40代以上の3人に1人が経験するとされる「尿もれ」。デリケートな問題なので、誰にも相談できない人も少なくないようです。そこで、排尿トラブル治療の第一人者・山西友典医師が監修した『尿トレ:誰にも言えない尿のトラブル「スッキリ解消! 」ブック』(方丈社)から、同書をまとめた取材班が知った「尿トラブルの仕組み」と解消法となるトレーニング「尿トレ」のヒントを連載形式でお届けします。
トイレの回数が多いか? 気のせいか?
過活動膀胱などで昼夜ともにトイレの回数が多い人は少なくないのですが、昼と夜は分けて排尿の状態をチェックしたいので紹介を分け、まず「昼間の頻尿」から述べます。
頻尿かもしれないと心配しているなら、まず排尿日誌をつけてみましょう。自分の排尿パターンが可視化できます。
摂取した水分量が概ね適当で、トイレに行く際、とくに尿意切迫感はなく、日中の排尿回数が7回以下なら基本的に問題はありません。
ただし、排尿回数は人それぞれ、職業柄の習慣などでも違うので、自分が頻尿だと思うなら、排尿日誌を持参して受診を。排尿日誌は、あらゆる排尿トラブルで主治医や看護師に具体的な情報提供ができ、治療やケアの方針を立てるのに役立ちます。
比較的、自由に行動でき、穏やかなリズムで過ごし、自然にトイレに行ける休日などに、最低でも24時間連続、なるべくなら3日間分、記録しましょう。
丸1日、暑い戸外でスポーツをして、仲間と打ち上げ......など、あきらかにたくさん水分をとって、トイレの回数が増えた日があってもそれは自然な生理現象です。そのような日は記録には適しません。
頻尿の原因はさまざまで、過活動膀胱のほか、膀胱炎などの病気で起こるほか、さまざまな原因による排尿症状によって残尿が増えて起こる場合もあります。自然な老化現象としても加齢とともに膀胱にためられる尿量は減り、残尿は増え、トイレの回数は増えます。また、頑固な便秘が原因で膀胱にためられる尿量が減ることもあります。
さらに、心因性の頻尿(神経性頻尿)もあり、精神的な問題が原因で頻尿や尿意切迫感が起こることはよくあります。
緊張したときや、トイレの心配をしたときなどに尿意を感じた経験がある人は少なくないでしょう。一般的に、日中にのみ見られる症状です。
心因性の頻尿では、原因の治療のため、泌尿器科から心療内科や精神科の受診を勧められる場合もあります。
排尿日誌の利用法
頻尿に限らず、排尿トラブルで受診する前には必ずつけたい排尿日誌。まずコピーかスキャンをして必要枚数のプリントをしましょう。「症状質問票」は1枚、「尿失禁QOL質問票」は2枚、「日誌」は記録日数分(3日なら3枚)必要です。
初日は日誌の記録を始める前に、「症状質問票」と「尿失禁QOL質問票」にチェックを入れます。そして「日誌」の記録を開始。日付と起床時間を書き(その日、寝る前には就寝時間も書いてください)、メモ欄には体調や排便の状態、体重、服用している薬を記入します。排尿の記録は排尿した時刻に「尿量」「尿意切迫感」「尿もれ」「水分を飲んだ量」をつけます。備考欄に、「いっしょに排便」「トイレの手前でもれた」「勢いが弱かった」など気づいたことを書いておきましょう。最終日に再び「症状質問票」と「尿失禁QOL質問票」にチェック!
日誌開始前と見比べて、排尿パターンの確認の参考にします。
なお、排尿と排便のトラブルがともにある人は、排便の記録のほかに食生活の記録も排尿日誌に加え、記録から調子が良かったときの自分の"食"を振り返り、排便コンディション維持の傾向と対策を考えてみましょう!
尿量や尿もれの量の測り方
【尿量の測り方】
きっちり正確な量がわからなくてもいいので、調理用の計量カップや、不要な透明容器(ペットボトルの上部を切り取ったものなど)に50mlごとに目盛りをつけたものを用意し、トイレに常備しておきましょう。同じトイレを使う家族には、説明しておくことも忘れずに!
【尿もれ量の計測】
尿もれの量が計測できると正確ではありますが、ちょいもれ程度で計測が難しいなら◯印だけつけて。尿もれの量を測るなら、尿とりパッドを購入し、使用前のg 数と尿もれ後のg数の差で計測します。
【飲み物の容量の目安】
・よくあるガラスのコップ(高さ約8㎝) 約180ml
・マグカップ(高さ約7㎝) 約200ml
・お椀 約150ml
症状質問票
以下の症状がどのくらいの頻度でありましたか?この1週間のあなたの状態にもっとも近いものをひとつだけ選んでチェックします。
朝起きたときから寝るときまでに、何回くらい尿をしましたか?
記入前 記入後
7 回以下 □ 0 □ 0
8~14 回 □ 1 □ 1
15 回以上 □ 1 □ 1
夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか?
0回 □ 0 □ 0
1回 □ 1 □ 1
2回 □ 2 □ 2
3回以上 □ 3 □ 3
急に尿がしたくなり、がまんが難しいことがありましたか?
なし □ 0 □ 0
週に1回より少ない □ 1 □ 1
週に1回以上 □ 2 □ 2
1日1回くらい □ 3 □ 3
1日2~4回 □ 4 □ 4
1日5回以上 □ 5 □ 5
急に尿がしたくなり、がまんできずに尿をもらすことがありましたか?
なし □ 0 □ 0
週に1回より少ない □ 1 □ 1
週に1回以上 □ 2 □ 2
1日1回くらい □ 3 □ 3
1日2~4回 □ 4 □ 4
1日5回以上 □ 5 □ 5
合計□点 合計□点
□にチェックがあり、合計3点以上だと過活動膀胱と診断されます。
0~2点:正常 3~5点:軽症 6~11 点:中等症 12 ~15 点:重症
(出典:日本排尿機能学会「過活動膀胱診療ガイドライン」2015 より)
尿失禁Q O L 質問票
どれくらいの頻度で尿がもれますか(ひとつだけ選んで、点数の数字を○で囲んでください)
なし □ 0
おおよそ1週間に1回 □ 1
あるいはそれ以下
1週間に2~3回 □ 2
おおよそ1日に1回 □ 3
1日に数回 □ 4
常に □ 5
どれくらいの量の尿もれがあると思いますか
(あてものを使う使わないにかかわらず、通常はどれくらいの尿もれがありますか?)
なし □ 0
少量 □ 2
中等量 □ 4
多量 □ 6
全体として、毎日の生活は尿もれのためにどれくらいそこなわれていますか
(ひとつだけ選んで、点数の数字を○で囲んでください)
[まったくない]0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 [非常に]
どんなときに尿がもれますか(あてはまるものすべてにチェックしてください)
□ なし:尿もれはない
□ トイレにたどりつく前にもれる
□ 咳やくしゃみをしたときにもれる
□ 眠っている間にもれる
□ 体を動かしているときや運動しているときにもれる
□ 排尿を終えて服をきたときにもれる
□ 理由がわからずにもれる
□ 常にもれている
(出典:泌尿器科領域の治療標準化に関する研究班「EBM に基づく尿失禁心療ガイドライン」、16, じほう,2004 より)
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