人体機能をフル活用! 体に負担がかからない究極の座り方「パワーハウス座り」とは?

現代人は、人生の半分の時間を「座っている」ことをご存知でしょうか?そして、この座る時間が「肩こり」や「腰痛」など体の不調につながっているとされています。そこで、約15万人の施術経験を持つカイロプラクティック健康科学士・木津直昭さんの著書『肩こり・腰痛が消えて仕事がはかどる 究極の座り方』(文響社)から、ダメな座り方が体に与える影響と負担を軽減させる座り方を連載形式でお届けします。

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人型ロボットが教えてくへる「人体のすごさ」

人間の身体について勉強していると、「信じられないほど凄い!」と感心させられることばかりであります。

たとえば足を見てみましょう。ヒトの足はせいぜい縦30センチ×横10センチ弱の大きさしかありません。その上に高さ180センチ、重さ80キロもの物体、つまり身体を立たせている。当たり前のことのようですが、人間に似せた背格好のマネキンは、足よりもはるかに大きな土台で支えられています。そう考えれば、これがいかにすごいことかわかるでしょう。

こうしてただ立っているだけでもすごいのに、さらに歩くことも、スピードを出して走ることもできます。急に止まったり、方向を転換したりすることもできる。そうかと思えば、訓練を積んだ人は複雑なステップで踊ることさえできるわけです。

足を例にとって説明しましたが、人間の身体はいたるところに高度な構造があり、それが信じられないような高い機能を実現しています。

最近では、二足歩行する人型のロボットが開発され、その性能は飛躍的に向上しています。しかし、一流の技術者たちが総力をあげて開発したロボットも、人間の身体の高度な構造・機能の足下にも及んでいないのが実態です。

以前、私はあるロボットのデモンストレーションを固唾をのんで見守ったことがあります。そのショーのメインイベントは、本田技研工業が誇る二足歩行ロボットASIMOが、たった三段の階段を昇り降りする、というものでした。ASIMOが無事にデモを終えたとき、場内は拍手喝采でした。

事実、本田技研の開発チームが成し遂げたことは快挙だったのです。ロボットなら、たった三段の階段を二足歩行で昇降できるだけで画期的な成果だといえます。このことは、人間の身体がどれほどすごいものであるかを物語っています。

人体の持つ「連動」機能を活かす

逆に考えると、なぜ人間は、階段を自由自在に昇り降りすることはもちろん、それよりはるかに複雑な動きであっても制御することができるのでしょうか。

簡単にいえば、それは脳からの指令で身体がつながって動けるから。つまり、「連動」する機能が備わっているからです。たとえば歩くときにはひざを上げたり、腕を左右に振ったりといった連動が自然に行われています。

「連動」というと、文字通り動くとき、つまり歩いたり走ったり踊ったり物を投げたり......といったことをイメージするでしょう。しかし、実は静止しているように見える座り姿勢においても、この「連動」の仕組みは活用できます。そして、人体の持つ「連動」機能をうまく使えるようにしたのが「究極の座り方」なのです。

カラダの連動を可能にするパワーハウス筋群について

私は、カイロプラクティックの施術をしていて、患者さんの症状を取り除き、その後の強化エクササイズや予防法を行う上で、とても重要視していることがあります。それは、「抗重力」です。

人体は、重力下で良くも悪くもなります。多くの場合、患者さんは重力の影響(関節の圧迫など)により罹患して来院されます。

その圧迫を解放・改善に向かわせる上で欠かせないのが「抗重力」なのです。

カラダを抗重力にさせるために有効なのがピラティスの理論です。僕の理解では、ピラティスはカラダを抗重力な状態に向かわせるエクササイズだと思っています。そこで数年前に研修を受け(若い方々に混じって)マットピラティスのインストラクターの資格を取得いたしました。なぜならピラティスの理論がカイロプラクティックの施術にプラスされれば、その効果は計り知れないと思ったからです。

その後、ピラティス理論をカイロプラクティック施術に融合させ治療メソッドを開発いたしました。その有効性は多くの施術効果からも明らかです。

日本人には丹田という名称で呼ばれている同一の部位をピラティスでは「パワーハウス」と呼びます。そのパワーハウスとは?

・腹横筋
・多裂筋
・横隔膜
・骨盤底筋群

これら4つの筋が同時に働くと、おへその下4~5センチのところに力が集まります。それがパワーハウスに力が入った状態です。
(これら4つの筋群をパワーハウス筋群と呼ぶことにします。)

究極の座り方の土台になるパワーハウス座りについて

具体的に「究極の座り方」で起きている連動は次のようなものです。まず、骨盤を立てると下腹(パワーハウス)に力が入る。すると、肩の力が抜け、同時に背骨が縦方向に伸びていきます。これは、感覚としては「後頭部が上に押し上げられる」と感じられるでしょう。

「良い姿勢」というと、「頭が空から糸で吊られるように意識する」と説明されることがあります。しかし、私はその感覚は間違っている、あるいは説明として不適切であると思っています。頭が吊られるように意識すると、腰が反ってしまう傾向があるからです。

正しいのは、頭が下から押し上げられた結果、空に向かっていくという感覚です。上から吊られるのではなく、地についた足からの力がまずパワーハウスに伝わり、その力により背骨の椎骨一つずつが縦に伸びていく。そのときに肩甲骨が下がり、余計に後頭部が上へ上へと伸びていく。この感覚が、「パワーハウス座り」をした際に身体のなかで起こっている連動です。

ただ、パワーハウス座りを練習中の方や、やっとできるようになった段階では、この感覚が明確でなくても大丈夫です。クラシックバレエやダンスの経験がある方でもないと、なかなかこの感覚を初めから理解するのは難しいでしょう。とりあえずは、おへその下に力が自然に入り、腰に緊張がなくなった感覚(=反り腰でもなく、丸まるのでもない、骨盤が立った感覚)を意識できれば十分です。

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人体機能をフル活用! 体に負担がかからない究極の座り方「パワーハウス座り」とは? 053-syoei-suwarikata.jpg5章にわたって、原因から実践、予防法まで、あらゆる場面の「座り方」をイラスト・写真付きで分かりやすく解説しています

 

木津直昭(きづ・ただあき)

KIZUカイロプラクティックグループ代表院長。カイロプラクティック健康科学士、マットピラティスインストラクター。これまで四半世紀に渡り約15万人に施術した経験を持ち、人体構造に精通。近年、行動姿勢研究会を立ち上げ、姿勢セミナーや健康寿命を延ばすための座り方コンサルティングも行なっている。

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『肩こり・腰痛が消えて仕事がはかどる 究極の座り方』

(木津直昭/文響社)

「病院でも肩こりや腰痛が治らない」「治っても治療をやめると再発してしまう」とお手上げ状態のあなたに読んでほしい「座り方」の教本!人体構造のプロが教える、体の不調を改善できる座り方を知れば、肩こり、腰痛ともおさらばできるはず。

※この記事は『肩こり・腰痛が消えて仕事がはかどる 究極の座り方』(木津直昭/文響社) からの抜粋です。
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