「2人に1人がかかる」と言われるほど身近な病気である「がん」。ただ、断片的な情報は知っていても、検診や予防、基礎知識など「実はよくわかっていないのよね」という人も多いのではないでしょうか? そこで「がんにまつわる気になる疑問」を、最新の知識を備えたがん治療のスペシャリスト・明星智洋先生に尋ねた注目の新刊『先生!本当に正しい「がん」の知識を教えてください!』(すばる舎)から一部を抜粋、最新の「がんの知識」を連載形式でお届けします。
セカンドオピニオンを求めたほうがいいタイミングは?
――治療方針の話を聞きましたけど、どうもこの治療法では納得できない、という場合はどうすればいいんでしょうか?
明星先生 はい。それがいわゆる「セカンドオピニオン」の話になってきます。患者さんや家族が現在の治療方針が正しいのかどうか納得できていない場合や、他にも意見を聞きたい場合は、他の病院の専門医に意見を求める、というものです。
――セカンドオピニオンって、紹介状とは違うんですか?
明星先生 紹介状は患者さんが別の病院に移るときに出されるもので、セカンドオピニオンが紹介状と違うのは、あくまで主治医は変わらず、第三者から意見をもらうという点です。
――主治医は同じで、話を聞きに行くだけということですか!
明星先生 そうなんです。なので、セカンドオピニオンでは検査や投薬は行いません。費用は自費診療になり、施設や医師によって金額も変わってくるんです。
――いくらくらいなんでしょうか?
明星先生 参考として、私の勤める江戸川病院では30分あたり1万円、15分ごとに5000円が加算されるシステムを採っています。中にはこの10倍くらいの料金を提示している場合もあるので、事前確認をしてほしいと思います。
――正直、普段の診察に比べると相当割高感を感じますね......。
明星先生 そうなんです。自費診療の扱いになるのでどうしても割高になってきてしまいます。
――でも、それでも必要なときはあるんですよね?どんなときにセカンドオピニオンを求めるといいんでしょうか?
明星先生 前提として、主治医から提示された治療方針、今進めている治療に納得がいかない、また理解できないときにはなるべく早くセカンドオピニオンを求めるべきだと思います。医師に言われるままに、自分ではよくわかっていない治療を受けることは絶対に避けてほしいところです。
――セカンドオピニオンを希望するときには、主治医の先生に「セカンドオピニオンを聞きたいです」と言えばいいんですか?
明星先生 はい、素直に言っていただければと思います。言い出しにくいかもしれませんが、きちんとした医師なら笑顔で応じてくれるはずです。
――怒ったり、不機嫌になる先生はいないんですか?(笑)
明星先生 セカンドオピニオンを申し出た途端に不機嫌になるような医師は、自分の治療方針に自信がないんでしょう。そのような医師に自分の命を預けてずっと付き合っていく必要はないと思うので、ある意味ではいい見極めになるかもしれません。
――セカンドオピニオンを求める場合、病院が違うだけでなく、違う診療科の先生に話を聞くのはありなんですか?
明星先生 はい、それはむしろありでしょう。現在の主治医が外科医であった場合には、腫瘍内科医や放射線治療医、場合によっては緩和ケア医へのセカンドオピニオンを考えてもいいと思います。もちろん逆もしかりで、主治医が内科医であった場合には外科医にセカンドオピニオンを求めてもいいでしょう。内科医が手術できないと判断していても、外科医によっては手術適用ありと判断できる場合もあるかもしれません。いずれにしても、他の診療科の医師に意見を求めて、最終的に納得できる形で治療を進めていくことが極めて重要です。
――何か注意点はありますか?
明星先生 はい、1つ気をつけてほしいのは、あまりにもセカンドオピニオンを求めすぎて、結論を出すのに数ヶ月もかけてしまう、というパターンです。
――ありそうな話ですが、ずるずるはいけないんですね?
明星先生 はい、繰り返しますが、がん治療の原則は早期発見、早期治療です。がんがどんどん進行してステージが変わったり、場合によっては最初なら手術ができていたのに、迷っている間に手術できないほど進行してしまっていた、というのでは本末転倒です。
――決めるときは決めないといけないんですね。
明星先生 そうですね。セカンドオピニオンを行うなら早く手配すること。そして、求めるとしても最大2~3人までの範囲内という目安で、早々に治療方針を決定するのがよいでしょう。
【まとめ】
セカンドオピニオンは、かかった診療科とは別の医師に、最大2~3人まで、と決めて素早く聞きに行くのがおすすめ。
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