寿命を縮めることもある「低栄養」。おしゃれや外出も予防のひとつです/知っていますか?「低栄養」(3)

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健康な体を維持するために必要な栄養素が足りない状態に陥る「低栄養」。低栄養状態は、寿命を縮め、健康寿命も短くし、心血管病(心臓病や脳卒中)を2.5倍も起こしやすくします。筋肉量が少なく骨粗鬆症になっていると、ほんの少しの衝撃でも骨折につながります。そして、老化の加速と同時に免疫力も低下し、肺炎といった感染症にもなりやすくなるのです。

前の記事:「放っておくのは厳禁! 低栄養ってなぜ悪いの? 知っていますか?「低栄養」(2)」はこちら。

「中年期の生活習慣病予防として、食べ過ぎはよくないといわれているため、ご高齢になっても、カロリーを控えた粗食を心掛けている方がいます。しかし、それは逆効果です。低栄養を解消するには、多様性に富んだ食事を1日3食しっかり摂ることが大切です」と話すのは、東京都健康長寿医療センター研究所副所長の新開省二先生。

新開先生の65 歳以上1000人以上を対象とした疫学調査では、体格がやや小太りで、血液検査のアルブミン(たんぱく質の一種)値や総コレステロール値が高い人は、それらの値が低く瘦せている人よりも、寿命が長く寝たきりの割合も低いとの結果でした。アルブミン値や総コレステロール値は、肉類などの動物性たんぱく質や脂質を食事で十分に摂ったときに上がります。新開先生の研究では、アルブミン値3.9g/㎗以下の値が「低い」グループは、それ以外の値が高いグループと比較して、生存率が極端に低くなっていました。総コレステロール値では、一般的に理想といわれる男性156㎎/㎗以下、女性182㎎/㎗以下の値が「低い」グループは、値が高いグループと比べて、やはり死亡率が高かったのです。

「中年期と高齢期の健康管理は異なると考えるべきです。アルブミン値や総コレステロール値の高さは、栄養状態が良好である証しともいえます」

もちろん、単にたくさん食べて、低栄養状態を解消すればよいということではありません。
健康長寿を目指すには、筋肉や骨も強くしなければなりません。それらの強化には、多様性のある食事に加えて運動が不可欠なのです。無理のない範囲で筋トレをして、日常生活では小まめに動く。家に閉じこもりがちの生活は、認知機能を低下させるとの報告もありますから、外出することも重要になります。外食でお友達とのおしゃべりを楽しめ、低栄養も予防できて心身ともに好影響を与えるのです。

「高齢期の健康では、身体機能、生活機能、社会機能が重要になります。それを『機能的な健康』と総称しています。栄養が十分で筋肉や骨が強く、アクティブな生活の人は、いずれも相乗効果で機能的な健康のレベルが高くなるのです。バランスの良い食事を意識し、おしゃれをするなどして、外出も楽しんでいただきたいと思います」と新開先生はアドバイスします。健康長寿の実現のため、食生活を見直しましょう!

  

目指したいのは「機能的な健康」

多様性のある食事で栄養状態が良くても、身体を動かさないことは筋力や骨密度の減少につながり、また、家に引きこもっていると認識機能の低下に結びつきます。健康長寿には、身体機能、生活機能、社会的機能の三つが大切。相互作用で三つを同時に高めることができます。

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<教えてくれた人>
新開省二(しんかい・しょうじ)先生
東京都健康長寿医療センター研究所副所長。医師・医学博士。日本老年医学会や日本公衆衛生学会などの評議員、厚労省「健康日本21(第2次)策定専門委員会」委員などを歴任。
 
この記事は『毎日が発見』2017年9月号に掲載の情報です。

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