口内炎とは、口内の粘膜にできる炎症の総称です。頬や唇の内側、舌、上あごなど口内のあらゆる粘膜に炎症を起こす可能性があり、食事をすることがつらくなったり、人と会話をすることがおっくうになったりするなど、痛みや不快感でQOL(生活の質)を低下させます。口内炎といっても原因はさまざま。それぞれ治療方法が違うので、原因に合った治療をすることが大切になります。
さまざまな口内炎の原因、症状、治療法、予防法などを、鶴見大学歯学部附属病院口腔機能診療科准教授の中川洋一先生にお聞きしました。
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カンジダ菌による口内炎の治療法とは
口内炎の中で、加齢とともにできやすいとされているのが、カビの一種である真菌・カンジダ菌が原因による「カンジダ性口内炎」です。カンジダ菌は口腔内をはじめ体の中に広く生息する常在菌のひとつで、通常は健康障害をもたらすことはありませんが、何かしらの原因により常在菌間のバランスが保てなくなり口腔内でカンジダ菌が増殖すると、「カンジダ性口内炎」を発症します。
「カンジダ性口内炎」の治療には、どのような方法があるのでしょうか。
「炎症が少ない場合にはうがいをしたり、義歯洗浄をしたりして、口腔内の清潔環境を保つことで、症状の改善を待ちます。改善されない場合には、抗真菌薬による治療が有効です。うがい薬や塗り薬などによるケアのほか、炎症が強い場合には、内服治療を検討します。放置しておくと菌が増殖してしまうため、早めに専門の医療機関を受診することが大切です」(中川先生)
処方される主な抗真菌薬にはどのようなタイプがあるのでしょうか。
●アムホテリシンB(ファンギゾンシロップ):シロップ状
強力な抗真菌作用を持つ。体内にほとんど吸収されないので、表層のカンジダ症に有効。舌を使ってシロップを口腔内に広くいきわたらせて、できるだけ長く口に含んだ後に飲み込む。1日2~4回、食後に行う。副作用として吐き気や食欲不振などの胃腸症状がみられることがある。
●ミコナゾール(フロリードゲル経口用2%):ゲル状
体内にほとんど吸収されないので、菌糸が深い部分にまで達している場合には有効ではない。10~20gを1日4回、毎食後と就寝前に分けて、口腔内にまんべんなくいきわたらせ、できるだけ長く口に含んだ後に飲み込む。ゲルを口の中に入れる際は、以下の方法がある。
・チューブからゲルを直接口に入れる
・いったんスプーンにゲルを出してから入れる
・いったん指にゲルをつけてから口に入れる
ほかの薬剤と相互作用を起こすことがあるので、併用する際には注意が必要。
アムホテリシンBやミコナゾールのゲル剤は、体内にほとんど吸収されないので、粘膜の表面に発症するカンジダ症には有効ですが、深い部分に発症した難治性のカンジダ症には効果がない場合があります。その場合に限って、以下の抗真菌剤が使用されます。
●イトラコナゾール(イトリゾール内用薬1%)
イトラコナゾールは消化管からの吸収がよく、薬剤が局所に到達するので、難治性のカンジダ症に有効。200㎎を1日1回、空腹時に経口服用する。ほかの薬剤と相互作用を起こすことがあるので、併用する際には注意が必要。
「カンジダ症の治療で注意するべき点は、ステロイド入りの薬を使わないことです。ステロイド入りの抗炎症剤は症状が悪化してしまう危険性があります。また、矯正器具や義歯にはカンジダが付着しやすい材質のものもあるので、矯正器具や義歯を毎日洗浄し、それらが合わない場合は調整することが大事です」(中川先生)
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取材・文/古谷玲子(デコ)