加齢とともに増える尿漏れの悩み。「受診するのが恥ずかしいから」「年だからしかたない」といった理由で、諦めていませんか。尿漏れの改善・予防には、自力で骨盤底筋を強化できる「1分タオル体操」が有効です。女性医療クリニックLUNA ネクストステージ院長の中村綾子(なかむら・りょうこ)先生に教えてもらいました。今日から習慣化して鍛えましょう。
尿漏れの3つのタイプ
1.せき、くしゃみ、走る、重い荷物を持つなど、おなかに力を入れたときに尿が漏れてしまう人は
→腹圧性尿失禁
2.膀胱が敏感になって、突然に強い尿意を感じて、我慢できずに尿が漏れてしまう人は
→切迫性尿失禁(過活動膀胱)
3.両方がある人は
→混合性尿失禁
尿漏れは自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことをいいます。
膀胱にたまった尿は一連の流れを経て排泄されますが、この仕組みに異常が起こると、尿漏れが生じます。
大人世代で最も多いのが、切迫性尿失禁です。
膀胱の柔軟性の低下や骨盤底筋の衰えなどが関係していると中村綾子先生。
「尿漏れの改善には、骨盤底筋を鍛えることが有効です。特に1分タオル体操は鍛えるべき筋肉を強く意識できるので、効果が期待できます。早ければ早いほど良いので、今日から試してみてください」
1カ月以上試しても効果がない、著しくQOL(生活の質)を下げるなどの場合は、躊躇せず泌尿器科や婦人科を受診してくださいと中村先生。
「膀胱炎や尿路結石など別の病気がないか見極められます」
尿漏れにかかわる「骨盤底筋」とは?
骨盤底筋
骨盤底筋は骨盤内臓器を支えるハンモック状の筋肉群。骨盤内にある膀胱や子宮、直腸などの臓器を支える大事な筋肉で、排尿や排便をコントロールする。
正常な場合
衰えている場合
骨盤底筋は腹圧が加わっても尿道を締めて尿が漏れないように働いているが、加齢などによって骨盤底筋が衰え緩んだり硬くなったりすると、腹圧がかかったときに尿が漏れやすくなる。
骨盤底筋に効く
タオル棒の作り方
(1)薄手のフェイスタオルを準備
(2)長い方を2つに折る
(3)さらに長い方を2つに折る
(4)(3)の短い方の辺からくるくる巻いていく
(5)(4)の中央と両端を輪ゴムで留めて完成(長さ20cm前後、直径4~5cm)
1分タオル体操
【こんな効果が】
タオル棒が骨盤底筋に当たるので、骨盤底筋の動きを強く意識できてより効果的。
(1)タオル棒を置いて座る
タオル棒をいすの座面に縦に置き、タオルが骨盤底筋の前部に当たるように前傾して座る。
(2)腟と肛門を締める
お尻を左右にゆらして腟と肛門を締めて、5秒かけて息を吐き切る。吐き切ったら力を緩め、ゆっくりと息を吸う。
(3)上体を後ろに倒す
骨盤底筋の後部にタオルが当たるように、背すじを伸ばしたまま、上体を後ろに倒す。
(4)腟と肛門を締める
お尻を左右にゆらして腟と肛門を締めて、5秒かけて息を吐き切る。吐き切ったら力を緩め、ゆっくり息を吸う。
(1)〜(4)を5回行い1セット(1分)。1日5セットを目安に
骨盤底筋リズム体操
【こんな効果が】
弾む動きで骨盤底筋を効率良く刺激し、意識しなくても自然に骨盤底筋を鍛えられる。
(1)手を腰に当てて立つ
両足をこぶし1つ分開いて立ち、両手を腰に当てる。
(2)足を踏み出す。(1)に戻る
片方の足を踏み出して、(1)に戻る。(1)(2)を3回繰り返す。
(3)再び足を踏み出して3秒間キープ
4回目に踏み出した姿勢を3秒間キープ。ゆっくり息を吸い、空気をため込む。
(4)腰を上下に動かす
その場で息を「ハッ、ハッ、ハッ」と吐きながら、3回腰を上下にバウンドさせる。
(1)~(4)を左右各3回繰り返して1セット(1分)。1日5セットを目安に左右を入れ替えて行う
こんな人におすすめ
1分タオル体操で改善がみられない、もしくは改善が遅い。
取材・文/古谷玲子 イラスト/秋葉あきこ