抜け毛は自分とは関係ないと思い、特に気にせず生活していませんか? そんな方は要注意! 髪は抜け始める前からケアすることが重要なのです。特別なことは必要ありません。衣食住を中心とした生活習慣を根本から見直すだけで、数年後の未来の自分の髪に先行投資することができます。最新の科学的根拠をもとに知識を深め、薄毛にならないための生活を今から始めてみませんか。
抜け毛にまつわるさまざまな原因や治療法、ケアなどを薄毛治療の第一人者である岡嶋研二先生に伺います。
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古代中国の考え方から見る薄毛におすすめの治療薬とは
中国の『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』という本では、当時の薬物365種を、上薬、中薬、下薬に分類しています。上薬とは、長く服用しても副作用がない、養命のための健康維持薬。中薬は、病気を防ぎ体力を補うもので、副作用の有無をわきまえて、適宜処方して用いる薬。下薬は、病気を治すが、毒性も強く長期の服用はできない薬です。
この分類を育毛への影響という視点から、当てはめてみましょう。
上薬は唐辛子(カプサイシン)、中薬はフィナステリド配合の治療薬
IGF-1を増やすことこそ薄毛改善に効果があることはすでにお伝えしました。このIGF-1を増やすためのものの中で、副作用がなく、長く摂取できる「上薬」は、カプサイシンを含む唐辛子でしょう。カプサイシンは、空腹時に服用すると胃の灼熱感や痛みを引き起こしますが、胃の粘膜を荒らすことはなく、むしろ胃の炎症を抑制します。
「中薬」に当てはまるのはフィナステリド配合の治療薬です。IGF-1の減少を食い止め、その量を正常に戻すことで抜け毛を防ぎます。他にも、降圧薬であるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)や、同じく降圧薬であるカルベジロールなども、IGF-1を正常化する作用があり、中薬に属すると考えられます。
下薬は痛み止めやかゆみ止めが当てはまります
「下薬」は、育毛のための薬ではありませんが、IGF-1を下げてしまう薬が当てはまります。
例えば痛み止めやかゆみ止めが当てはまるでしょう。これらの薬は、体にすぐ作用し、痛みやかゆみを軽減するので重宝されがちですが、IGF-1を減らすので、副作用も強くなります。その副作用こそ、抜け毛です。
「円形脱毛症の患者さんの中で、病院に通い始めて順調に育毛していた方が、あるときいきなり薄毛になってしまったことがありました。聞くと、風邪薬を飲んだというのです。円形脱毛症は薬の影響を受けやすいという特徴がありますが、それにしてもこのすさまじい副作用は無視できません」と岡嶋先生。
薬は良い面(効能)と悪い面(副作用)を併せ持ちます。「安心して育毛に取り組みたいなら、『上薬』であるカプサイシンやイソフラボンをおすすめします。医食同源をモットーとした長期間の食事改善こそ、本当の良薬といえるのではないでしょうか」(岡嶋先生)