医療保険の適用対象に「遺伝子治療薬」ってなんですか?

こんなニュースがあったのをご存知でしょうか? 厚生労働省は、8月28日に中央社会保険医療協議会を開催し、国内初の遺伝子治療薬として創薬会社・アンジェスの「コラテジェン」の薬価を、投与1回あたり60万360円とすることで了承。9月10日より発売され、保険診療の中で使えるようになりました...というものです。
そこで、「コラテジェン」の開発者で、大阪大学 大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授の森下竜一先生にお話を伺いました。

pixta_57612052_S.jpg国内初の遺伝子治療薬。難病への対応も期待

HGF(肝細胞増殖因子)遺伝子治療薬「コラテジェン」が9月から公的医療保険の適用対象となりました。この薬は、大阪大学発の創薬ベンチャー・アンジェスが開発・製造。世界初の血管再生遺伝子治療薬、国内初の遺伝子治療薬として注目されています。

「コラテジェンは、手足の血管が詰まって血流が乏しくなり、潰瘍ができる閉塞性動脈硬化症や、手足の血管が塞がりさまざまな症状があらわれるバージャー病の治療に有効で、HGFの遺伝子を体内に入れて病気を治療します。局部に筋肉注射することで、詰まった血管近くに新たに血管が作られ、血流改善が期待できます」(森下先生)

遺伝子治療にはさまざまなタイプがありますが、コラテジェンは、外から体内に遺伝子を入れるタイプ。血管を再生する肝細胞増殖因子(HGF)というタンパク質をつくる遺伝子が主成分で、1回につき8カ所に分けて4週間間隔で2回、足の筋肉に注射します。

「全身で血管が増え過ぎると、がんのリスクが増したり、予期せぬ副作用が起こることもありえます。そのため、局所で血管を再生するよう開発しました。できあがった血管そのものはなくならず、治療効果は持続しますので、永続的な治療は不要です。バイパス手術や血管内治療(カテーテル治療)に比べて体への負担も少なく、外来での対応も可能。価格も抑えられます」(森下先生)

HGFは神経細胞の保護効果もあるとされ、脊髄損傷や筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)でも治験が進行中。糖尿病や自己免疫疾患などの難治性潰瘍に対しても応用が期待されています。

遺伝子治療とは?

遺伝子治療は、患者の細胞に遺伝子を導入することで病気を治療する方法。傷ついた遺伝子や機能が失われた遺伝子の代わりに、正常な遺伝子を組み込む方法と、病気の原因となる遺伝子の働きを抑える方法に大別されます。遺伝子の導入法には2種類あり、ベクター(運び屋)を用いて、患部に直接正常な遺伝子を導入する方法と、患者の細胞を取り出し、体外で正常な遺伝子を導入した後、再移植する方法があります。

遺伝子治療の仕組み

体内遺伝子治療

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体外遺伝子治療

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遺伝子治療薬「コラテジェン」の仕組み

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血流が悪くなった部分の筋肉にHGF遺伝子を注射

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新たに血管ができて血流がよくなり、血管が伸び、潰瘍が治る

取材・文=笑(寳田真由美) イラスト/添田あき

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<教えてくれた人>

森下竜一(もりした・りゅういち)先生

大阪大学 大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授。大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米国スタンフォード大学循環器科客員講師を経て現職。内閣官房 健康医療戦略参与、日本脳血管・認知症学会理事長などを務める。

この記事は『毎日が発見』2019年11月号に掲載の情報です。

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