難聴は認知症を招く? 補聴器を上手に取り入れると認知症予防につながる/難聴・めまい

「難聴で相手の話が聞き取りにくい」「めまいがつらくて気分までふさぎこんでしまう」など、難聴やめまいに悩む人はどの年齢にもいて、悪化すると生活に支障が出ることがあります。「急に耳が聞こえなくなった」という場合は、すぐに受診したほうがいいことも。難聴やめまいなどの症状や治療法、受診の目安、日ごろの注意点などについて、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教授の肥塚泉先生に聞きました。

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●加齢性難聴の場合は補聴器使用を視野に入れる

加齢にともなって耳の機能は落ちていきます。高い音、小さい音から聞こえなくなっていくケースが多いです。難聴の人は50歳代から増え始め、80歳代になると7、8割の人が難聴の症状を抱えているというデータもあります。

耳鼻咽喉科を受診して加齢性難聴だと診断されたときには、早めに補聴器の使用を検討するといいでしょう。補聴器を作るときには「補聴器相談医」がいる耳鼻咽喉科を受診することが望ましいです。補聴器相談医とは補聴器に関する専門医です。

「補聴器は眼鏡とは異なり、装着してすぐに聞こえが良くなるわけではありません。脳を補聴器からの音に慣らすために、数カ月にわたる細かい調整が必要となります。補聴器相談医は、『認定補聴器専門店(補聴器についての知識と高度な調整技能を持つ認定補聴器技能者が在籍する販売店)』と連携し、その人に合った補聴器を選びます。そして『音が響き過ぎる』『話し声が聞き取りにくい』などの使いづらい点を何度も調整。少しずつ慣らしながら快適に使えるようにサポートします」と肥塚先生。

かかりつけの耳鼻咽喉科の先生がすでに補聴器相談医であることがほとんどですので、まずは補聴器について相談してみましょう。もしそうでない場合は、かかりつけの耳鼻咽喉科に頼んで紹介状を書いてもらったり、認定補聴器専門店に行き、補聴器相談医を紹介してもらう方法もあります。日本耳鼻咽喉科学会のホームページには、都道府県ごとの補聴器相談医のリストが載っています。

 
●補聴器を試してみたAさんの例

60歳代後半のAさんは最近、電話の声やテレビの音量が大きいと家族に指摘されるようになりました。補聴器相談医がいる耳鼻咽喉科を受診すると難聴だと診断され、補聴器の使用を勧められました。認定補聴器専門店を紹介してもらって補聴器を試してみることに。耳に引っかけるタイプの小型の補聴器を装着すると、いままで気が付かなかった周囲の音が聞こえてきたので、Aさんは驚きました。言葉尻もはっきり聞こえて会話がスムーズにできます。

「補聴器は相手の言葉を聞き取りやすくしたり、周囲の音の聞こえ方の違和感を減らしたりと、その人に合わせて細かい設定ができますよ」と認定補聴器技能者から説明を受け、Aさんは補聴器の使用を前向きに検討することにしました。

 
●難聴の人は認知症になりやすい

「最近の研究で、難聴の人は認知症になるリスクが高いことが分かってきました。認知症はさまざまな要因で発症しますが、難聴は危険因子の一つだといわれています。難聴のために、音の刺激や脳に伝えられる情報量が少ない状態にさらされてしまうと、脳の萎縮や神経細胞の弱まりが進み、それが認知症の発症に大きく影響することが明らかになってきました」と肥塚先生。

年を取って加齢性難聴になると、他の人と会話するときに聞き取りにくく、何度も聞き返すことが多くなります。相手に悪いと思い自分でも歯がゆくて、次第に人とコミュニケーションを取るのがおっくうになってしまいます。

一緒に暮らしている家族も、聞き返されることが多いとわずらわしく感じて、次第に最低限の必要事項しか本人に話しかけなくなり、情緒豊かにおしゃべりを楽しむ機会が減っていきます。家族の会話に入れないため孤立感を深めたり、他の家族が普通に話していてもひそひそ声に聞こえて、悪口を言われているのではないかと疑心暗鬼になったり...。また、「どうせ聞こえないから外出したくない」と、家に閉じこもることが多いため外部からの刺激が減ってしまいます。そうすると、次第に抑うつ状態に陥ったり、社会的に孤立してしまう危険もあります。加齢性難聴でこのような状況になることも、認知機能の低下の一因だといわれています。  

                 
「認知症を防ぐ意味でも、聞こえが悪くなったと感じたら補聴器相談医を受診して相談し、補聴器の使用を検討しましょう。自分に合った補聴器を使うことで、聞こえなくなった音域をカバーできて生活の質が上がります」と肥塚先生。

 

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取材・文/松澤ゆかり

 

 

<教えてくれた人>

肥塚泉(こいづか・いずみ)先生

聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教授。同大学卒業後、大阪大学医学部耳鼻咽喉科、米国ピッツバーグ大学医学部耳鼻咽喉科などを経て2000年より現職。「めまい外来」を担当し5万人以上の診察にあたる。日本耳鼻咽喉科学会(理事、評議員、専門医)、日本めまい平衡医学会(理事、専門会員、評議員、めまい相談医)。著書に『図解 専門医が教える!めまい・メニエール病を自分で治す正しい知識と最新療法』(日東書院)などがある。

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