「牛乳で骨が丈夫になる」証明が難しいワケ。実はエビデンスは出ていない!?

【本作を第1回から読む】「レタス○個分の食物繊維」ってレタスにはそんなに食物繊維は入ってない!? レタスで換算される理由

『身体を壊す健康法』 (柳澤綾子/Gakken)第2回【全6回】

東大の研究員であり現役医師である柳澤綾子さんは、年間500本以上の論文を読む論文オタクでもあります。『身体を壊す健康法』は、そんな柳澤さんが、これまで当たり前とされてきた健康の常識を最新の研究結果をもとに一から見直し、正しい知識を優しく解説します。本書で健康の知識をアップデートしましょう。

※本記事は柳澤綾子著の書籍『身体を壊す健康法 年間500本以上読破の論文オタクの東大医学博士&現役医師が、世界中から有益な情報を見つけて解き明かす。』(Gakken)から一部抜粋・編集しました。


牛乳で骨が丈夫になるエビデンスは出ていない

「牛乳で骨が丈夫になる」証明が難しいワケ。実はエビデンスは出ていない!?  02_pixta_86648106_M.jpg

乳製品を摂るほうが骨折率が高いという研究結果

「骨を丈夫にするためにも、牛乳はしっかり飲みましょうね」「牛乳飲まないと大きくならないわよ」とお母さんから言われた人も多いのでは? 牛乳にはそんなパワーがあるようなイメージもあります。

でもよくよく考えると、これって本当なのでしょうか。世界各国でも乳製品の健康に関するデータの研究は進んでいます。今現在どんなエビデンスが出ているのか、観察して行きましょう。

これに関しては実は1986年の報告と少し古いのですが、大きな衝撃を与えたハーバード大学での研究(1)がありました。

骨折率(大腿骨骨折)については、乳製品を多く摂っている国のほうが、乳製品をあまり摂らない国よりも高い、という発表でした。さらに日本の研究者からもそれを裏づける研究結果が発表され(2)、大きな話題となりました。

その後も欧米で10個のコホート研究によるメタアナリシス(「メタ分析」や「メタ解析」とも呼ぶ。幾分か類似する研究の複数の結果を統合し、ある要因が特定の疾患と関係するかを解析する統計手法)や、別のグループによって行なわれた6つのコホート研究を用いたメタアナリシスなど(3)(4)(5)(6)が行なわれました。しかし、エビデンスレベルが現在最も高いとされる研究手法だとされている、メタアナリシスによるシステマティックレビュー(研究論文を系統立てて検索・収集し、類似した研究を一定の基準で選択・評価し、科学的な手法を用いてまとめ上げて作成した評価)をもってしても、実は研究結果は一貫した方向性を示していないのです。

現在の統計手法の最先端を駆使しても、この「牛乳は骨にいいのか問題」は未だに結論が出ていないのが現状ということです。

 

柳澤綾子
医師、医学博士。東京大学大学院 医学系研究科 博士課程修了。大学院時代から公衆衛生学を専攻し、社会疫学、医療経済学およびデータサイエンスを学んできている。現在は、東京大学および国立国際医療研究センターにて研究を行いつつ、ママ女医の立場から健康格差解消のための啓蒙活動に尽力、講演、記事監修や執筆等を行っている。海外医療活動参加歴あり。パナマにて国際船医免許取得後、世界一周クルーズ船船医として世界中からの乗客のべ8000人以上を診察、世界27カ国の病院に紹介状を持って同行医師経験あり。

※本記事は柳澤綾子著の書籍『身体を壊す健康法 年間500本以上読破の論文オタクの東大医学博士&現役医師が、世界中から有益な情報を見つけて解き明かす。』(Gakken)から一部抜粋・編集しました。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP