加齢による「体のだるさ」や「やる気の低下」は、病院に行っても「老化」の影響と診断されることが少なくないそうです。しかしこの「老化」、実はホルモンとミネラルの不足による「熟年期障害」という病気の可能性があります。そこで、専門医が最新研究を基に解説した話題書『熟年期障害』(平澤精一/アスコム)から、今すぐ知っておきたい「熟年期障害の症状と原因」を連載形式でお届けします。
熟年期障害には、症状が軽い人と重い人がいる
熟年期障害には、なる人とならない人、症状が軽い人と重い人がいます。
私はこれまで、熟年期障害の患者さんをたくさん見てきましたが、熟年期障害になりやすい人、症状が重くなりやすい人には、以下のような特徴があります。
・職場や家庭の人間関係に問題がある
・通勤時間が長い
・仕事が忙しい
・神経質で生真面目
・くよくよ考え込む
・せっかちで几帳面
・生きがいや趣味がない
・体を動かすことが嫌い
では、なぜ、こうした人は熟年期障害になりやすいのでしょうか?
「加齢」はテストステロン不足や亜鉛不足の最大の原因ですが、ほかにも、体内のテストステロンや亜鉛の量に影響を及ぼすものはたくさんあります。そもそもテストステロンの分泌量に個人差がありますし、食生活などによっても分泌量は左右されます。
亜鉛の摂取量も、やはり食生活によって大きく変わります。しかし、「加齢」と並び、特にテストステロンの分泌や亜鉛の摂取・吸収を大きく妨げるものがあります。
それは「ストレス」です。
過度のストレスは、二重三重に 体内のテストステロンや亜鉛の量を低下させる
テストステロンは、男性では95%が睾丸(精巣)、5%が副腎(ふくじん)から分泌され、女性では卵巣や副腎から分泌されます。また最近の研究で、筋肉や脂肪でも生成されることがわかっています。
テストステロンの分泌をコントロールしているのは、脳の「下垂体(かすいたい)」と呼ばれる部位(脳下垂体)です。
まず、脳下垂体の視床下部が性腺(せいせん)刺激ホルモン放出ホルモンを分泌し、それを受け取った下垂体前葉(ぜんよう)が性腺刺激ホルモン(黄体形成ホルモン)を分泌して、精巣や卵巣などにテストステロンをつくるよう命令するのです。
ところが、脳が過度のストレスを受けると、性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌が減り、黄体形成ホルモンの分泌も減ります。テストステロンは黄体ホルモンからつくられるため、黄体形成ホルモンが減ることによって、テストステロンの生成も妨げられてしまうのです。
また、ストレスは、脳下垂体からの副腎皮質刺激ホルモンの分泌を促します。それを受けて副腎は、抗ストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」を生成し、ストレスに対抗するのですが、テストステロンもコルチゾールも、原料は同じコレステロールであるため、コルチゾールが生成されれば、その分テストステロンの生成量が減ってしまいます。
しかも、ストレスが続くと、副腎は休みなくコルチゾールを生成しなければならなくなります。
その結果、副腎は疲れ果ててしまい、コルチゾールやテストステロンなどをつくることができなくなります。
さらに、ストレスは亜鉛の吸収をも妨げます。亜鉛は十二指腸から吸収されますが、ストレスは十二指腸にダメージを与えてしまうからです。
このように、過度のストレスは、二重三重に、体内のテストステロンや亜鉛の量を低下させます。
冒頭に挙げたような特徴を持つ人は、ストレスをためやすい、もしくはストレスを発散しにくい傾向があります。そのため、熟年期障害の症状が重くなってしまいがちなのです。
最新の研究、データに基づき、5章にわたって「熟年期障害」の正体を解説。自分で予防ができるセルフケア法も