体が硬いと腰痛になる?トレーナーが伝えたい腰の痛みの原因

なかなか治らない「慢性的な腰痛」。もしかすると、腰以外の部分に原因があるかもしれません。生活習慣、体の硬さ、心、脳、睡眠の専門家5人が追究した「腰痛の正しい原因」について、『あなたの腰痛が治らないのは治し方を間違えているから』(日本腰痛研究開発機構/アスコム)より連載形式でお届けします。あなたの腰痛の治し方が見えてきますよ。

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慢性腰痛の原因は「腰以外の体の硬さ」にある

腰には特に異常がないのに腰が痛くなる、というのは、アスレティックトレーナーである私からすると、それほど不思議なことではありません。

いくら腰を検査してもわからないという意味で原因不明とされている腰痛は多々ありますが、本当の原因は「腰以外の硬さ」にある場合があります。

「腰以外の硬さ」とは具体的に何かというと、足首や胸椎、股関節など、腰以外の部位の硬さのことです。

人の体は各部位が複数の関節によって密接につながり、全てが連動して初めて機能します。その理論をよく理解せずにストレッチなどをすると、体の各部位が正常に作動せず、反対に腰に負荷をかける場合があるので注意が必要です。

これまで多くのアスリートのトレーナーを務めてきましたが、痛みや故障が少ないプレーヤーは、体の関節や部位の連動の理論を理解してトレーニングを行い、無駄な負担をかけずに身体を作り上げていきます。そのため、痛みや故障なく、激しい運動ができるのです。

繰り返し再発する腰痛に悩んでいる人も、もしかすると足首や股関節の硬さを解消することで、腰への負担を軽減し、痛みのない毎日を取り戻せるかもしれません。

人の体は関節の連動で動いている

なぜ、腰以外が硬いことが慢性腰痛の原因になり得るのでしょうか。まず、体の関節がどのように連動して動いているかを簡単に解説します。

例えば「歩く」という動作一つとっても、複数の関節や部位がお互いに連動して機能しています。

歩行とは、ただ交互に左右の足を前に動かしているだけではありません。

細かく分折してみると、腰が体を支え、股関節が滑らかに動き、膝関節や足首の関節が曲がったり伸びたりしながら、それら各所がバランスよく連動してそれぞれの役割を果たしています。さらに、歩くときには下半身だけでなく、腕を振るといった上半身の動きも伴います。

それらのどこか一つが正常に動かなくなると、連動している関節や部位のどこかにも悪影響を及ぼします。試しに、猫背の状態で肩を上げてみてください。その状態では、腕が上までしっかり上がらないはずです。その状態で、肩を上げ下げしたり、捻り動作をしたりすると、「四十肩」や「五十肩」のような状態になる可能性が増します。

また、猫背でうまく腕が振れないと、足が前に出にくくなり、前傾姿勢になってしまい、しっかりと足に体重が乗りません。結果、腰に負担がかかり、腰痛の原因となることもあるのです。

足首が硬いと腰が痛くなる?

続けて、体の硬さと腰痛の関係について、もう少し詳しく説明します。

「足首の硬さ」と腰痛を例にしましょう。皆さんは、つま先を上げ下げするときに、足首がどのくらい動きますか?

<足首は、つま先を上げる動作(背屈)では20度くらい、下げる動作(底屈)では45度くらいが正常な可動範囲とされています。それでは、足首の関節が硬くなり可動範囲が狭まると、どのような影響が生じるでしょうか。

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試しに足の裏をペタッと床につけたまま、しゃがんでみてください。足首が硬い人の場合、しゃがむことができずに、後ろに倒れてしまうはずです。これは足首が硬いことによって、しゃがんだときに重心が後ろに移動していることを意味します。

このとき、倒れないようにしゃがもうとすると、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)を使って体を支えることになります。足首が柔らかければ、体の中心に重心がかかるので、そこまで過度に大腿四頭筋を使う必要はありません。

大腿四頭筋は使いすぎると、他の筋肉と同様、硬くなり収縮します。

大腿四頭筋の中でも大腿直筋という筋肉は、骨盤の前面と直結しており、それが縮むと、骨盤は前側に引っ張られ、前傾します。

骨盤が前傾すると反り腰になります。反り腰の人は、体幹部や肩甲骨周囲の筋肉をうまく使えていません。姿勢を直立に維持しようとバランスをとるため、腰や背中の筋肉に負担をかけ、腰痛の原因になるのです。

簡単に整理すると、次のような流れになります。

足首の関節が硬い→大腿四頭筋(大腿直筋)が硬くなる→骨盤が前傾する→反り腰なる→腰痛

これが、足首の硬さが腰痛を招く道筋です。同じように、胸椎や股関節など、本来あるべき柔軟性を失うと、体の様々な部分でバランスが崩れ、頑張らなくていい部分が異常に頑張らなければならなくなって、腰痛などの痛みが生じてしまうのです。

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体が硬いと腰痛になる?トレーナーが伝えたい腰の痛みの原因 H1_あなたの腰痛が治らないのは治し方を間違えているから.jpg生活習慣や脳など5つのタイプから腰痛の原因を探れます。すぐ使える「腰痛ノート」も付録

 

日本腰痛研究開発機構(にほんようつうけんきゅうかいはつきこう)

2018年設立。代表は高橋諒。腰痛対策マットレスを販売する株式公社グリボーの腰痛研究都を独立させ発足。「日本から腰痛で悩む人を0にする」ことを目標に、各専門家を招き、日夜腰痛対策の研究、商品開発を行っている。監修:秋田護(整形外科医)、新井康希(アスレティックトレーナー)、塩多雅矢(理学療法士)、河合隆志(痛み専門医)、官崎雅樹(呼吸器内科医)。


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『あなたの腰痛が治らないのは治し方を間違えているから』

(著:日本腰痛研究開発機構 監修:秋田護、新井康希、塩多雅矢、河合隆志、宮崎雅樹/アスコム)

「念入りにマッサージ」「なるべく動かさない」といった一般的な腰痛対策、実はあなたの痛みには効果がないかも!?「生活習慣」「体の硬さ」「心」「脳」「睡眠」の各専門家が腰痛の原因を解き明かした腰痛大全。長年付き合ってきた痛みの正体が、これで分かる!

※この記事は『あなたの腰痛が治らないのは治し方を間違えているから』(著:日本腰痛研究開発機構 監修:秋田護、新井康希、塩多雅矢、河合隆志、宮崎雅樹/アスコム)からの抜粋です。
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