まだある、「肥満が頻尿を招く」理由
これら2つに加えて、あと2つ、太っている人は頻尿になりやすい理由があります。1つは、「インスリン」です。
インスリンは、糖質の代謝にかかわるホルモンです。ところが肥満が病的な段階になると、「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態に陥り、インスリンを効率的に利用することができなくなります。
でも、糖質を代謝しないまま血液中に放置できませんから、からだは糖質を何とかしようと、どんどんインスリンを分泌します。
じつは、インスリンには交感神経を活発にする作用もあります。そのため、インスリン分泌量が増えると、膀胱が容量いっぱいになる前に尿意が生じやすくなるのです。
もう1つは、「サイトカイン」です。
サイトカインは脂肪細胞に含まれる炎症性物質であり、体内で増えすぎると酸化ストレスが強まります。もうおわかりでしょうが、そのサイトカインの酸化ストレスによって一酸化窒素が減り、膀胱の柔軟性が失われます。このことからも、肥満の人は頻尿になりやすいというわけです。
また、肥満が高血圧、さらには睡眠時無呼吸症候群を招き、夜間頻尿につながっているケースも多いと見ていいでしょう。
高齢者になると、むしろやせているほうが頻尿?
ただし高齢者の場合は、反対にやせている人ほど頻尿という傾向も見られます。といっても「やせているから頻尿」なのではありません。
やせる原因になっている、心臓病や糖尿病は、頻尿や夜間頻尿を引き起こします。これらの病気には、栄養不足を引き起こし、やせていくという特徴もあります(糖尿病は主に肥満によって起こりますが、進行すると糖分を利用できなくなるため、結果的に栄養不足になります)。このため全身の筋肉がやせてしまうサルコペニアという状態に陥りやすくなります。
高齢になるにつれて、心臓病や糖尿病の罹患率は高まります。高齢者は「やせている人ほど頻尿」という傾向が見られるのは、要するに「高齢者は、からだがやせ、なおかつ頻尿が生じやすい病気にかかる確率が高い」からといえるのです。