股関節(こかんせつ)が痛むと歩くのが不自由になり、生活に支障が出てしまいます。股関節に痛みを感じている人は、簡単にできる4つの体操で痛みの原因となっている部位を見つけ、股関節痛を改善させましょう。「変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)」などの股関節痛が起こるしくみや、家庭で実践できる「痛みのタイプ別体操」、日常生活で痛みを和らげるコツについて医学博士の銅冶英雄先生に教えていただきました。
前の記事「気づいた時に座ったままでOK!「関節軟骨型体操」で股関節痛を解消(6)」はこちら。
痛みの原因がどの部位からきているのかを見極めて正しい体操を行うために、「痛みのタイプ別体操」の具体的な方法を一つずつ紹介していきます。順番に体操して「痛みの強さ」「痛みの範囲」「歩きやすさ」が改善したかどうかをすぐ確認しましょう。痛みの原因が分かれば、その原因に合った体操を毎日繰り返すことで、症状を軽減させることができます。
◆「痛みのタイプ別体操」を行うときはここに注意しましょう
「痛みのタイプ別体操」を始める前に、体操してもよいかどうか、股関節の痛みの程度や動く範囲、病歴などを確認します。下記の「行ってはいけない人」に該当する人は体操を控えます。「注意して行う人」の場合は、痛みが強くなったら体操を中止し、整形外科を受診しましょう。
行ってはいけない人
・転倒が原因の股関節痛の人は、骨折の疑いがあるので行わない。
・感染症の発熱による股関節痛の人は行わない。
・進行がんで股関節に転移し、痛みがある人は行わない。
注意して行う人
・関節リウマチの人は関節炎の疑いがあるので注意する。
・人工股関節手術を受けた人は脱臼に注意する。
・ステロイドホルモン剤を投与したことがある人は主治医に相談する。
筋肉型:外転筋(がいてんきん)周辺の筋肉をほぐす「横向きテニスボール体操」
股関節を保護している筋肉が収縮して起こる痛みに対応。筋肉の収縮を体操でほぐします。
●1セット10回。朝2セット、夜2セット行う
・用意するもの:テニスボール
硬式用のテニスボールを1個用意します。
・外転筋の位置「外転筋」とは、骨盤の側面にある中臀筋(ちゅうでんきん)、小臀筋(しょうでんきん)などのことです。
1. テニスボールを「外転筋」に当てる
横向きに寝て、痛む側の外転筋にテニスボールを当て体重をかけます。
2. ゆっくりと骨盤を前方に倒す
圧痛点(痛みが響くポイント)をテニスボールで押しながら、骨盤を前に倒していきます。
3. 骨盤を戻して1の姿勢をとる
骨盤を後ろ方向に動かして、1の姿勢に戻ります。
<やり方のコツ>
・テニスボールの圧迫による痛みが強い場合は、下にした脚にクッションを敷いて力を調整します。
筋肉型:外旋筋(がいせんきん)周りの筋肉をほぐす「あおむけテニスボール体操」
「外旋筋」を刺激して股関節の周りの筋肉をほぐし、筋肉の収縮からくる痛みを軽減します。
●1セット10回。1日5、6セット。3時間おきに行う。
・用意するもの:テニスボール
・外旋筋の位置
「外旋筋」とは、お尻の両側にある梨状筋(りじょうきん)、内閉鎖筋(ないへいさきん)、上下双子筋(じょうげそうしきん)などのことです。
1. テニスボールを「外旋筋」に当てる
あおむけに寝て痛む側の外旋筋にテニスボールを当てます。
2. 痛みがある側に腰を傾ける
圧痛点をテニスボールで押しながら、痛みがある側に腰を傾けます。
3. 腰を戻して1の姿勢をとる
テニスボールがずれないように腰を戻し1の姿勢に戻ります。
<やり方のコツ>
・テニスボールの圧迫による痛みが強い場合は、背中にクッションを敷いて力を調整します。
次の記事「歩き方から寝具選びまで!股関節痛を和らげる、日常生活でできる5つのコツ(8)」はこちら。
取材・文/松澤ゆかり 写真/齋藤ジン