生涯、介護を必要とせず、自立した生活を送りたいという願いは、私たちの多くが持っています。介護が必要にならないために、いまの私たちにできることがあります。お話を伺ったのは、"大人のための体操のお兄さん"ごぼう先生。「介護を予防する」ことを目的に、自身が運営するデイサービスの他、全国各地に足を運び、"座ったままできる健康体操"を伝えています。これまで1万人以上の方々と出会い、感じたこととは何でしょうか。
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「かいごよぼう」から、ご、ぼ、う、をとって「ごぼう先生」です!
健康より〝健康的〞に~心の充実が大切です~
「女性の健康寿命は74.21歳(2013年厚生労働省発表)。だから私はあと○年...」などと考えると、気分が落ち込むことはありませんか。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。ごぼう先生は、ここに「心」という視点が抜け落ちていることに、少し違和感を覚えるといいます。
病気をきっかけに趣味や外出をやめてしまったごぼう先生の祖母は、「だんだんと表情が固まっていった」のだそう。「引きこもったり、話し相手が家族だけだと表情を動かすきっかけがなくなってしまうんです。だから好きなことはできる範囲で続けるのがいい。僕が皆さんと体操をするときは、呼びかけながら足や手を動かします。声を出すことで体を元気にするだけでなく、心が満たされ、笑顔が生まれるんです。
車いすでも、笑って生活できている方はたくさんいらっしゃいます。日常で趣味にワクワクしたり好きなことにドキドキすることが心を充実させます。医学的な"健康"だけでなく、心が"健康的"であることも同じくらい大切なのです。僕にとって体操は、笑顔を作るコミュニケーション手段でもあるんです」
そして、もう一つ、介護保険制度を知ることも予防につながるとごぼう先生は言います。
「例えば、介護が必要かもと思ったらまず地域包括支援センターに相談するということは、いろいろなところで言われていますが、知らない人はたくさんいます。でも僕も僕の家族も、相談できる人がいたことがとても助けになりました。介護保険制度は個々に合わせていろいろな選択肢があり、何かしら解決、支援の方法を見つけてくれます。相談できるところがあることは心の落ち着きにつながるのです。介護の経験がある友人も助けになると思います」
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取材・文/岸上佳緒里 撮影/奥西淳二