使い過ぎNG!?「温水洗浄便座」が膀胱炎を引き起こすって本当?

「トイレに行く回数が増えた」「残尿感がある」...もしかしたらそれらの症状は「膀胱炎」のせいかもしれません。膀胱炎は、診断もしやすく治療しやすい病気ですが、一方で人によっては繰り返すことも多い病気です。そこで、膀胱炎になる原因や理由、予防法を、医療法人 東和会第一東和会病院 女性泌尿器科・ウロギネコロジーセンター長の竹山政美先生に教えていただきました。

使い過ぎNG!?「温水洗浄便座」が膀胱炎を引き起こすって本当? pixta_2280310_S.jpg前の記事「過労や睡眠不足も原因に。膀胱炎を防ぐ3つのコツ/膀胱炎(10)」はこちら。

過度な清潔志向は危険! 排尿・排便後の処理を見直し

温水洗浄便座が膀胱炎を引き起こすきっかけになると聞くと、驚かれる方が多いのではないでしょうか? 通常、温水洗浄便座は、排便時や生理中に使用するという人が多いことでしょう。おしっこの後にも欠かさず使うという方は、どちらかというと少数派かと思います。

「膀胱の中は本来無菌で、おしっこはきれいなものです。ですから、おしっこだけのときはわざわざ温水で洗う必要はありません。温水洗浄便座を使いすぎると、粘膜のバリア機能が破壊され、膀胱に菌が入りやすくなってしまいます。また、温水洗浄便座から出てくる温水は水道水ですから、無菌ではありません。何かしらのきっかけで、細菌に感染する可能性があります。排尿後は、トイレットペーパーを三重ぐらいに重ねて、こするのではなく、水分を拭き取るように優しく当てて、水分をしっかり吸い取るようにするのが正解です」(竹山先生)

排尿後の拭き方は、膀胱炎に罹患しているときも同様です。「膀胱が細菌に感染しているから、いつもより清潔にしないと」と、強い水流で洗ったり、ごしごし拭いたりするのは逆効果です。

排便後の拭き方も、ちょっとした工夫が必要です。大腸菌が膀胱へと入り込む原因の一つが排便後の処理の仕方にあります。排便後は必ず、「前から後ろに」拭きます。「後ろから前に」拭いてはいけません。本来、尿道や膀胱は無菌ですが、「後ろから前に」拭くことで、肛門周囲に付着している大腸菌などの常在菌を尿道口に付着させてしまう危険があります。尿道口から膀胱へと大腸菌が入り込むと、菌が増殖して膀胱炎を起こしてしまうリスクが高くなるのです。

また、便秘も膀胱炎のリスクの一つです。

便が長く腸の中にとどまっていると、それだけ大腸菌も繁殖しやすくなり、便の中に大腸菌が多く含まれることになります。すると、肛門周囲の大腸菌も増えて感染の機会が増えてしまいます。規則正しい食生活や水分の摂り方を意識して、便秘の改善に努めましょう。

膀胱炎を予防するためには、トイレをがまんしすぎないことも大切です。

仕事や家事などで多忙だからと、トイレに行くことを先延ばしにしすぎると、膀胱炎を引き起こすきっかけになることがあります。万が一膀胱内に細菌がいる場合、おしっこをすれば細菌は洗い流されます。ですが、尿を長くためていると、細菌が膀胱の中にとどまる時間が長くなり、増殖する可能性が高くなってしまいます。つまり、膀胱炎を起こす可能性が高くなるということです。これまで膀胱炎を起こしたことがある人は、「トイレに行きたいな」と思ってから、あまり長時間、おしっこをがまんしないほうがよいでしょう。3~4時間を目安にトイレに行き、がまんしすぎないようにしましょう。

「慢性的に膀胱炎を起こしていると思っている人の多くは、細菌感染による急性単純性膀胱炎を何度も繰り返しているケースが多いです。なぜ何度も繰り返すのかというと、症状が治まったから大丈夫と思い込み、完全に治る前に治療を中断することで、体力が低下したときなどに症状がぶり返す場合と、一度は治ったものの、感染しやすい生活習慣が改善されないために、何らかのきっかけですぐに感染してしまう場合があります。排尿や排便後の処理は、いますぐできる予防の一つです。気をつけてみてください」(竹山先生)

関連記事:「膀胱炎が起こる原因は細菌感染。トイレのときの「気遣い」で防げます/膀胱炎(3)」

 

次の記事「トイレをがまんすると膀胱炎になる? 膀胱炎Q&A/膀胱炎(12)」はこちら。

取材・文/笑(寳田真由美)

 

 

<教えてくれた人>

竹山政美(たけやま・まさみ)先生

医療法人 東和会第一東和会病院 女性泌尿器科・ウロギネコロジーセンター長。

大阪大学医学部卒業。健保連・大阪中央病院泌尿器科勤務、市立堺病院泌尿器科医長、健保連・大阪中央病院泌尿器科部長・医務局長を経て2009年10月に泉北藤井病院/梅田ガーデンシティ女性クリニックにウロギネセンターを開設。2015年3月より現職。著書に、『女性泌尿器科へ行こう! 骨盤臓器脱・尿もれ・間質性膀胱炎の治療と手術を受ける人へ』(共著・メディカ出版)などがある。

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