めまいが起きたときどの診療科に受診すればいい? 併発する症状によっても診療科は異なる/難聴・めまい

「難聴で相手の話が聞き取りにくい」「めまいがつらくて気分までふさぎこんでしまう」など、難聴やめまいに悩む人はどの年齢にもいて、悪化すると生活に支障が出ることがあります。「急に耳が聞こえなくなった」という場合は、すぐに受診したほうがいいことも。難聴やめまいなどの症状や治療法、受診の目安、日ごろの注意点などについて、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教授の肥塚泉先生に聞きました。

めまいが起きたときどの診療科に受診すればいい? 併発する症状によっても診療科は異なる/難聴・めまい pixta_36473986_S.jpg前の記事「「突発性難聴」はめまいを伴うと「めまいを伴う突発性難聴」という病名に。「前庭神経炎」にも注意/難聴・めまい(11)」はこちら。

 

ある日突然起こっためまいに、「体にしびれやマヒがある」「まっすぐ歩けない」「吐き気がしている」などの症状を伴うことがあります。めまいの発作が起きたときは、まず、慌てずに気持ちを落ち着かせること。一度、大きく深呼吸をしたり、体を横にして楽な姿勢を取るようにします。めまいの発作が治まったところで受診をします。その際、どの診療科を受診すればいいのかと迷う人もいるでしょう。めまいの様子や併発する症状によって、受診する診療科は耳鼻咽喉科と脳神経外科・脳神経内科に分かれます。

 

●難聴や耳鳴りを伴うめまいは「耳鼻咽喉科」

"グルグル回る"めまいの症状のほかに難聴や耳鳴りがある場合は、「めまいを伴う突発性難聴」「メニエール病」などが疑われます。めまいに加えてこのような耳の症状がある場合は、耳鼻咽喉科を受診します。「めまいを伴う突発性難聴」は、早く治療を開始するほど効果が期待できる病気です。特に発症から1週間以内が望ましく、受診を先延ばしにしていると回復しにくくなってしまいます。

「良性発作性頭位めまい症」「前庭神経炎」は、吐き気やふらつきなどの症状はあるものの、難聴や耳鳴り、耳が詰まるような感じはありません。それでも耳鼻咽喉科を受診するのが望ましいです。

「めまいの症状が初めて起こったとき、かかりつけ医や内科を受診する人が多いです。しかし、『良性発作性頭位めまい症』なのに『メニエール病』だと誤診断されるケースが少なくありません。良性発作性頭位めまい症の診断には眼振(眼球が揺れ動いたり、けいれんしたように動いたりすること)の観察が必須です。また治療についても急性期を過ぎれば原則、内服治療は無効で、「浮遊耳石置換法」や「寝返り体操」が治療のメインになります。一方、メニエール病は難聴や耳鳴りを伴うことがありますが、耳鼻咽喉科以外の他の診療科では難聴や耳鳴りがあるかどうかの判断が困難。そのため、めまい止め薬による薬物治療しか行われず、難聴については適切な治療が行われないでこれが進行してしまうケースも。めまいの症状があるときは、必ず耳鼻咽喉科を受診することを覚えておきましょう」と肥塚先生。

 
●命に関わるめまいは「脳神経外科」や「脳神経内科」

めまいの多くは命に関わらないですが、体が"フワフワ""フラフラ"と宙に浮いたような感じがする「浮動性めまい」は、脳の病気が隠れている危険なめまいの可能性があります。めまいの症状のほかに、「ものが二重に見える」「ろれつが回らない」「手足や顔面の半分がしびれている」などの症状がある場合は注意が必要で、脳の病気が疑われます。至急、救急車を呼んで脳神経外科や脳神経内科のある総合病院を受診し、CTやMRIなどの検査を受けると正確な診断ができます。

関連記事:「「グルグル」「フワフワ」「クラッ」など、「めまい」にはさまざまなタイプがあります/難聴・めまい(8)」

「耳鼻咽喉科を受診される患者さんの中に、『脳腫瘍からめまいが起こったのではないか』と心配される人が多いです。MRI検査を希望されるので検査を行いますが、私がいままで診断した人の中には脳腫瘍の人はほとんどいませんでした。成人の場合はめまいの症状があって脳腫瘍と診断されるのはまれです」と肥塚先生。

医療機関を受診する前に、いつから、どのくらいの時間、どのようなめまいが起きたのかをメモしておきます。受診の際に問診で具体的な症状を伝えることができます。

 

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取材・文/松澤ゆかり

 

 

<教えてくれた人>

肥塚泉(こいづか・いずみ)先生

聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教授。同大学卒業後、大阪大学医学部耳鼻咽喉科、米国ピッツバーグ大学医学部耳鼻咽喉科などを経て2000年より現職。「めまい外来」を担当し5万人以上の診察にあたる。日本耳鼻咽喉科学会(理事、評議員、専門医)、日本めまい平衡医学会(理事、専門会員、評議員、めまい相談医)。著書に『図解 専門医が教える!めまい・メニエール病を自分で治す正しい知識と最新療法』(日東書院)などがある。

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