男性40歳、女性50歳くらいから「おしっこの悩み」が本格化!? 加齢でトイレが近くなる意外な理由

「緊張するとトイレに行きたくなる」のは、なぜ?

さらにもう1つ、年をとるとトイレが近くなる意外な理由があります。

先ほど、尿が溜まるときには膀胱の近くの交感神経が、排尿するときには副交感神経が、膀胱に作用すると説明しました。ところが、ストレスを感じると、膀胱の容量がいっぱいに近づいていなくても、尿意をもよおすことがあります。

たとえば、人前に立つ前や、大きな試験やプレゼンの前に、急にトイレに行きたくなった。だけど大して出なかった――身に覚えのある人は多いことでしょう。寒い季節にはトイレが近くなると感じている人も多いと思います。

いずれも脳の交感神経の作用です。心身にストレスがかかると、交感神経の働きで全身の筋肉が緊張し、本来なら緩んでいるはずの膀胱の筋肉も収縮してしまうのです。

それが緊張時などの急な尿意の原因ですが、同じく交感神経の作用で膀胱の出口も締まっているため、慌ててトイレに行ったところで、それほど出ないというわけです。

高齢になるほど、ストレスは強くなる?

では、こうしたストレス下で起こる尿意と加齢は、どう関係しているのでしょう。

ストレスの感じやすさは、第一には、生来の性格によります。ほとんど緊張を感じずに人前に立てる人もいれば、映画や芝居で2時間程度、トイレに行けないと思っただけで不安になり、トイレに行きたくなる人もいます。

これに加えて、じつは、年を重ねるほどストレスを感じやすくなる傾向も見られるのです。

たとえば、若いころは雑踏のなかをスイスイ歩けたのに、年をとると、うまく雑踏を切り抜けられなくなっていきます。これなどは、若いころよりストレスを感じやすくなるという典型例といえます。

一事が万事で、知覚も運動能力も鋭敏な若いころに比べて、中高年になると、ささいなこともうまくできなくなり、心身にストレスを感じやすくなります。

つまり、年を重ねるほど交感神経が優位になりやすくなるため、頻繁にトイレに行きたくなったり、急にトイレに行きたくなったりという現象が起こりやすくなるというわけです。

これは、加齢による頻尿や尿失禁の隠れた要因といえるでしょう。

 

堀江重郎
泌尿器科医、医学博士。1960年生まれ。日米の医師免許を取得し、米国で腎臓学の研鑽を積む。2003年帝京大学医学部主任教授、2012年より順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科学主任教授。順天堂医院泌尿器科長。腎臓病・ロボット手術の世界的リーダーであり、科学的なアプローチによるアンチエイジングに詳しい。日本抗加齢協会理事長、日本メンズヘルス医学会理事長。

※本記事は堀江重郎著の書籍『尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える 腎臓・膀胱 最高の強化法』(SBクリエイティブ)から一部抜粋・編集しました。
PAGE TOP