年齢を重ねるにつれて、「肩が上がらない」「足元がおぼつかない」など、若いころにはなかった体の不具合が出てきますよね? そんな悩みを解決できる1日たった10秒の運動があるんです。それは、全国で1万人以上に健康体操を教えてきた簗瀬寛さんが考案した介護予防&未病のための健康体操。今回は、簗瀬さんの著書『ごぼう先生と楽しむ大人の健康体操』(あさ出版)から、そのエッセンスを連載形式でお届けします。
予防、未病のコツは「今日」の状態をキープすること
歳を重ねるごとに気になるのが「健康」でしょう。健康はたしかに大切です。ですが、とらわれすぎてしまうのは問題です。実際、「健康のために」とはりきって運動した結果、腰やひざを痛めたり大ケガをしたという人も少なくありません。
また時々、10代20代の頃の自分や、テレビで取り上げられるような「健康な人」と今の自分を比べて、「もっと健康にならなきゃ!」とおっしゃる方がいますが、これも問題です。人それぞれ「健康」な状態は違うからです。
では、どうすればいいのでしょうか。
どんな人でも今日がいちばん若い日です。それは「明日も、今日の私をキープする」。まずはこれでいいのです。
その状態をキープし続けていけば、介護予防(以下、予防)、未病につながり、若さも自然と手に入るというわけです。
大切なのは、体も心も健康的に日々を送ることができるかどうか。「健康」は、特別なことをしなくても手に入るものです。
トレーニングジムに通って筋肉をムキムキに鍛えたり、フルマラソンに挑戦するなど、いきなり高いハードルを設定する必要はありません。もっと気楽に「健康」を考えましょう。
「何もしない」が予防・未病の大敵 無意識のうちに介護が必要な体になっている
今日の生活を明日も問題なく送るためにはどうすればいいか?
たとえば、小さなことですが、手を洗い、うがいをすることも「今日の自分」をキープするためには大切です。いちばんよくないのは、「何もしない」こと。
「40歳を過ぎたら、体が重くなって、疲れやすくなったな」といったセリフをよく聞きますが、みなさんも思い当たるのではないでしょうか。40~50代になると筋肉も脳の機能も衰え始めることがわかっています。
医学博士の加藤俊徳氏は、特に50代からは脳の老化力がアップし、何もしないと急速に老化してしまうことから、意識して脳を鍛えることが大切だと言っています。
つまり、「何もしない」と知らず知らずのうちに筋肉や脳が衰えてしまい、気づけば介護が必要になったり、認知症になっていたなんてことになりかねないのです。
実際に、私の祖母がそうでした。もともと多趣味だった祖母は、首を痛めたことをきっかけにパタリと趣味をやめ、引きこもることが多くなりました。人と会うことや話すことが極端に少なくなり、その5年後に「要支援2*」の要支援認定を受けたのです。
*要支援2 日常生活に置いて、機能の維持や改善のために何らかの支援が必要な状態。
「気づいたら、介護を受けなくてはならなくなっていた」
これは祖母の言葉です。そして、ごぼう先生として各地でお会いする数多くの方から聞く言葉です。
大きなケガや病気が原因で介護が必要な状態になることは、年齢問わず、誰にでも起きうることです。
ただし、加齢による場合、何か特別なことをしたわけでも、体に悪い生活をしたわけでもないのに、無意識のうちに介護が必要な体になっていたという人が少なくないのです。
これは、とてももったいないことです。なぜなら、「ちょっとでも意識していたら、心がけをしていたら、避けられたかもしれない」からです。
大きなケガや病気ですら、ちょっとした意識、心がけによって未然に防ぐことができたという例を私は何度も見聞きしています。
「今日の自分」をキープするということは、介護が必要でない今の自分の状態を保つこと、たとえ現在、人に助けてもらっているとしても、今できていることは、これからも自分の力でできる自分でいることです。
私は、このことを「介護予防(予防)」と言っています。介護予防といっても、何か特別なことをするわけではありません。ただ、「意識して"日常"を過ごすこと」が大切です。何気ない1日であっても「意識」して過ごすことで、彩り豊かな時間になります。
今日から「何もしない」「無意識で過ごす」のをやめて、1日を「意識」して、味わいましょう。それが予防、未病につながる最大のコツと言ってもいいでしょう。
介護予防・未病にために効果を発揮する、10の「大人の健康体操」が写真でわかりやすく紹介されています