「緊張するとトイレに行きたくなる」のは、なぜ?
さらにもう1つ、年をとるとトイレが近くなる意外な理由があります。
先ほど、尿が溜まるときには膀胱の近くの交感神経が、排尿するときには副交感神経が、膀胱に作用すると説明しました。ところが、ストレスを感じると、膀胱の容量がいっぱいに近づいていなくても、尿意をもよおすことがあります。
たとえば、人前に立つ前や、大きな試験やプレゼンの前に、急にトイレに行きたくなった。だけど大して出なかった――身に覚えのある人は多いことでしょう。寒い季節にはトイレが近くなると感じている人も多いと思います。
いずれも脳の交感神経の作用です。心身にストレスがかかると、交感神経の働きで全身の筋肉が緊張し、本来なら緩んでいるはずの膀胱の筋肉も収縮してしまうのです。
それが緊張時などの急な尿意の原因ですが、同じく交感神経の作用で膀胱の出口も締まっているため、慌ててトイレに行ったところで、それほど出ないというわけです。
高齢になるほど、ストレスは強くなる?
では、こうしたストレス下で起こる尿意と加齢は、どう関係しているのでしょう。
ストレスの感じやすさは、第一には、生来の性格によります。ほとんど緊張を感じずに人前に立てる人もいれば、映画や芝居で2時間程度、トイレに行けないと思っただけで不安になり、トイレに行きたくなる人もいます。
これに加えて、じつは、年を重ねるほどストレスを感じやすくなる傾向も見られるのです。
たとえば、若いころは雑踏のなかをスイスイ歩けたのに、年をとると、うまく雑踏を切り抜けられなくなっていきます。これなどは、若いころよりストレスを感じやすくなるという典型例といえます。
一事が万事で、知覚も運動能力も鋭敏な若いころに比べて、中高年になると、ささいなこともうまくできなくなり、心身にストレスを感じやすくなります。
つまり、年を重ねるほど交感神経が優位になりやすくなるため、頻繁にトイレに行きたくなったり、急にトイレに行きたくなったりという現象が起こりやすくなるというわけです。
これは、加齢による頻尿や尿失禁の隠れた要因といえるでしょう。