坐骨神経痛とは、腰から足にかけて延びている坐骨神経が、さまざまな原因によって圧迫されたり、刺激されたりすることであらわれる、痛みやしびれなどの症状を指します。
坐骨神経痛の原因となる病気はいくつかあり、また、症状がよく似ていても坐骨神経痛ではない場合もあります。そこで、平和病院副院長で横浜脊椎脊髄病センター長の田村睦弘先生に症状の見極め方や治療方法、痛みを改善するセルフケアのやり方などを教えていただきました。
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痛みが増す動作を避け、腰まわりの筋肉の緊張を緩める
坐骨神経の根元である腰椎の神経が圧迫されることで、坐骨神経が通るお尻や下肢にも痛みやしびれがあらわれる坐骨神経痛。その原因は、さまざまです。
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坐骨神経痛は、腰の緊張をやわらげるよう自己管理をすることで、症状を軽減できます。「坐骨神経痛の治療は、運動療法などの理学療法や薬物療法、ブロック療法などの保存療法が基本です。原因となる病気を知り、病院で正しい治療を受けることはもちろんですが、生活習慣を正し、運動を行ったり、腰に負荷をかけない姿勢を避けたりすることで、痛みやしびれを改善できます」(田村先生)
では、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか?
「痛みが増すような動作を避けることが第一です。腰部脊柱管狭窄症の人ならば、腰を反らす動作は厳禁。腰椎椎間板ヘルニアの人は、腰を前に曲げる、前かがみの動作での作業などはできるだけ避けてください。立つ、座るなど、日常生活の中で痛みの増す動作を避ける工夫をするとともに、腰の緊張をやわらげる体操を習慣にするのもおすすめです」(田村先生)
痛みを軽減する「座り方」「立ち方」を知りましょう
いすに座ったり、立ったりするときに、腰への負荷を考えて動作を行っていますか? 実は、いすの座り方や立ち方によっては、腰やひざに大きな負担がかかります。坐骨神経痛の方は、腰にやさしい動作を意識してみましょう。
●いすに座るとき(腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアの人)
1)いすの前に立ち、軽く「こんにちは」と、おじぎをするように少し前に体を倒します。
2)お尻を後ろに引くようにしながら、ゆっくりとひざを曲げます。
3)静かにお尻をおろし、上体を起こします。
腰部脊柱管狭窄症の人は、背中を丸めながら座るようにしましょう。一方、椎間板ヘルニアの人は、腰にクッションや背もたれを当て、お尻をキュッと締めるように背すじを伸ばして座ります。
●いすから立ち上がるとき(腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアの人)
1)手のひらを上に向けて脚の付け根におき、「こんにちは」と少し前に体を倒します。
2)頭をぐっと下げ、お尻をひょいと持ち上げます。
3)上体を起こしながら、立ち上がります。
腰部脊柱管狭窄症の人は、背中を丸めながら立ち上がります。腰椎椎間板ヘルニアの人は、お尻をキュッと締めながら背すじを伸ばして立ち上がります。立つときも、座るときも、腰とお尻、太ももの筋肉を意識して行うようにしましょう。
いすの選び方も重要です。良い姿勢を保つことが難しいいすに長時間座っていると、腰椎を痛める原因となります。「体が深く沈み込むソファ」「座面が高く、足が床につかないいす」は、腰を痛めやすいのでできるだけ避けましょう。また、ソファに座るときは、背もたれに背中をつけると、脊柱のS字状カーブが大きく崩れ、腰に負担がかかります。上半身を少し起こし、手や前腕を太ももにつけて上半身を支えるようにすると体が安定するので、意識してみましょう。
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取材・文/笑(寳田真由美)