高血糖などで血管に負担がかかると...「脳の老化」が起こる仕組み

年齢を重ねると誰でも、人の名前が思い出せなくなったり、もの覚えが悪くなったりします。こうした「もの忘れ」は加齢によるもので、心配することはありません。しかし、認知症は「老化によるもの忘れ」とは違います。少しでも早く発見して、いまよりも症状がひどくならないための対策が必要です。大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学 教授の森下竜一先生に「慢性炎症」について教えていただきました。

<生活習慣病により脳の血管が慢性炎症に>

体の中で起きる慢性炎症が、脳の老化を引き起こし、ひいては認知症へとつながる可能性があることが、最近の研究で明らかになってきました。

「生活習慣や加齢などにより、高血圧や高血糖の状態が続くと、血管に大きな負担がかかります。そのことで脳の血管が慢性炎症になり、認知症を引き起こしてしまうのです」と話すのは、森下先生。

認知症と慢性炎症、いったいどのような関係があるのでしょうか。

認知症の中でも最も多いアルツハイマー型認知症は、脳の老廃物であるアミロイドβたんぱくが、脳内に蓄積してしまうことが原因と考えられています。森下先生によれば、このアミロイドβたんぱくは、認知症ではない人の脳の中でも常に作られているそう。

「脳の血管が健康であれば、クリアランスといって、血流に乗って脳の外へどんどん排出されていきます。ところが脳の血管が慢性炎症に陥ってしまうと、このクリアランスがうまくいかなくなり、アミロイドβたんぱくが脳内にとどまってしまいます」と森下先生は説明します。

なぜ、そういうことが起きるのでしょうか。

実は血管が慢性炎症になると、その血管のまわりにアミロイドβたんぱくが沈着することが分かってきました。

「健康な血管は柔軟性があり、血流を増やしたいときには開くのですが、アミロイドβたんぱくが沈着した血管には柔軟性がなく、血流を増やしたくても開きません。その結果、血流によどみが生じてしまい、老廃物を外へ出すことができない。こうして蓄積したアミロイドβたんぱくが、脳の神経障害を引き起こし、やがて認知症を引き起こしてしまうのです」(森下先生)

慢性炎症と認知症の関係

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生活習慣病
糖尿病、肥満、高血圧etc.で血糖値や血圧が高い...

血管に負担がかかり脳の血管が慢性炎症に
1911p048_02.jpg慢性炎症になると血管の柔軟性が失われ、血流が低下

アミロイドβたんぱくが排出されず、どんどん蓄積
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認知症に!!

高血糖は大きなリスク。食事で改善を

生活習慣病の中でも、こういった状況を最も引き起こしやすいのが、糖尿病だと森下先生。

「血糖値が高いと、血管へのアミロイドβたんぱくの沈着がより起きやすいことが分かっています。それは糖尿病の予備軍も同じ。食後短時間だけ血糖値が急上昇する"血糖値スパイク"でも、血管へのアミロイドβたんぱく沈着は起きますので、注意が必要です」

血糖値スパイクは、食後以外の血糖値は正常であることが多く、普段の健康診断では見逃されがち。

糖尿病の人はもちろん、そうでない人も、決して他人事と思わず、早くから生活習慣を改善していくことを、森下先生は呼びかけています。

「運動すること、睡眠を取ること、何より血糖値が上がらないような食生活を心がけること。食べる内容はもちろん、調理方法、食べる順番なども工夫することで、血糖値の上昇を抑えることができます」

●血管が慢性炎症になると、どうなるの?

血管が健康だと...

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血管が開いて血流がスムーズに。脳の中で作られたアミロイドβたんぱくも、この血流に乗って脳から排出されるため、脳の中にたまってしまうことがありません。

血管が慢性炎症になると...

1911p049_02.jpg血管に慢性炎症が起きると、アミロイドβたんぱくが血管に沈着。

血管が開きにくくなって血流が悪くなり、アミロイドβたんぱくが脳内に蓄積されてしまいます。

取材・文/笑(寳田真由美)、佐藤あゆ美 イラスト/石坂 香

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<教えてくれた人>

森下竜一(もりした・りゅういち)先生

大阪大学 大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授。大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米国スタンフォード大学循環器科客員講師を経て現職。内閣官房 健康医療戦略参与、日本脳血管・認知症学会理事長などを務める。

この記事は『毎日が発見』2019年11月号に掲載の情報です。

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