「病院に行くべきかどうか...」悩むレベルの"困った症状"、いろいろありますよね。
今回寄せられたのは、尿漏れするのは前立腺肥大だからなのでは?と心配する61歳の男性からのお悩み。医療法人社団同友会理事長 高谷典秀先生がお答えします。
Q
たびたび尿漏れするので前立腺肥大が心配
61歳の男性です。いつ頃かは分らないのですが、トイレでおしっこをして、パンツとズボンを履いた後に、ほんの少し尿がもれることがあります。
トイレが間に合わずに失禁したり、トイレの回数が多くなったりという事はありません。ただ、終わった後、歩いたり、椅子に座ったりした時に、じわっと漏れる感じがするだけです。痛みもとくにありません。
前立腺肥大症の友人に話を聞いたら、私と同じような症状でしたので、心配になりお手紙をしました。私のような症状も、前立腺肥大症なのでしょうか。また、どのような治療をすれば良いのでしょうか。
A
前立腺肥大症か神経性か 専門医の診察を
今回は、尿漏れの症状があるという方からのご相談です。
ご心配をされている前立腺肥大症というのは、大変多くの方がかかる病気で、60歳を超えると半数近くの人に、そして80歳を超えると8割近くの方に、何らかの兆候が現れるものです。
前立腺肥大だけでは命にかかわるようなことは殆どありませんが、排尿のトラブルを引き起こすため、日常生活を送るうえで非常にお困りになるケースが多いです。そのため、症状の程度というものが、治療方針などを決定するための重要な要素となります。
前立腺は、膀胱の出口にある栗の実のような形をした器官です。加齢によって肥大、つまり大きくなっていき、尿道を塞いでしまうことがあり、これが前立腺肥大症です。尿道をふさいでしまうので、尿が出にくい、トイレの後でも残尿感がある、頻尿になる、あるいは尿が漏れてしまうなどの症状がみられます。
前立腺肥大を診断する際には、超音波検査を用いて肥大の程度を調べたり、残尿量を測定するなどして行います。また、前立腺がんが心配される場合がありますので、これをチェックするためには、PSAという腫瘍マーカーを調べます。
前立腺肥大の症状を調べるために「国際前立腺症状スコア」という指標があります。次のような問診項目を症状の頻度により点数化してどの程度肥大が進んでいるかをチェックできます。
1. 排尿後にまだ尿が残っている感じがあったか。
2. 排尿後2時間以内に、もう一度行かなければならないことがあったか。
3. 排尿中に尿が途切れることがあったか。
4. 排尿を我慢するのが辛い事があったか。
5. 尿の勢いが弱い事があったか。
6. 排尿開始時にいきむ必要があったか。
7. 床についてから朝起きるまで何回排尿したか。
あなたの場合は、これらの指標と照らし合わせてみると、症状が異なる部分が多く、むしろ尿失禁の症状が出ているように思えます。
尿失禁には様々な原因があり、前立腺肥大症もその一つなのですが、それ以外にも、加齢による膀胱収縮力の低下や、尿道抵抗の増大により尿の排出が十分に行われず、尿道に少々尿が残る場合もありますし、あるいは神経の調整に関わる部分もあります。
たとえばパーキンソン病など、脳神経に異常が起こるような病気があると尿失禁を起こす場合があります。膀胱は交感神経と副交感神経によって制御されており、排尿をする際には尿道が弛み、我慢しなければならない時には尿道が締まるという仕組みですが、神経に異常が起きると、それらがコントロールできなくなります。これは事故などにより下半身が麻痺してしまった場合に、自分の意志で排尿ができなくなるのと同じです。
尿漏れの原因として、やはり前立腺肥大症があるのか、あるいは神経性のものなのかを調べるためにも、まずは一度、泌尿器科を受診することをおすすめいたします。(老友新聞社)