「排尿しようとすると下腹部が痛む」「トイレに行く回数が増えた」「残尿感がある」などの症状に悩まされたことのある人は少なくないのではないでしょうか? もしかしたらそれらの症状は「膀胱炎」のせいかもしれません。膀胱炎はその名のとおり、尿をためる膀胱で炎症が起きる病気です。診断もしやすく治療しやすい病気ですが、一方で人によっては繰り返すことも多い病気。そこで、膀胱炎になる原因や理由、予防法を、医療法人 東和会第一東和会病院 女性泌尿器科・ウロギネコロジーセンター長の竹山政美先生に教えていただきました。
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免疫力が低下するとリスクアップ
熱が出たら別の病気の疑いが!
膀胱炎は、女性の2人に1人が発症するといわれるほどポピュラーな病気です。そこで、「トイレをがまんすると発症するのか」「発症しやすい人はいるのか」など、膀胱炎に関する疑問について竹山先生に教えていただきました。
Q1
子供の頃、トイレをがまんすると膀胱炎になるといわれました。仕事中など、ついついがまんしてしまうことが多いのですが大丈夫ですか?
A
おしっこをがまんすることで膀胱炎になることはまずありませんので、安心してください。膀胱の中に尿がたまってきて最初に感じる尿意を初期尿意といい、尿量は100~150mLであることが多いです。このときに排尿する習慣がつくと、膀胱の容量が小さくなってしまい、頻尿の原因となります。おしっこをしたいと思ってから1~2回はがまんして、膀胱に尿をためる訓練を膀胱訓練といい、過活動膀胱の治療に役立ちます。
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Q2
よく膀胱炎にかかるので、まただと思っていたら高熱が出てきたのですが、膀胱炎で熱が出ることはあるでしょうか?
A
膀胱炎で熱が出ることはありません。膀胱炎と勘違いされやすい病気に腎盂腎炎(腎盂腎炎)があります。腎盂腎炎とは、膀胱に入った細菌が尿と一緒に尿管を逆流し、腎臓に運ばれてしまい、腎臓の中で感染を起こしている状態です。ほとんどの場合、感染は片側の腎臓に起こりますが、両側に起きる場合もあります。血尿や激しい腰痛、高熱などが同時に現われているときは、腎盂腎炎が疑われます。膀胱炎にかかるたびに熱が出るという人は、別の病気の疑いがあるので、早めに泌尿器科で相談するのがいいでしょう。
Q3
体質的に膀胱炎になりやすい人はいるのでしょうか?
A
膀胱炎は、どなたでも発症する可能性のある病気です。かぜや疲れで体力が低下しているときや過度なストレスを感じているときの他、下痢や睡眠不足、冷え、性交渉などでも発症のリスクが高まります。他に、糖尿病のような慢性疾患のある人、何らかの病気でステロイドホルモン剤を服用している人は免疫力が低いので膀胱炎にかかりやすいといえます。予防には、規則正しい生活とストレスをためないことを心がけてください。
Q4
膀胱炎だと思うのですが、病院を受診するのが恥ずかしいです。市販薬でも治せますか?
A
最近はドラッグストアでも膀胱炎の治療薬を購入できますが、薬の成分には、医療用医薬品のみで使用されるものも多く、市販薬に同等の効果を期待することは難しいでしょう。また、膀胱炎の背後に別の病気が隠れている場合や複雑性膀胱炎の場合は、市販薬を服用しても治りません。本当に膀胱炎なのかどうかを調べるためにも、泌尿器科で検査を受けてください。「泌尿器科を受診するのが恥ずかしい」「近くに泌尿器科がない」という人は、内科や婦人科で相談してもいいでしょう。
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取材・文/笑(寳田真由美)