「咳が1週間くらい長引いても自然に治るのを待つ」というあなた。放置していると全身に悪影響を及ぼすかもしれません。毎月2000人以上の患者を治療してきた呼吸器の名医・杉原徳彦先生は、実は悪さをしているのは「のどではなく鼻の奥」と言います。そこで、杉原先生の新刊『つらいせきが続いたら鼻の炎症を治しなさい』(あさ出版)から、「長引く咳」の正体から治療法までを連載形式でお届けします。
長引く咳に効果的な運動
ダイエットの1つとして、歩くことをおすすめしましたが、じつは気道に炎症を起こしやすい人の場合、陸上よりも水の中での運動のほうがおすすめです。
陸上での運動は、動きの速いものが多く、心拍数も上がり、呼吸も乱れがちになるからです。そうなると、空気抵抗が少なくてより楽な、口呼吸に自然となってしまいます。
その結果、口腔やのどなどの粘膜が乾燥し、咳やぜんそくの症状の原因となりかねません。
また、室内でのスポーツで激しい動きが求められる武道・格闘技系のスポーツの場合、動くたびにホコリが大量に舞います。これは、ぜんそくやアレルギー性鼻炎の治療の観点からいうと、あまりいい環境とはいえません。
一方、水泳や水中ウォーキングなど、水の中での運動の場合、適度な湿度が維持されているので、気道の炎症の大敵である「乾燥」を防ぐことができます。
また、吐いて、吸って、吐いて、吸って......という、ゆったりとした呼吸で体を動かすことができます。これは、咳や息苦しさといった、ぜんそくの症状をやわらげる効果があります。
また、そうした湿度のある環境で、ゆったりとした呼吸をくり返していると、ふとした瞬間に、粘膜にひっついていた粘液(痰や鼻水など)がポロッと剥がれ落ちて、気道がスッキリすることもあります。
これは、ぜんそくだけでなく、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの症状をやわらげることにもつながります。そのほか、私が副鼻腔炎のセルフケアとしてもっとも効果が期待できるスポーツだと思っているのが、じつはサーフィンです。
なぜ、副鼻腔炎に効果があるのかというと、サーフィンは波に揉まれるので、言ってみれば、天然の「鼻うがい」ができるからです。
患者さんの中にはサーフィンが趣味という何人かいて、サーフィンに通っている時期は、診察していても鼻の調子がすこぶるいいのです。
また、副鼻腔炎の人は、「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」(手のひらや足の裏に膿のつまったブツブツができる)という疾患をもつ人が多いのですが、サーフィンをする時期は、その症状がすっかりおさまっている患者さんもいらっしゃいます。中には、サーフィンを始めてから、ぜんそくの症状があまり出なくなったという患者さんもいます。
こういうお話をすると、「海水浴でもいいのですか?」という質問をしばしば受けるのですが、海水浴ではさほど海水が鼻の中に入ってこないので、鼻うがいとしては中途半端になってしまいます。
サーフィンに抵抗がある方もいらっしゃいますが、ロングボードであれば、男女に関係なく、また50代以降でもムリなく楽しめます!
挑戦してみてはいかがでしょうか。
●ゆっくり呼吸する運動もおすすめ
呼吸を整え、鼻呼吸の習慣をつけるという意味では、ヨガや太極拳などの、呼吸を意識しながらゆっくりと体を動かす運動がよいでしょう。
また、屋内でのマシーンを使ったウォーキングもおすすめです。「鼻で吸って、口で吐いて」という呼吸を意識しながら歩くことで、鼻呼吸をしっかりと体に沁み込ませていけるはずです。その際、姿勢もしっかり意識しましょう。肩甲骨を寄せて、ストンと肩の力を抜き、胸が開くのを感じながら歩くようにしましょう。
胸が開くと肺も開きます。それは呼吸の能力の強化につながります(なお、胸を張るといっても、腰は反らせないこと)。
なお、これらのスポーツは、長引く咳や鼻の不調などの症状をやわらげたり、予防したりするためのものであり、疾患そのものを治すものではありません。
医療機関等での治療と並行して実践することで、より治療を高めてくれるものだ、という位置づけで取り組んでください。
実は鼻の炎症が原因かも!?「つらいせきが続いたら」記事リストはこちら!
4章にわたり、長引く咳の原因と対策を網羅。咳対策用の枕、マスク、お茶の選び方などセルフケアの実践方法も紹介されています