なかなか治らない「慢性的な腰痛」。もしかすると、腰以外の部分に原因があるかもしれません。生活習慣、体の硬さ、心、脳、睡眠の専門家5人が追究した「腰痛の正しい原因」について、『あなたの腰痛が治らないのは治し方を間違えているから』(日本腰痛研究開発機構/アスコム)より連載形式でお届けします。あなたの腰痛の治し方が見えてきますよ。
寝るたびに腰が悪くなる?
慢性的な腰痛に悩んでいる人の中には、朝、起き上がるときに痛みを感じる人が少なくありません。
例えば日中、マッサージを受けたりして腰をケアしているものの、寝て起きるとまた痛む。この場合、寝ている間に腰に余計な負荷がかかってしまっている可能性が考えられます。
「安静にする」という意味で、横になっている間は腰が守られているイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし実は睡眠中の状態によっては腰痛は悪化することさえあるのです。
睡眠と腰痛は、密接に関係しています。睡眠のとり方が悪いと腰に悪影響があり、また腰の痛みのせいでよく眠れないと、体に様々な二次的な被害が起こる可能性もあるのです。
寝返りがうてないと腰が悪くなる
慢性的な腰痛を抱えている場合、まず注意したいのが寝返りです。睡眠中にうまく寝返りがうてていないと、腰痛のリスクが高くなります。
寝返りが多いと寝苦しくてもがいているようなイメージを持つかもしれませんが、実際は逆です。自然な寝返りをうてているほうが、眠りの質はよいといえます。そもそも寝返りにはどんな役割があるのでしょうか。
一つは、血流をよくすることです。ずっと同じ姿勢で寝ていると、体の一部に負荷がかかり続けその部分の血管が圧迫されて血の流れが悪くなります。血流が悪いと、老廃物などがうまく流し出されなくなり、こりや痛みの原因になります。
そのため、人は体を守るために自然と寝返りをうつようにできています。
ですから、原因不明の慢性腰痛を抱えていたり、寝て起きるたびに腰が痛いという場合、睡眠時に正しい寝返りをうてていないことで、腰に負担がかかっている可能性があります。
寝ている間は意識がなく、自分の寝姿を確認しているという人はほぼいません。皆さんは、しっかりと寝返りがうてているでしょうか?
ふかふかベッドが腰痛のもと?
とはいえ、寝返りは無意識に行うものですから、やれと言われてできるものではありません。
特に高齢になると筋力が衰えていきますから、寝返りをうちたくても自力で寝返りをうつのが難しくなってくる場合もあります。また、慢性腰痛を抱えている場合、腰をかばって動かさないようにしてしまうかもしれません。いずれにせよ、自分で意識的にコントロールするのは難しいものです。
自分は寝返りがうてていないかもしれないと疑われる場合、確認すべきなのは寝具です。端的に言うと、柔らかすぎる寝具は寝返りがうちにくく、腰に悪い影響を与えている可能性があります。
ベッドや布団は、柔らかくてふかふかしたものほど、気持ちがよくてよく眠れるイメージがあるかもしれません。確かに、ふかふかの布団に入ったときの気持ちよさは魅力です。しかし、入眠時の快適さと、睡眠中の体の負担は別な問題です。
布団やマットレスが柔らかいと、体が沈み込んでしまい一部に負担が強くかかります。また、ぐっと体を起こそうとしても力んだ部分が沈んでしまうので、寝返りがうちにくくなってしまいます。
体重が一部に偏る姿勢はNG
睡眠中にもう一つ大事なのは、「体圧分散」です。体圧分散とは文字どおり、体にかかる圧力を適度に分散させることを意味します。
睡眠時は、全身にバランス良く負荷が分散されていることが理想です。それを考えると、柔らかすぎるベッドや布団は、やはりよくないといえるでしょう。先ほど述べたように、柔らかい布団では体が沈み込んでしまい、沈んだ部分に偏って過剰な負荷がかかってしまうからです。これも、腰を悪くする一つの要因になっていると考えられます。この場合の圧力とは、要するに体重です。
体の一部に負荷がかかり続けると、その部分の血流が悪化してこりや痛みの原因になります。そして、腰に偏って体重がかかっていると、腰にとっては非常によくない状態といえます。
その他の「あなたの腰痛が治らないのは治し方を間違えているから」記事リストはこちら!
生活習慣や脳など5つのタイプから腰痛の原因を探れます。すぐ使える「腰痛ノート」も付録