「グルグル」「フワフワ」「クラッ」など、「めまい」にはさまざまなタイプがあります/難聴・めまい

「難聴で相手の話が聞き取りにくい」「めまいがつらくて気分までふさぎこんでしまう」など、難聴やめまいに悩む人はどの年齢にもいて、悪化すると生活に支障が出ることがあります。「急に耳が聞こえなくなった」という場合は、すぐに受診したほうがいいことも。難聴やめまいなどの症状や治療法、受診の目安、日ごろの注意点などについて、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教授の肥塚泉先生に聞きました。

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●平衡感覚が乱れてめまいを感じる 

「朝、ふとんから起き上がるときにめまいがした」「ずっと座っていたら一瞬目の前が暗くなって体がよろけた」など、日常生活の中でめまいの症状を感じている人もいるようです。

めまいはさまざまな原因によって起こる病気です。私たちが立って真っすぐバランスよく歩けるのは、体の平衡感覚を保つ機能「平衡機能」が正常に働いているからです。しかし、この機能のバランスが崩れると、自分の体や周りの物は動いていないのに、「天井がグルグル回っている」「体がフワフワしている」「うまく立ち上がれない」などの感覚に襲われます。平衡機能の障害によって起こるのが「めまい」です。
 
「めまいと聞くと『脳の病気かもしれない...』と思う人もいるようですが、実際のところ、めまいの7割は耳が原因で起こり、2割は自律神経の失調やホルモンの変調が原因。脳の病気が原因で起こるめまいは1割程度と考えられています。ただし高齢者、糖尿病や高血圧などの、いわゆる生活習慣病を患っている人はその頻度が高くなります。脳の病気で起こるめまいは、数は少ないのですが命にかかわるケースが多く、早急な受診が必要になります」と肥塚先生。めまいは症状によって、次のように3つのタイプに分けられます。

 

●めまいには「回転性めまい」「浮動性めまい」「立ちくらみ」の3タイプがある

自分の体や周囲の景色が"グルグル"回っているように感じる「回転性めまい」
回転性めまいは「立つ」「歩く」などの動作ができなくなるため、本人はとても不安を感じるようですが、命にかかわるものではないので、それほど心配はいりません。「回転性めまい」は、耳の奥にある「内耳」という器官に障害が生じて起こることが多いです。内耳には体のバランスを取る「平衡感覚」と、音を聞き取る「聴覚」の2つの働きがあり、何らかの原因で内耳に障害が起きて平衡感覚が低下することで「めまい」は起こります。めまいに伴って頭痛、嘔吐、冷や汗などの症状が出ることも。手足のまひやしびれ、ろれつが回らないなどの症状がある場合は、「脳梗塞」や「脳出血」などの脳の病気が疑われます。至急、救急車を呼び、脳神経外科や脳神経内科などを受診します。

 

体が"フワフワ""フラフラ"宙に浮いたような「浮動性めまい」
「浮動性めまい」は、足元が定まらなかったり、体が"フワフワ""フラフラ"と揺れたりして、まっすぐ歩けなくなるのが特徴です。耳の病気のほかに、睡眠不足、ストレス、過労などから起こることが多いです。

もし、頭痛、顔や手足にまひやしびれなどの症状がある場合は、脳の病気が疑われます。

 

急に立ち上がったときに"クラッ"とするめまい「立ちくらみ」
いすに腰掛けていて、急に立ち上がったときに起こる"クラッ"とするめまいが「立ちくらみ」です。"クラッ"としたときに一瞬、目の前が暗くなったり、気が遠くなったりするのが特徴です。この症状は、血圧を調整している自律神経の働きが悪くなり、一時的に脳に血流が不足することで起こります。立ちくらみは命にかかわることはありません。ただし、高齢者が急にバタンと倒れる立ちくらみには、不整脈が原因のものもあるので、医療機関の受診が必要になります。
 

 
「以前の統計ですが、聖マリアンナ医科大学病院に救急搬送された患者さんのうち2.6パーセント、およそ50人に1人がめまいの症状を訴えていたというデータがあります(2016年6月から11月の統計)。患者の方の年代は男女ともに40歳代から増加して、70歳代でピークとなる傾向があります。男女比では男性が3割、女性が7割の比率です」と肥塚先生。

 

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取材・文/松澤ゆかり

 

 

<教えてくれた人>

肥塚泉(こいづか・いずみ)先生

聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教授。同大学卒業後、大阪大学医学部耳鼻咽喉科、米国ピッツバーグ大学医学部耳鼻咽喉科などを経て2000年より現職。「めまい外来」を担当し5万人以上の診察にあたる。日本耳鼻咽喉科学会(理事、評議員、専門医)、日本めまい平衡医学会(理事、専門会員、評議員、めまい相談医)。著書に『図解 専門医が教える!めまい・メニエール病を自分で治す正しい知識と最新療法』(日東書院)などがある。

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