レタスが基準として使われるようになった理由
ではなぜ、レタスで換算するのが通例になっているのでしょう。この表現がとてもよく使われているのには、もちろん理由があるのです。
1つ目の理由は、もう既に食物繊維といえば「レタス何個分」という表現が定着してしまっていること。今さら新商品に「ごぼう1/2本分の食物繊維』と表記されても、これまでの旧商品と比較して多いのか少ないのかわかりません。ですから換算には、一般の人に浸透するような基準が必要なのです。
2つ目の理由としては、「シャルパンティエ効果」という脳の錯覚が使えること。「シャルパンティエ効果」とは、比較対象となるものを置き換えることで、その商品の効果についてイメージアップを図ることができるものです。
レタスといえばサラダの材料の代表格だし、ヘルシーそうで食物繊維も多そう、というプラスのイメージを持っています。そのプラスイメージのレタスが何個分も入っているなんてお手軽で素敵そう、と思わせる効果が期待できるのです。
その他の有効な心理効果を用いた表記
他にも同様の効果を期待する方法として、「フレーミング効果」と呼ばれる、見せ方を変えることで脳の錯覚を使う手法もよく見られます。
同じ量でも数字の表記次第で、あたかもより多くの成分が入っているように思わせることができます。例えば、「タウリン1g」よりも「タウリン1000mg」、「ビタミンC1g」よりも「ビタミンC1000mg」と表示されているほうが、何だかたくさん入っていて、効きそうな気がしてきませんか? 冷静に考えれば、1gも1000mgも全く同じなのですが、後者のほうがだいぶ多そうに思えてしまいます。
このように同じことを表すのに、表現方法が違うだけで受け取り側の印象が変わることを期待して表示を行なっているということにも、注意が必要です。
また「ハロー効果」と呼ばれる錯覚もあります。海外の大学のすごそうな先生が開発! など、その所属や肩書きをアピールすることで、実際は関連が薄くてもその商品自体の信頼性が一見高まったように見えてしまう効果を指します。
同様に憧れのアイドル、俳優やスポーツ選手といった有名人が愛用! といった商品PRも同じような効果を出すことができるのです。
「ウインザー効果」というものもあります。例えば自社の製品をその会社の社長がよさやすごさを力説していても、説得力はあまりないのですが、ネットショップの口コミなどの一見関連のなさそうな第3者からの評価であれば、信頼できる! と思い込んでしまう効果のことです。
レタスの食物繊維含有量と比べて多いか少ないは、実際はそれほど大事ではないということになります。本当に大事なことは、表記に含まれるいろいろな錯覚効果に惑わされることなく、自分で情報をきちんと評価すること。
食物繊維自体は、近年非常に重要性を指摘され始めている腸内細菌の大切な栄養素になるため、きっちり摂取することが大事です。
<結論>
・レタスに食物繊維はそんなに入っていない。サツマイモやゴボウのほうがはるかに多い
・レタスは食物繊維の基準として昔から使われているので、おそらくこれからも使われ続けられそう
・数字の言い換え、権威のある大学や著名人を使うなど、他にも多そうだと思わせるテクニックはたくさん存在するので、これらに惑わされないようにする