりますし、体内の体液が不足して乾燥状態になることでも、血はドロドロした瘀血になります。

瘀血による頭痛は、キリキリ針で刺すような痛み、絞られるような痛み、そして痛む場所が同じという特徴があります。身体症状では、激しい月経痛、経血にレバー状の塊が混じる、肩こり、顔色が悪い、目の下のくまなどがあります。

瘀血の対策は、瘀血になった原因によってさまざまですが、共通するものの1つに痰湿の対策と同じく、「不要なものを摂りすぎない」ことが挙げられます。それに加えて、しっかり体を動かすようにして、入浴はシャワーで済まさずに湯船に入るように心がけることが大切です。中医学では、血は冷えると固まると考えられています。

頭痛の対策は、それが急性なのか、慢性なのかを確認します。そこから、原因ごとに分類して、対策していきます。

急性頭痛は原因となる冷えや熱、湿気、ストレスなどを取り除けば楽になりますが、慢性頭痛は滋養して回復させる必要があるため、時間を要する事が多いです。

2回に渡って頭痛の原因と対策についてお伝えしてきましたが、それぞれの改善スピードを加速させる漢方薬もあります。より詳しく知りたい方は、漢方相談ができる専門家にご相談ください。

櫻井大典さん監修『ねこ先生トト・ノエルに教わる ゆるゆる健康法』(KADOKAWA)の一部が読める!ここをクリック!

 

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櫻井大典(さくらい・だいすけ)

北海道北見市にある「ミドリ薬品 漢方堂」三代目。本場中国でも中医学を学び、日本の薬局で経験を積んだあと帰郷。現在は、北見市に3店舗を総括している。本業と並行して、中医学を活かした健康知識を毎日、Twitterで発信。優しく分かりやすい内容が多くのファンを生み、フォロワー数は10万人を突破している。著書に『ミドリ薬品漢方堂のまいにち漢方―体と心をいたわる365のコツ』(ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)、監修に『ねこ先生トト・ノエルに教わる ゆるゆる健康法』(KADOKAWA)などがある。

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