いまや国民病ともいわれる便秘。大腸がんなども便秘から始まることがあり、慢性便秘症は寿命を縮める可能性もあると近年の研究で分かってきました。そこで注目されているのが、便秘予防に有効な食物繊維の摂り方。中でも"酪酸"という腸内物質が話題です。そこで、腸のスペシャリストである松生クリニック院長の松生恒夫先生にお話を伺いました。
腸のエネルギー源である酪酸を増やして"快腸"に
近年の研究では、慢性的な便秘がある人に比べ、ない人の方が長寿だというデータがあります(下図参照)。そこで注目されているのが食物繊維の摂り方です。
便秘がない人の方が長生き
Chang J.Y.et al.The American Journal of Gastroenterology.105:822-832(2010)
腸の専門医である松生恒夫先生によると、今後の新常識は酪酸という腸内物質です。
「酪酸は、短鎖脂肪酸の一種です。短鎖脂肪酸には、酪酸、酢酸、プロピオン酸などがあり、食物繊維、中でも水溶性食物繊維をエサにする腸内細菌の働きによって作られます。このうちの酪酸は、特に腸管活動を活発にし、便通を改善する作用があるとして関心が高まっています」
酪酸は、大腸を動かす第一のエネルギー源であり、小腸においてもアミノ酸の一種であるグルタミンに次ぐエネルギー源。つまり、食物繊維を摂らないと、腸のエネルギー源を十分に得ることができないのです。
酪酸には、潰瘍性大腸炎などの腸の病気の改善、アレルギー性疾患や自己免疫疾患の抑制、肥満細胞の増加の抑制、血糖値をコントロールする作用もあることが分かっています。
「酪酸を腸内に届けるためには腸内で作るしかありません。そのためには、"不溶性食物繊維:水溶性食物繊維=2:1"のバランスで摂ることがベストです」。
食物繊維をベストバランスに近づける方法として松生先生が提案するのが、キウイフルーツを食べること。「キウイフルーツには、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維が2:1のバランスに近い割合で含まれます。キウイフルーツが腸内の酪酸を増加させたという研究結果(※)もあります」。キウイフルーツは腸管機能を高めるオリーブ油をかけるといいそう。ほかに、水溶性食物繊維が豊富なもち麦もおすすめ。
※ Parkar et a(l 2012) Plant Foods Hum Nutr (2012) 67:200-207 In vitro Utilization of
Gold and Green Kiwifruit Oligosaccharides by Human Gut Microbial Populations
酪酸とは
短鎖脂肪酸の一種で、腸が元気に活動するために欠かせない物質です。
●腸内環境を良くして、整腸を促す
●潰瘍性大腸炎など、腸の病気を改善
●アレルギー性疾患や自己免疫疾患の抑制
●肥満細胞の増加を抑制し、肥満を防ぐ
●血糖値をコントロールする
便秘症は長寿にも影響します!
慢性的な便秘がある人とそうでない人を調査したところ、慢性的な便秘がないと答えた人の方が、明らかに生存率が高いという研究結果があります(下図)。
このことからも、日頃から腸を整え、腸の健康を保つことが健康長寿に欠かせないといえるでしょう。
酪酸を増やして、腸を健康にする食事のコツ
酪酸を増やすには、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がほぼ2:1のバランスで含まれるキウイフルーツを、毎日2個食べるのがおすすめ。
エキストラ・バージン・オリーブオイルをかければ整腸作用がアップし、血糖の上がり方も緩やかに。食べる時間はいつでもかまいません。
●松生先生おすすめ! キウイフルーツの食べ方
キウイフルーツを半分に割り、真ん中を一口スプーンですくって食べます。
穴の開いた所に、ティースプーン1杯程度のエキストラ・バージン・オリーブオイルを垂らして食べます。もう片方も同様にして食べましょう。
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取材・文/笑(寳田真由美)