「脂っぽい食事で胸やけ」は、体の仕組みがそうなっていた/胃の不調

「脂っぽい食事で胸やけ」は、体の仕組みがそうなっていた/胃の不調 pixta_10762154_S.jpg「食欲がない」「胃がもたれる」「胃がキリキリと痛む」......誰もが一度ならず経験があるのではないでしょうか。胃の調子は健康のバロメーター。不調であれば、「食べた物が悪かった?」「それともストレスが大き過ぎた?」と考え、食べる量を控えるなどして、胃の健康を保とうとします。なぜ、胃の調子は悪くなってしまうのでしょう。しょっちゅう起こる胃痛や胸やけから、胃食道逆流症、胃潰瘍や胃がんまで、兵庫医科大学病院副病院長の三輪洋人先生にお聞きしました。

前の記事「「胃食道逆流症」とは? 胸やけがするなら要注意/胃の不調(8)」はこちら。

 

胃と食道の間の筋肉がパカッと開く

健康であれば、食べ物が食道から胃へ食べ物が流れることはあっても、胃の中のものが食道へ流れることはありません。食道と胃の間には「噴門(ふんもん)」と呼ばれる門があり、通常は閉じていて、逆流を防いでいるからです。この噴門は「下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)(LES:エルイーエス)」ともいいます。

「下部食道括約筋はぐっとすぼまった状態が基本です。袋の上部を手で握って閉じているのと同じように、胃の上部は閉じられ、胃から食道へは胃の内容物が流れないようになっています。食べ物を食べて、その食べた物が食道を通過してくると、下部食道括約筋はぐーっと開きます。食べ終われば、下部食道括約筋はぐっと閉まりますから、普通は逆流しません。

では、逆流性食道炎になる人は、下部食道括約筋の筋力が弱いのでしょうか。そのために胃と食道の間に隙間ができて、胃の中のものが逆流してしまうのでしょうか。その仮定のもと、研究が行われました。しかし、逆流性食道炎の人も、健康な人も、下部食道括約筋の圧は変わりませんでした」と三輪先生。

 
食べ過ぎを控え、脂肪の摂取量を減らしましょう

「24時間pHメーターで食道の酸性度を調べてみると、一過性の弛緩が繰り返し起きていることがわかりました。下部食道括約筋が、ぱかっと一時的に開いて、またすぐに閉じるのです。食事の摂取によって開く以外に、開いてしまう回数が多ければ、胃から食道へ逆流するタイミングも多いということです。

下部食道括約筋が開いてしまうタイミングは、主にふたつわかっています。

ひとつは、胃の上部、半球状に盛り上がっている穹窿部(きゅうりゅうぶ)が伸び広がった時です。食べ過ぎると、穹窿部が広がり過ぎて、下部食道括約筋の圧が緩みます。

もうひとつは、脂肪を食べた時です。胃から続く十二指腸には、CCKB(シーシーケービー)という受容体があります。脂肪を食べた時にはCCKBからの反応で、下部食道括約筋が緩むのです」(三輪先生)

私たちは経験的に、脂っぽい食事をお腹いっぱい食べると胸のあたりが重くなったり、胸やけを引き起こしたりすることを知っていますが、実際に体の仕組みがそのようになっているのです。食べ過ぎに注意し、脂肪を控えめにする食事は、食後の胃もたれを減らし、食道を守るのです。

 

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取材・文/三村路子

 

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三輪洋人(みわ・ひろと)先生

兵庫医科大学理事・副学長。兵庫医科大学病院副病院長。内科学消化管科主任教授。1982年、鹿児島大学医学部卒業。医学博士。専門は、消化器内科一般のほか、特に逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、ピロリ感染症の診断と治療、また内視鏡による胃がんの早期診断と化学療法。著書に『「胃もたれ・胸やけ」は治せる 機能性ディスペプシア・胃食道逆流症・慢性胃炎』(NHK出版)ほか。

(参考資料)
『「胃もたれ・胸やけ」は治せる 機能性ディスペプシア・胃食道逆流症・慢性胃炎』(NHK出版)
日本消化器病学会ガイドライン 
・厚生労働省「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」(2016年)

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