耳が聞こえにくいと感じたら早めの受診を。めまいでは「めまい日記」が役に立つ/難聴・めまい

「難聴で相手の話が聞き取りにくい」「めまいがつらくて気分までふさぎこんでしまう」など、難聴やめまいに悩む人はどの年齢にもいて、悪化すると生活に支障が出ることがあります。「急に耳が聞こえなくなった」という場合は、すぐに受診したほうがいいことも。難聴やめまいなどの症状や治療法、受診の目安、日ごろの注意点などについて、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教授の肥塚泉先生に聞きました。

pixta_28863274_S.jpg前の記事「肥塚先生が教えてくれた! めまいを起こしにくくする、いますぐ取り入れたい生活習慣/難聴・めまい(13)」はこちら。

 

●難聴のサインに周りの人が気付いたら、本人に伝えましょう

「最近、夫のテレビの音量が大きくてうるさい」「妻は玄関のチャイムの音が聞こえていないようだ」「父の日常会話の声が大きくなった」「母は向かい合って口元を見せて話した方がスムーズに会話できる」など、ちょっとした日常生活のシーンで、一緒に暮らす家族の方が先に、"難聴かもしれない"と気が付くことがあります。本人は聞こえなくなっていることに気付かないことが多いです。家族や職場の同僚など、周りの人が難聴のサインに気付いたら、「最近、耳の聞こえが悪くなっていない?」と声をかけることが早期発見につながります。

高い音は聞こえるのに急に低い音だけが聞こえなくなる「急性低音障害型感音難聴」、少しずつ進行している「加齢性難聴」などは、音の聞こえが悪くなっていることに気付きにくい病気。「難聴が現れる前に予兆として、何となく耳の聞こえが悪くなったり、耳が詰まったような感じになることがあります。自分でも予兆に気が付いたら早めに受診をしましょう。難聴は耳鳴りやめまいなどと密接に関連しています。症状が進行する前に受診することが大事です」と肥塚先生。

 
●めまいの症状が起きたときは内科ではなくて耳鼻咽喉科を受診

「めまい」は、体は動いていないのに自分や周囲が動いているように錯覚し、体の平衡感覚に障害が起こる病気です。「体のバランスを保っているのは、耳の中にある内耳という部分。また自律神経や血圧も体のバランスを取ることに関係しています。脳は体のさまざまな部位からの情報を感じ取り、平衡感覚を保っているのです。

「めまいの約7割は耳が原因で起こり、約2割は自律神経の失調やホルモンの変調が原因。1割程度が脳の病気が原因といわれています。ただし高齢者、糖尿病や高血圧などの、いわゆる生活習慣病に罹患している人はその頻度が高くなります。めまいが起きたら内科よりも耳鼻咽喉科に行くことが重要です」と肥塚先生。

めまいには「良性発作性頭位めまい症」「メニエール病」「前庭神経炎」「めまいを伴う突発性難聴」などがありますが、どれも耳が原因で発症します。例えば、最も多い「良性発作性頭位めまい症」は、内耳にある耳石が三半規管に入り込むことでめまいが起こる病気です。また治療が遅れると回復に影響が出る「めまいを伴う突発性難聴」は、突然耳が聞こえなくなる症状にめまいが併発した病気。治療を始めるのが遅れると聴力が回復しにくくなることがあるので、早急な受診が必要です。

「まれに脳の血管が詰まる『脳梗塞』や、脳の血管が破れて出血する『脳出血』が原因で、命に関わるめまいが起こることがあることも覚えておきましょう。救急車を呼び脳神経外科や脳神経内科への早期受診がカギになります」と肥塚先生。

 
●めまいの回数などを「めまい日記」につければ、症状や原因を把握しやすい

毎日のめまいの回数やめまいが起こった状況などについて「めまい日記」に記録すると、受診のときに役立ちます。記録が病気を判断するうえで参考になるからです。「めまいが起こった時間帯」「どんな状態で起きたか」「薬は飲んでいたか」などとともに、その日の出来事や天気、人間関係などを記載すると、「気圧の変化でめまいが起きやすい」「人間関係でストレスを感じたのでめまいが起きたかも」ということなどが分かってきます。

「めまい日記をつけていると、めまいを起こしやすい状況や傾向が分かるようになります。生活習慣を見直すきっかけにもなりますし、めまいを起こしそうな状況にならないよう、あらかじめ回避できます。何より受診時に日記を持参してもらえば、医師にも症状が正確に伝わります」と肥塚先生。めまいの症状があるときは、日常生活や職場に行くことがつらいものです。しかし、ほとんどのめまいの症状は、適切な対策や治療法で改善できるといえます。

 
●難聴やめまいと上手につき合い前向きに改善に取り組む

仕事、家事、子育て、介護などによる過労や睡眠不足、複雑な人間関係から生じる精神的苦痛など、現代社会に生きる私たちは多くのストレスに囲まれて生活しています。つい、がんばり過ぎてしまう場合が多く、それが誘因となって難聴やめまいが引き起こされることがしばしばあります。難聴やめまいは「休みたい」という体からのSOSだとも考えられます。

「難聴やめまいでつらくても外からは見えないため、そのつらさは本人にしか分かりません。しかし、つらいからといって外出をおっくうがり、家に閉じこもるのはよくないです。不安やストレスで症状が悪化することがありますし、認知症やうつ病につながる恐れもあります。あきらめずに症状の改善に前向きに取り組み、健康的で規則正しく、そしてよく笑う生活を送りましょう」と肥塚先生。

 

取材・文/松澤ゆかり

 

 

<教えてくれた人>

肥塚泉(こいづか・いずみ)先生

聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教授。同大学卒業後、大阪大学医学部耳鼻咽喉科、米国ピッツバーグ大学医学部耳鼻咽喉科などを経て2000年より現職。「めまい外来」を担当し5万人以上の診察にあたる。日本耳鼻咽喉科学会(理事、評議員、専門医)、日本めまい平衡医学会(理事、専門会員、評議員、めまい相談医)。著書に『図解 専門医が教える!めまい・メニエール病を自分で治す正しい知識と最新療法』(日東書院)などがある。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP