「卵は1日1個まで」は過去の話!? 卵の栄養をおさらいしよう

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健康長寿の3つの柱は「栄養」「運動」「社会参加」。どれも欠かすことのできない大切な要素ですが、中でも「栄養」は日々の暮らしのベースになる命の源です。そこで、身近な食材である「卵」の魅力について、キユーピー株式会社の研究開発本部の西山 博さんに詳しい話を伺いました。

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前の記事「食べているのに低栄養? たんぱく質不足を防ぐには卵がおすすめです(1)」はこちら。

 

卵には体づくりに必要な栄養が詰まっている

長年価格が変わらないことから卵は「物価の優等生」といわれますが、栄養面でも非常に優秀な食材です。
「食事の量をとりたくてもとりにくい高齢者が、たんぱく質を効率よくとり低栄養を防ぐのにおすすめなのが卵です。卵にはたんぱく質以外の栄養素も豊富に含まれています」と研究開発本部の西山さん。

卵の栄養成分.jpg出典元:タマゴ科学研究会「タマゴの魅力」

 

卵が含む栄養素はまさにマルチプレーヤー! 体内のさまざまな用途に広く使われています。卵白たんぱく質には筋肉量・筋力の増大効果や内臓脂肪・コレステロールの低下作用があると報告されています。また、たんぱく質には満腹感を高める効果があり、たんぱく質を構成するアミノ酸は肝臓の働きを助けて回復力を高めます。また、卵黄中のカロテノイド色素のルテインとゼアキサンチンは視力維持に重要な役割を果たし、卵黄脂質のレシチンに含まれるコリンは脳の発育に必要な栄養素です。

 

「卵でコレステロールをとりすぎる」はそれほど気にしなくていい!

でも、一方で「コレステロールが心配」という声をよく聞きます。そのため、食べたくても我慢している人も多いのでは? 気になる卵とコレステロールの関係を、西山さんに詳しく教えていただきましょう。

「従来、卵を食べるとコレステロール濃度が上がり、動脈硬化性疾患のリスクが高まると信じられてきました。こうした誤解を生むきっかけとなったのは、1913 年にロシアのアニスコフ(Anitschkow NN)らが発表したウサギを使った実験です。この実験では、ウサギにコレステロールを摂取させたところ、アテローム性動脈硬化を発症したことから『コレステロールが動脈硬化の原因』という学説が定着したのです。

しかし、この実験には大きな問題点がありました。草食動物であるウサギの餌となる植物には、コレステロールは含まれていません。そのため、ウサギは体内で餌由来のコレステロールに対する調節機能を持っていないのです。

一方、人間を含む肉食動物は食べ物からとるコレステロール量に応じて、主に肝臓で体内のコレステロール濃度を一定に保つ仕組みがあることがわかっています」と西山さん。

卵摂取頻度と血清総コレステロール濃度の関係

コレステロール変化なし.jpg出典元:タマゴ科学研究会「タマゴの魅力」

 
"コレステロール=悪者"のイメージがすっかり定着していますが、そもそもそれ自体が正しくありません。コレステロールは脂質の一種で、人間が生きていくうえで必要不可欠な栄養素です。コレステロールは、体内すべての細胞膜の構成成分であり、胆汁酸やホルモン、ビタミンDなどの原料になります。コレステロールが不足すると血管が弱って破れやすくなったり、免疫力が低下して疲労、食欲不振、うつ状態になりやすくなる心配が! 

しかも、人間が1日に必要なコレステロールは約1000~2000mgですが、その約80%は肝臓で合成されています。「食事からとるコレステロールは約20%にすぎません。たとえ、たくさん摂ったからといってすぐに血中コレステロール濃度が上がることはありません。健康な人は、卵のコレステロールを気にしないで食べて大丈夫です」と西山さん。

※参考資料「タマゴとコレステロール―科学的根拠に基づいた知見―」(タマゴ科学研究会)

 

健康な人なら「卵は1日1個まで」を気にしなくて大丈夫

さらに西山さんは、「最近の研究では、卵の摂取量と冠動脈心疾患発症のリスクや糖尿病発症リスクとの間には関連はない、とする報告も多数出されています」と続けます。

卵摂取頻度と冠動脈心疾患発症リスクの関係

冠動脈疾患.jpg出典元:タマゴ科学研究会「タマゴの魅力」

 

 

卵摂取量と糖尿病発症リスクの関係

糖尿病.jpg出典元:タマゴ科学研究会「タマゴの魅力」

 
「卵は1日1個まで」という説は、上記のウサギの実験結果の流布と、2005年に厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準2005年版」にコレステロール摂取量の上限が示されていたことによるもの。つまり「過去の話」で、2015年版では撤廃されています。

「それどころか、卵に含まれるセレンという栄養素は、不足すると心疾患を引き起こすといわれています。このセレンは卵を2個食べれば1日に必要な量を摂取できます。これまでコレステロールを気にして『卵は1日1個まで』説に縛られていた人は、ぜひとも認識を新たにして『卵の積極的な摂取』を心がけてください」と西山さん。

では、具体的に1日何個食べると健康によいのでしょう?

「特に決まりはありません。医師や栄養士から栄養指導を受けていない場合、肉を毎日何gまでという制限は特にありませんよね。それと同じです。卵を1日2個食べると主な栄養素を補うことができますが、残念ながらビタミンCと食物繊維は摂取できません。やはり、いろんな食材をちょっとずつ必要量食べ、ベストの体重を維持することが大切です」(西山さん)。

 

次の記事「卵の栄養を一番多く摂れる調理法は? 卵が好きになる「卵」ミニ知識(3)」はこちら。

 

取材・文/岸田直子


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西山 博さん

キユーピー株式会社 研究開発本部 技術ソリューション研究所 評価・解析研究部 チームリーダー。マヨネーズをはじめ、ファインケミカルや野菜などキユーピーが扱う商品全般の健康・栄養関係の学術分野を担当。

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