「トイレに行く回数が増えた」「残尿感がある」...。その症状、もしかしたら「膀胱炎」のせいかもしれません。膀胱炎はその名のとおり、尿をためる膀胱で炎症が起きる病気です。診断も治療もしやすい病気ですが、一方で人によっては繰り返すことも多い病気。そこで、膀胱炎になる原因や理由、予防法を、医療法人 東和会第一東和会病院 女性泌尿器科・ウロギネコロジーセンター長の竹山政美先生に教えていただきました。
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熱が出る、細菌感染がない...。腎盂腎炎や過活動膀胱かも
細菌感染による膀胱炎は、女性の2人に1人が一生に一度は経験するといわれるほどポピュラーな病気です。ですが、なかなか治らない膀胱炎や、何度も繰り返す膀胱炎の場合、別の病気が隠れている可能性もあります。
「トイレが近い、排尿をするときに痛みがある、トイレに行ったのにすっきりしない(残尿感)、尿が濁る、血尿が出るなどの症状は、膀胱炎の典型的な症状です。ですが、これに高熱が出る、脇腹が痛むなどの症状が加わった場合は、腎盂腎炎(じんうじんえん)が疑われます。また、膀胱炎とよく似た症状に、過活動膀胱や間質性膀胱炎といった病気もあります。どの病気も、十分な治療を行う必要がありますので、自己判断で膀胱炎と決めつけず、泌尿器科や内科などを受診してください」(竹山先生)
●腎盂腎炎
腎臓の根元にある腎盂という部分に大腸菌などの細菌が付着して炎症を起こす細菌感染症です。健康な人の場合、尿は腎臓から尿管、尿管から膀胱へと流れ、尿が腎臓へと逆流することはありません。また、尿によって洗い流されるため、腎臓の中は無菌です。しかし、膣口や肛門に潜んでいる大腸菌などが、何らかの要因によって尿道から膀胱、膀胱から尿管へと逆流し、腎臓に達して増殖することで、腎盂腎炎が起こります。
女性の場合は、尿道が短く膀胱炎を起こしやすいため、結果的に腎盂腎炎も起こしやすいといえます。男性の場合は前立腺肥大が原因となることがあります。尿道狭窄(にょうどうきょうさく)(※1)や膀胱尿管逆流症(※2)など、生まれつきの解剖学的な異常がある人も腎臓の尿が滞留しやすいため、腎盂腎炎を起こしやすいでしょう。また、糖尿病の人、ステロイドや免疫抑制剤を常用している人は免疫力が低下し感染症に弱いため、腎盂腎炎にかかりやすくなります。
※1 尿道狭窄とは、尿道粘膜の線維化(皮膚や内臓にコラーゲンなどの細胞外基質と呼ばれる物質が増加し、その結果、皮膚や内臓が硬くなること)により尿道径が狭窄する(すぼまって狭くなる)疾患。大きく分けて、生まれながらに尿道が狭窄している先天性のものと、感染や外傷などによる後天性のものの2つがあります。
※2 膀胱尿管逆流症とは、腎臓から尿管、膀胱へと流れていく尿が、おしっこをするときに膀胱から尿管、腎臓へと逆もどりする現象。
●過活動膀胱
「急に尿意を感じ、トイレに間に合わずにもらしてしまう」「夜中に何度もトイレに行く」などの症状が特徴的で、40歳以上の8人に1人が過活動膀胱であるといわれています。膀胱炎とよく似た症状ですが、細菌感染はありません。治療の原則は、膀胱の筋肉が過剰に収縮することを抑える薬を中心とした薬物治療になります。
●間質性膀胱炎
通常、膀胱炎は膀胱の表面の粘膜だけが炎症を起こしますが、何らかの要因によって、炎症が表面の粘膜を通過し、その奥にある間質と呼ばれる層にまで達してしまうと、間質性膀胱炎になります。膀胱や骨盤周囲の強い痛み、尿意切迫感、頻尿など、膀胱炎とよく似た症状があるにもかかわらず、検査をしても尿から細菌は検出されません。
細菌感染はないのに症状が長引く場合は、間質性膀胱炎の診断ができる医師がいる病院を受診するのがおすすめです。日本間質性膀胱炎研究会のサイトに、全国の医師リストが掲載されているので参考にしましょう。
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取材・文/笑(寳田真由美)