中高年の女性患者が急増中!身近な菌が原因の「肺MAC症」

中高年の女性を中心に患者数が急増している「肺MAC症」。身近な暮らしの中にある、結核菌と同じ種に属する「MAC菌」という細菌が感染することで起こるといわれています。どのような症状で、どのような治療萌芽あるのでしょうか?複十字病院・副院長で呼吸器内科長の佐々木結花先生にお聞きしました。

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身近な環境中のMAC菌に感染して起こる肺の病気

「肺MAC症」とは結核菌と同じ種に属する「MAC菌」という細菌が肺に感染することで起こる肺感染症です。結核と違って、人から人へ感染せず、病気の進行は緩やかです。特に中高年の女性を中心に患者数が急増していますが、まだ解明されていないことが多い病気です(2016年の調査では国内で10万人中15人程度が発症しています)。

MAC菌は自然界の水滴や土壌などに広く生息し、菌を含んだ土ぼこりや水しぶきを肺に吸い込むことで感染すると考えられています。浴室はMAC菌が増殖しやすく、浴槽の排水口やシャワーヘッドのぬめり、湯あかなどから検出されます。

検査の方法は、胸部エックス線検査や胸部CT検査で、肺の状況や進行具合を調べます。さらに採取した痰を培養して、2回以上MAC菌が検出されれば、肺MAC症と診断されます。痰が出ない場合は気管支鏡検査で組織や細胞、分泌物などを採取して、培養を行います。

患者のうち約3割は健診や人間ドックなどの画像検査で異常が見つかりますが、自覚症状がないケースもしばしばあります。進行した状態で見つかった場合は、徐々に自覚症状が現れます。代表的な症状は、咳、痰、発熱、倦怠感などです。重症になると、血痰(血の混じった痰)が出たり、気管支が拡張したり、肺に空洞ができたりします。酸素療法が必要になるほど、呼吸困難になって、危険な状態に陥ることがあります。自覚症状が非常に軽く、菌の検出数も少ない場合などは、経過観察をしながら様子を見ることもあります。


治療開始時期は人それぞれ。経過観察しながら判断する

自覚症状が非常に軽く、菌の検出数も少ない場合などは、経過観察をしながら様子を見ることもあります。病状の変化に応じて、治療を開始します。また、病巣の面積が片方の肺の3分の1以上ある、痰検査で一定以上の菌が検出される、血痰や喀血がある、空洞があるなどの場合は、即時に治療を開始します。

肺MAC症に有効な治療法はまだ確立しておらず、複数の抗菌薬で病状の悪化や再発のない状態を目指します。基本は3種類の抗菌薬(クラリスロマイシン、リファンピシンあるいはリファブチン、エタンブトール)を毎日服用し、菌が検出されなくなった後、1年は服用を続けます。

薬物治療をしても菌が消えない、肺に空洞や気管支拡張がある場合などは、病巣を切除する手術を検討します。治療終了後も定期的に検査を行い、再発すれば治療を再開します。

長い目で前向きに付き合っていくことが大切です。

■主な症状
・初期は無症状。進行すると、咳、痰、発熱、倦怠感、体重減少など
・重症の場合は、血痰(血の混じった痰)、喀血(かっけつ-咳とともに血が出る)、息切れなど呼吸困難に陥ることも

■主な治療法
・標準的には3種類の抗菌薬(クラリスロマイシン、リファンピシンあるいはリファブチン、エタンブトール)を服用
・肺に空洞ができるなど重症の場合は、病巣を切除する手術も検討

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取材・文/古谷玲子(デコ)

 

 

<教えてくれた人>

佐々木結花(ささき・ゆか)先生

複十字病院 副院長/呼吸器内科長。1987年千葉大学卒業。医学博士。専門は結核、非結核性抗酸菌。日本呼吸器学会指導医・専門医、千葉大学医学部呼吸器内科非常勤講師。著作に「呼吸器ジャーナル Vol.66 No.4:結核・非結核性抗酸菌症」など。

この記事は『毎日が発見』2019年7月号に掲載の情報です。

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