口内炎とは、口内の粘膜にできる炎症の総称です。頬や唇の内側、舌、上あごなど口内のあらゆる粘膜に炎症を起こす可能性があり、食事をすることがつらくなったり、人と会話をすることがおっくうになったりするなど、痛みや不快感でQOL(生活の質)を低下させます。口内炎といっても原因はさまざま。それぞれ治療方法が違うので、原因に合った治療をすることが大切になります。
さまざまな口内炎の原因、症状、治療法、予防法などを、鶴見大学歯学部附属病院口腔機能診療科准教授の中川洋一先生にお聞きしました。
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カンジダ菌に組織の奧まで侵食されると味覚障害も出てしまう
口内炎とは、頬や唇の内側、舌、上あごなど口内の粘膜にできる炎症の総称です。原因別にさまざまなタイプの口内炎がありますが、加齢とともにできやすくなる口内炎のひとつが、カビの一種である真菌・カンジダ菌による「カンジダ性口内炎」です。
カンジダ性口内炎は、頬や唇の内側、舌、喉など口内のあらゆる場所に発症し、白くなる場合、赤くなる場合、白と赤が混在する場合があります。カンジダ菌による口内炎かどうかを検査するには、患部の表面を綿棒などで拭って顕微鏡で見るか培養して、カンジダ菌の増殖を確認します。
「カンジダ菌はつねに体の中に広く生息している常在菌のひとつですが、健康な粘膜ではカンジダ菌を組織の中に入り込ませないように抵抗作用が働き、炎症を起こしません。しかし、何かしらの原因により常在菌間のバランスが保てなくなりカンジダ菌が増殖すると、口内炎を発症するのです」(中川先生)
粘膜の表面に白い斑点状の苔が付着したような感じに見える「偽膜性カンジダ症」は、ほとんど痛みはなく、ざらざらとして違和感を訴える程度の自覚症状です。白い粘膜面はピンセットなどではぎ取ることができるほど、はがれやすい性質のものです。
いっぽう粘膜の表面が赤くなる「紅斑性カンジダ症」では、ヒリヒリとした灼熱感とともに接触や刺激による痛みを伴います。舌の表面がツルツルしてきます。
唾液の働きには、口の中のウイルスや細菌の増殖を抑える抗菌作用や粘膜を保護する潤滑作用があります。その唾液の分泌量が減ってそのような働きが妨げられたり、免疫の働きが低下したりすると、カンジダ菌が増殖して粘膜に炎症が起きてしまうのです。
「唾液の分泌量が減る理由は、加齢によって唾液腺の働き自体が低下することがあります。また、高血圧やアレルギーなどの薬の副作用や、強いストレスなどが原因になる場合もあります。歯周病が進んだり義歯が合わなくて噛む回数が減ることにより、唾液の分泌量が減ることもあります」(中川先生)
「特に『紅斑性カンジダ症』によって、菌糸が粘膜の奥深くまで進んでしまうと、治療をした後もずっと痛みが残ったり、味覚に障害が残ったりするなど、QOL(生活の質)に影響を与えます。炎症が広い範囲にわたる場合や、2週間以上続く場合には、口腔外科、歯科、耳鼻咽喉科などを受診してください」(中川先生)
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取材・文/古谷玲子(デコ)