「難聴で相手の話が聞き取りにくい」「めまいがつらくて気分までふさぎこんでしまう」など、難聴やめまいに悩む人はどの年齢にもいて、悪化すると生活に支障が出ることがあります。「急に耳が聞こえなくなった」という場合は、すぐに受診したほうがいいことも。難聴やめまいなどの症状や治療法、受診の目安、日ごろの注意点などについて、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教授の肥塚泉先生に聞きました。
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めまいを改善、予防するには日常生活を見直します。日頃からめまいを意識した6つの生活習慣を取り入れましょう。
●食事にカルシウム食材をバランスよく取り入れる
健康維持のためにも、良質なたんぱく源である、魚、大豆製品、野菜、きのこ、海藻類をバランスよく食事に盛り込みます。「女性は閉経後に女性ホルモンの分泌が低下。体内へのカルシウムの吸収が悪くなります。特に良性発作性頭位めまい症の人は、カルシウム不足から骨密度が低下するため、耳石がはがれやすくなってめまいを引き起こします。しっかりカルシウムが摂れる食事メニューを毎日取り入れれば、予防にもなるのです」と肥塚先生。取り入れたい食材は、しらすなどの小魚、きくらげ、牛乳、ヨーグルト、小松菜などです。
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●たしなむ程度のアルコールはOKだがタバコは厳禁
健康なときに、たしなむ程度にアルコールを飲むのはいいのですが、アルコールはめまいの引き金となり悪化させる原因にもなるため、めまいがある人はなるべく飲酒を避けます。また、タバコは厳禁です。タバコを「初めて吸ったとき」「久しぶりに吸ったとき」などに、頭がふらついた経験はないでしょうか。タバコに含まれるニコチンが血管を収縮させるため、脳への血流が悪化して頭がクラッとなり、体のふらつきが起こるのです。耳の内耳への血流も悪くなって血流障害を起こし、めまいの原因になることも。めまいの症状がある人、めまいが治った人は禁煙を心がけます。
●良い睡眠をとることがめまいを防ぐ
「問診でめまいを起こす前の患者さんの体の状態を尋ねたとき『めまいの前は体の疲れがとれませんでした』『寝不足が続いていました』という答えが多かったです」と肥塚先生。過労や睡眠不足は、めまいを起こしやすい人にとって再発の原因や悪化につながるのです。めまいが起こらないように環境を整えるためにも睡眠環境はポイント。しかし、「寝つきが悪い人」「熟睡できない人」が睡眠薬を服用することが増えてきます。これらの薬が原因でふらつきやめまいが起こることがあるので、なるべく薬に頼らずに心地よい睡眠ができるよう工夫をしましょう。
<心地よい睡眠をとるためのコツ>
・ 主婦や退職した人などは家にいる時間が増えます。昼寝をしてもいいのですが、20分以内にして、14時以降の昼寝は避けます。
・ 午後から寝る前までは、コーヒーやお茶などのカフェインが入った飲み物は取らないようにします。
・ 1日のうち1度は外出をして、散歩やウオーキングなど、体を動かす運動を取り入れます。
・ 寝る前にはスマートフォンやパソコンなどの画面は見ないようにします。
・ 寝室は寒すぎず暑すぎないように温度調整はしっかり行い、照明は暗くして眠りの環境を作ります。
●入浴は半身浴でゆっくり浸かる
入浴は血流を良くして体の芯から温めてくれて、体の血行が良くなるだけではなく、リラックス効果も得られます。特に37℃から40℃くらいのぬるめのお湯に、体のみぞおちから下をつける半身浴がおすすめです。入浴時間の目安は20分から30分ぐらいで、長くても1時間以内に。上半身が湯船から出ているので、肩のあたりが寒い場合はタオルなどを肩にかけて入ります。脱水症状にならないように、入浴前後はこまめな水分補給を。半身浴では長い時間、湯船につかれるのでリラックスでき、気持ちもスッキリします。
●人づき合いはほどほどにして、ストレスをためない
めまいの発症には、ストレスが関連していることが多いです。職場や友人、近所の人などとのつき合いで、「合わせすぎている」「気を遣いすぎている」と感じたことはありませんか。人間関係で相手を思いやることは必要ですが、ストレスが溜まるほど無理につき合うことはないのです。例えば、会社の上司から仕事を頼まれると、つい引き受けてしまいます。「今日は体がきついから、早く帰りたかったのに......」と思っても、断るひと言がなかなか言い出せないことがあります。勇気を出して断ることも時には必要です。
「自分が無理だと思うこと、ストレスを感じることにはつき合わなくていいのです。さりげなく距離を置きます。ストレスが溜まらないようにコントロールしましょう」と肥塚先生。
●生活に笑いを取り入れる
「いつ、めまいが起こるのだろう」「めまいになったらどうしよう」と常に気にしていると、気持ちが暗くなりがち。いつも前向きな気持ちで物事をくよくよと考え過ぎないことです。お笑い番組を見たり落語を聞いたり、ユニークなマンガやエッセイを読むなど、どのような方法でもいいので、笑顔になれる機会を増やすようにします。病気を改善するには「笑い」が効果的という研究データもあります。
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取材・文/松澤ゆかり