生涯、介護を必要とせず、自立した生活を送りたいという願いは、私たちの多くが持っています。介護が必要にならないために、いまの私たちにできることがあります。お話を伺ったのは、"大人のための体操のお兄さん"ごぼう先生。「介護を予防する」ことを目的に、自身が運営するデイサービスの他、全国各地に足を運び、"座ったままできる健康体操"を伝えています。これまで1万人以上の方々と出会い、感じたこととは何でしょうか。
「かいごよぼう」から、ご、ぼ、う、をとって「ごぼう先生」です!
「いまの元気を維持する」それが介護予防です
ごぼう先生は鍼灸接骨院に勤めていた7年間で「人の体の悪くなった部分を"治す"ということの難しさを知った」と言います。鍼灸師として働きながら、体操のボランティアを始め、その後、デイサービスを運営。介護の仕事を通じて多くの人から聞いたのが、「気付いたら介護を受けなくてはならなくなっていた」という言葉でした。病気やけががなくても、加齢による衰えで介護が必要になる。それは少しでも予防を意識して生活していたら避けられたり、先のばしにできたかもしれません。
「体が元気なうちは元気なままで、介護が必要な状態になったら悪化させないことが、ご本人とご家族の望みです。"いまの元気を維持すること"が介護予防につながります」そのためには、「自分の現在の体の状態を知る」ことが大切だとごぼう先生。「若い頃と同じように動けないのは当たり前。でも、今日の自分がいちばん若い自分です。今日の自分を維持することが明日の自分につながります」
ごぼう先生は、そのきっかけ作りにと、座ったままできる「大人の健康体操」を伝えるため、全国各地を飛び回っています。でも運動をする、続けるって、しんどいですよね?「あなたにとっての運動とは何ですか?と聞かれると、何を想像しますか。ジョギングと答える人もいれば、犬の散歩だと答える人もいます。運動というのは、全ての人の中でひとくくりではないんです。
介護の現場では、90歳のおばあちゃんが『私は運動している。トイレまで歩いている』と答えます。一般的にはそれを運動とは思わないかもしれませんが、それができなくなったら自分はどうなるかを想像してみてください。そのおばあちゃんはトイレまで必死に歩いていく、ご家族も歩いてほしいと願うでしょう。いまの生活が維持できるか、食べ物を飲み込むことができるかどうか...介護の現場ではそれ自体が運動になっていきます。
スポーツを長く続けている人は、無理のない範囲の運動量にしています。字を書く、歌う、絵を描くなども同じです。いまの自分をいちばん動けていた頃の自分と比べるのではなく、現在の自分の体の状態を知る。これが加齢と上手に付き合い、介護予防につながるのです」
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取材・文/ほなみかおり 撮影/奥西淳二