仕事に家事にと頑張って、倒れるように眠る毎日。朝起きると疲れは取れていないし、集中力もすぐ切れてしまう...。それ、全て「眠り方」に問題があるかもしれません。そこで、メンタルヘルスと睡眠の専門家・和田隆さんの著書『仕事のストレスをなくす睡眠の教科書』(方丈社)から、心身ともに健康を保つための「ストレス解消睡眠法」について連載形式でお届けします。
ストレス対処パターンをチェックする
ストレッサー(ストレスを与える刺激)に対して、緩衝要因を多く準備しておくことは、ストレス反応を抑制する上で極めて有効です。また、ストレスを受けた時の自分の行動パターンを知っておくこともストレス対策として重要です。
下の表はストレスチェックサービス「Self」を提供するウェルリンク株式会社が作成したストレス対処パターンの自己チェック表です。私もストレスマネジメント研修で使わせていただくことがあります。
「記入方法」に示したように、12の質問項目の当てはまるところに「○」をつけます。質問項目の「あてはまる」から「あてはまらない」までを、それぞれ3~0まで点数化し、A~Fまで2項目ごとに合計します。
実は、このA~Fは、対処パターンをイメージしやすいように動物で表しています(上の表)。Aの点数が高ければ「フクロウ」型で計画性がある。Bならば「イノシシ」型で、ストレス課題を乗り越える対決型という具合です。
さらに、グレーの四角が入ってない6か所の点数を足したものを①に記入し、グレーの四角が入っている6か所の点数を足したものを②に記入します。①は「問題対処型」であり、②は「情動対処型」となり、この点数の高いほうが自分のストレス対処パターンで、自分が問題に対処するタイプなのか、自分の気持ちに対処するタイプなのかがわかります。
多彩なストレス対処パターンを準備しておく
問題対処型か情動対処型か、自分がストレスに対してどのように対処する傾向があるかがわかったと思います。この2つをさらに細かく見ると、自分がフクロウ型かイノシシ型かなどがわかります。
動物になぞらえたそれぞれの対処パターンには、どれもがストレスという課題に対して有効な対処パターンですが、すべての課題に対して有効というわけではありません。仮に自分のストレス対処パターンがネコ型だったとして、気晴らしだけですべてのストレス課題に対応することはできないということです。
多彩で複雑なストレス要因に対処するには、多彩で効果的なストレス対処パターンが必要です。複数のストレス対処パターンを持っていれば、ストレスの要因にマッチした対処パターンを選択することができます。また、いくつかのストレス要因がある場合、あるいは非常に強いストレスを受けている時は、ひとつのパターンで対処するより、複数の対処パターンを組み合わせたほうがより効果的です。
ストレスを回避できない人の多くは、ストレス対処行動が一本調子です。言い換えれば、ひとつのパターンしか持っておらず、いつもそればかり使っているということです。
そのパターンが、そもそも今受けているストレスの要因に合っていない場合、何も改善できず、ストレス性疾患や問題行動にもつながっていく可能性を残してしまいます。
ぜひ、多彩なストレス対処パターンを準備しておいてほしいと思います。
ストレス状況によって対処法を変える
動物で表したストレス対処タイプのうち、フクロウ、イノシシ、シロクマになった人は問題対処型(①の合計点が高い人)、ネコ、ヒツジ、ウサギになった人は情動対処型(②の合計点が高い人)に分けられます。
問題対処型というのは、ストレスという課題を解決していくために、具体的な行動をとる対処法のことです。ストレス課題を解決することはできるかもしれませんが、気持ちが楽になるとは限りません。
情動対処型は、気分転換などストレスから生じるつらい気持ちを楽にすることを中心とした対処法です。気分を軽くすることはできるかもしれませんが、問題そのものを解決していません。
問題だけ解決できればいい、気持ちだけ楽になればいいというのではなく、その両方にアプローチし、ストレス課題を積み残さないようにすることが大切なのです。片方だけの対処では、解決していないほうの問題が刺激となって、ストレス反応が持続する可能性が残されてしまいます。
同じ問題対処型でも、例えばフクロウタイプの人が計画的にストレスに対処しても、計画どおりにいかなかった場合にどうするか。イノシシタイプの人がストレスから逃げ出さずチャレンジしても、乗り越えられなかったらどうするかということも考えておく必要があります。
天気予報で雨が降りそうなら、傘を持って出かけます。しかし、急に雨が降ってきたら、タクシーに乗るか家族に迎えに来てほしいとお願いする。強風を伴う時なら、傘ではなくては合羽のほうが濡れずに済みます。カフェで雨が止むのを待つのもよいでしょう。
天気の状況によって対処が変わってくるのと同じように、ストレス要因に対する対処パターンを多くもっている人ほど、さまざまなストレス課題とその状況に対応できるのです。それでは、困った時にはヒツジタイプになって誰かに相談することにしよう。そう決めても、いざストレス課題に直面すると、相談できない人は少なくありません。なぜなら、人は困った時ほど口が重くなり、かえって相談のハードルが上がるからです。
普段から相談しているからこそ相談ができるのであって、ストレス状態が高い時に、いつもと違うタイプになるのは案外難しいものです。気分転換しようと思っても、気分転換の方法を知らないので無意識にいつもの対処パターンになってしまうというのと同様です。
ストレス課題に直面してから行動するより、ゆとりがある時に、普段使っていないタイプをいろいろ試して、自分の対処パターンとして獲得しておくことが大切です。
眠り方を変えてストレス解消!「睡眠の教科書」記事リストはこちら!
ストレスと睡眠の仕組みを完全解説。自分のストレスを「見える化」できるチェック表も付いていて、すぐに対策も